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その晩俺は、一人反省会を開いた。
……流された。

や、確かにめっちゃ気持ち良かった。正直、一人でオナるのがアホらしくなる位良かった。
でも、國臣の気持ちに応えられないのに、こんな身体だけの関係って良いんだろうか?いや良くない。

じゃあ、もう國臣とは縁を切る?高校三年生で、そんな後味悪くなるような事出来ないなら、こっそり進路先を変更して、別々の大学に通って、自然消滅的な……いや、ないな。そんな不誠実な事、流石に出来ない。

相手はデメリットしかない中、それでも自分に正直に……正直過ぎだけど、男の俺に告ってきたんだから。

じゃあ、國臣と付き合う?それは、流石に将来が不安になってくる。まず、家庭を築けない。子供も出来ないし。男同士とかだと、結婚とかどうすんの?入籍出来なきゃ、病院とか葬式とか他人扱いだとテレビでやってた気がする。家族に紹介……とかも、無理だろう。孫の顔が見たかった、とか言われて責められるんだろうか。

國臣は好きだけど、女の子と比べてどうか?……うん、今のところ國臣以上に好きな女の子はいない。そういう意味では、國臣に軍配が上がる。
國臣のフェラと、女の子のまんこなら……どっちでも良い、かな?絶対馬鹿にされない分、國臣の方が安心安全だけど。
國臣とのセックスは、俺の尻穴が被害に合う。それは、嫌……だと思っていたのに、今日はマジで気持ち良くて焦った。
逆に、女の子と付き合ったら尻穴を掘ってくれ、とは絶対言えないだろう。まんまと國臣の策略にかかった気がする。

これから、國臣以上に好きな女の子は出来るかもしれない。……けど、國臣だって俺以上に好きな人が出来る可能性はあるんだ。大学生になれば、尚更。

纏めると……そうか、将来が不安なんだな、俺は。
國臣が、もし女の子だったら付き合ってたかもしれない。
って事は、俺が國臣を拒否る理由は、國臣が言ってた通り、性別なんだ。

一人反省会の中で、自分の考えを浮き彫りにする事で、少しだけ見えてきたものがある。
今日は結局、國臣と二時間セックスした後、夕飯前までは集中して勉強する事が出来た。
どっちみち、いつかは決めなくてはならないんだ。
──俺は、覚悟を決めた。



***



翌日。
他の奴らとは話が聞こえない様に距離を取って、國臣と二人で弁当を広げた。「話がある」って誘ったから、國臣が微妙に緊張しているのがわかる。
「俺、考えたんだけど」
「……うん」
「結構、真剣に考えたんだけど」
「……うん」
「今は、國臣と付き合う事は出来る、かもしれないけど……将来は、わからない」
「将来?」
「國臣を、俺のパートナーですって親に紹介したりすんの、想像するだけでちょっとキツイ。とは言え、國臣の事内緒にしてずっと独身で心配させるのもどうかと思うし」
「……うん」
「だからさ、こんな……将来の約束出来ない男はやめといた方が、良いと思う。國臣の事より、自分の事ばっかり考える奴だしさ」
俺は、俯いたまま咀嚼する國臣の顔を、そろそろと覗き見する。
國臣は、嬉しそうに笑っていた。……え?何故笑顔?
「……希翔……」
「ん?」
「……俺、すげー嬉しい」
「……なんで??」
「……俺の事、考えてくれたって言うのもそうだけど、きちんとずっと一緒にいる事を前提として考えてくれた、って言うのが」
「そりゃ、適当には考えられないだろ」
國臣は、今の俺の生活を構成している一人だ。大学も同じところを狙ってるんだし、他の告ってきた女の子とはやはり違う。
「……あのさ、今までの彼女、そんな将来までとか考えた事ある?」
「……」
あれ?
「ない、かも」
告られて、相手が可愛かったら付き合って。
セックスに対する欲求がなかった俺に、彼女が出来たというのは遊びやイベントに困らないな、という程度の認識であって、将来がどうのとか一度も考えた事ないかもしれない。
セックスしてたら、多少は考えたかもしれないけど。
ある意味、刹那的だ。その時を楽しく過ごして、合わなかったら別れてた。

「……じゃあさ、将来の事まで考えてくれるのは嬉しいんだけど……俺が嫌いじゃないなら、今、付き合って欲しい……ってお願いしたら聞いてくれる?」
「……今?」
今って何時だ?今日の事?
「……高校卒業まで」
「……」
なら、良いか?
卒業まで彼女作るつもりもなかったし、國臣と勉強する様になって、成績も上がった。國臣とのセックスは……なんだかんだで、気持ち良いし。
「高校卒業したら、どうすんの?友達に戻れるのか?」
「高校卒業したら、また大学卒業までどう?って聞く。大学卒業したら、國臣が結婚を考える年になるまでどう?って聞く。多分、一生聞く」
「約束しても、途中で誰か好きな人が出来るかもよ?」
それは、俺だけじゃなく國臣だって。
「……それは、そうだね。でも、お付き合いってそんなもんだよ?何処にでもいる普通のカップルだってそう」
「……確かに、けど……」
俺にも國臣にももう、わかってた。
俺が今更グダグダ聞くのは、俺が國臣とパートナーになる気があるのに、踏ん切りが付かないだけだって。

「もうそろそろ、降参して欲しいな」
國臣は、端正な顔を綻ばせて微笑んだ。
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