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「お前は私の愛弟子達の中でも、魔力が高い。非常に能力に秀でていて、その実力は私以上かもしれない。でも、お前の弱点は致命的だ。だから、その瞳は常に私が特別に用意したこのヴェールで隠すのだよ?これなら、……されずに済む筈だからね」
「はい、お師匠様」
「良い子だね。お前がずっと、誰にも……されずに、幸せに生きていく事を、祈っているよ」
「ありがとうございます、お師匠様。では、行って参ります」
「行ってらっしゃい、可愛い弟子よ。お前に幸があらんことを」



***



ふわり、と肩に掛けられたストールの感触に、目が覚める。
「すみません、起こしてしまいましたか」
「……懐かしい、夢を見たよ。お師匠様の夢……」
「良い夢でしたね」
どうやら私は、温室でうたた寝してしまったらしい。
「……うん」

と、そこまで寝惚けながら返事をし、漸く自分が彼にとって配慮のない会話をしてしまった事に気付いて血の気がひく。
「ご、ごめん……!」
「……?何がでしょうか?」
「寝惚けて、余計な事を言った。悪かった、オースティン」
「いいえ。貴女が謝る事ではありません、リビー。それより、温室とはいえもうすぐ冬の季節です。寝てしまっては風邪をひくかもしれませんので、気をつけて下さいね」
「うん、わかった」
私は、温室にあるテーブルに突っ伏して寝てしまっていたらしい。

オースティンが顔を近付け、口付けを落とす。弟弟子であるオースティンと夫婦になって一年程経つが、一緒に修行をしていた頃はこんな関係になるなんて想像もつかなかった。
流石にもう気恥ずかしさはないが、こそばゆい気持ちが胸のどこかにある。

私の祖父がわりだった大切なお師匠様は、一年前に亡くなった。
オースティンが敵と戦闘中に魔力を暴発させてしまい、お師匠様と私、それと兄弟子が対応したが、結局兄弟子とお師匠様はその時に亡くなってしまった。

私もオースティンも力を失い、魔術師という職務を失った私が路頭に迷いそうなところを、オースティンから求婚されて気付けば結婚。以来、実は爵位のあったオースティンの屋敷で薬草作りの日々を過ごしている。


魔術師だった頃とは、対照的なのんびりとした生活。

最初はそんな生活に慣れなかったが、オースティンが根気よく丁寧に付き合ってくれて、今ではこれが私の人生なのだと理解しつつある。人々の為に生きてきた日々から解放されて、オースティンの為に生きている感覚。それは不思議な程、穏やかだ。
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