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お試し期間、ですか?

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「おはようございます、真さん」
「……おはよう」
おぉ……私の部屋に男性がいる違和感。しかもポルターガイストつきの部屋に。しかもお互い素っ裸で!!
「ごめんね、昨日あれから寝ちゃったんだ……」
時計を見れば、もう9時だった。
「この部屋に引っ越してからしっかり寝れていないんですよね?無理もないですし、むしろ寝られて良かったです」
微笑みながら言ってくれる清孝君は、面倒事に巻き込んだというのに凄く優しい。
久しぶりにすっきりした身体をうーん、と伸ばして清孝君に聞く。
「その……き、昨日は私ばかり気持ち良くして貰って、ごめんね?」
「いいえ。……あ、すみません、昨日はあの後勝手に風呂場とタオルは借りて、適当に洗濯機回してしまってます」
「うう……何から何まで……」
「いいえ。好きな女性が俺の愛撫でよがってイくなんて、童貞には夢の様でしたよ」
「……」
直球なアピールに、私は赤面するしかなくて思わず話を反らしてしまう。
「あ、そう言えば、清孝君って自分の事俺って言うんだね?」
「……言ってました?」
「うん、途中から」
「……真さんの前では、可愛い弟キャラを作っていたので。普段は俺なんです」
「そ、そうだったんだね。……どっちでも、私は気にならないよ?」
「はい。ありがとうございます」
……話を反らしたつもりが、甘い視線で見つめられる事になって結局私達の雰囲気はいつもの様にはならなかった。

……そりゃそうか、だってお互い素っ裸だもんね。

「……もう、いなくなった?」
「まだです」
主語を抜かしたのに、清孝君には直ぐに伝わったみたいで。
「……昨日みたいな事、一人でやれば良いの?」
どうやっても、自分の股間を舐める事は出来ないけど。
「はい。……出来そうですか?」
「うーん……」
どうだろう??そんなに器用ではないけど……いや、どちらかといえば不器用なのだけど、出来るのかな??
「俺は、役得でしたので。……もし、真さんが無理なら……」

視線が絡まる。

清孝君は、朝から熱を帯びた瞳で私を見ていて。
無理です、と私が言うのを待っている。

じゃあ、私は?
私はどうしたいのだろう?清孝君と、どうなりたい?
清孝君の想いに応えずここで彼にお願いしては、誠実ではない。
では、断る?清孝君は、片思いはやめると言っていた。私が断ったなら、彼はまた別の恋愛をはじめるのだろうか?
どちらの返事をしても、モヤモヤする気がした。全く意識してなかった相手に今応えるのは、昨日みたいな快感が気に入ったって事?とはいえ、真剣に考えずに恋人にはなれません、って結論出すのは失礼な気もする。

「……何となく、真さんが考えている事はわかるんですけど」
清孝君は苦笑しながら、悩む私の顔にそっと自分の顔を近付けてきた。
あれ?清孝君、目が充血気味な気が……睡眠不足かな?
「俺の為を思って、お試し期間、設けてくれませんか?」
「……お試し、期間」
「はい、そうです。金曜日から、日曜日まで。ひとまずカップルっぽい事しません?」
「……清孝君は、それでも良いの?」
「今、断られずに悩んで貰ってるだけ、最高に幸せですが。振られるにしても、もし真さんとイチャイチャした期間があるならやっぱり嬉しいですね」
「うーん……」
「駄目ですか?」
「……清孝君が、それでも良いなら、いい。……かな?」
私がそう結論づけると、清孝君は「やった!」と見知った無邪気な笑顔を見せて、私に抱き付いた。



***



土曜日きょうは結局、一度清孝君の部屋に寄ってから荷物をコインロッカーに預け、普通のカップルみたいに外デートして、夕飯はスーパーで買って適当に作った。簡単な肉野菜炒めで味付けはレトルトなのにも関わらず、美味しい美味しいと言って食べてくれる清孝君。
清孝君の借りている部屋は一口コンロで料理をする環境としてはイマイチで、スーパーかコンビニの弁当やカップ麺が主食らしい。
「今度、野菜の切り方から教えて下さいよ」と笑って言いながら、私の帰社時間が早いのを聞いた清孝君は「平日でも良いですかね」と、月曜日にまた来る事を約束した。……あれ?

四年近く会っていなかったのが嘘の様に、私達の間の話題は尽きなかった。弟の話、受験の話、地元の話、大学時代の話、就職の話。お酒はないのに盛り上がって、初めてポルターガイストのない夜を迎えた。……というか、清孝君との会話が楽しすぎてポルターガイストを忘れていた、というのが正しい。夜遅くなって、またそんな雰囲気になった時に思い出した位だった。

昨日は私ばかり気持ち良くして貰ったから、今日は清孝君にも気持ち良くなって欲しくて、清孝君の自慰を私が手伝う事になった。
手でしごくのかと思えば、貸したのは私の胸だった。
「……夢にまで見た、パイズリ……っっ!!」
清孝君が私の上に跨がって腰を振ってくれるので、全く私の出番はない。
胸の隙間をにゅるにゅると出たり入ったりする清孝君のペニスが少し可愛く感じて、チロリと舌先で舐めた途端に清孝君は私の顔面に射精した。
「すみませんっ!!そんなつもりはなくて……!!」
「大丈夫だよ、わかってる」
私はそのままお風呂に入って顔と身体を流しながら、清孝君が「自分の愛撫でイくのが嬉しい」みたいな発言をしていた意味がわかった気がした。
……うん、確かに私に欲情して、更に無意識に発射させてしまうというのは嬉しい事かも。
……でも、誰でも良いって訳じゃない。

この時には、私の結論はもう決まっていた様なものだった。

お風呂から出た私を、今度は清孝君が優しく導いてくれる。昨日と違うのは、膣の中に指が挿入された事だ。清孝君の指二本をやっと受け入れた膣道は、うねうねと清孝君の指に絡み付いて圧迫する。
「……うわ、なかに入れられたらもの凄く気持ち良さそうですね……」
顔を上気させながらそんな事を言われてしまえば、やっぱりまた嬉しくて。クリトリスと膣を同時に攻められ、私はまた絶頂を迎えた。


翌日、日曜日。
連続してぐっすり眠れた事もあって、身体はとても軽かった。清孝君が来てくれてから、あれほど悩まされていた心霊現象は皆無だった。

まだ寝ている清孝君はそのままに、手早くルームウェアを羽織って朝ごはんを作る。大学の時に友人がはまって、私まで伝染して購入したホットサンドプレート。簡単な具材を8枚切りのパン2枚で挟んで焼けば出来あがる、簡単朝ごはん。スープを作る頃には、私の心はもう決まっていて、いつ言おうかと頭を悩ませる。

「おはよう」
「……おはよう、ございます」
「ちょうど朝ごはん作り終えたところだよ」
まだ寝ぼけた様子の清孝君は、歳相応に可愛い。
彼が大学を卒業するまで、スムーズにいって後4年。その頃私は、26歳だ。彼が何処かの会社に入社して、それなりに落ち着くまで、早くて3年位かな?私は30近くになっている。そして、こんな将来の事まで考えてしまう私は、重たい女に分類されるのかもしれない。

それでも。
今の清孝君が喜んでくれて、私も初めて芽生えた恋の蕾を育てたいのなら。彼が差しのべてくれた手を、握り返したかった。

美味しい美味しいとホットサンドにかぶり付く清孝君に、少し緊急しながら、口を開く。
「清孝君、あのね──」

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