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5 二ヶ月ぶりの再会
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午前中は汎用品を販売し、午後は魔道具の作成や新しい魔法陣の研究をするのが最近の私の生活スタイルだ。
午前中の仕事が一段落したところで、魔道新聞を読みながら昼食を摂るのも日課である。
新聞の一面には筆頭魔道士候補の平民出身魔道士ルクソスが最高難易度の古代遺跡の調査を終えて無事に帰還した、という記事が掲載されていて、ホッと胸を撫で下ろした。
良かった、今度は死なずにすんだらしい。
拾った頃はとても十四才には見えなかったルクソスだが、必要な栄養を与えれば見る間に背は伸びて、本人が暇さえあれば鍛えるので逞しい身体になり、さらに元々造作は整っていたので一級魔道士に昇格した時からやたらとモテだした。
以前は平民女性からのアプローチが多かったが、これだけ有名になれば貴族からもお声が掛かるだろうと、私は愛弟子の華麗なる転身にひとり笑みが漏れる。
その時、閉めた店のドアをドンドン、と叩かれた。
「休憩中」の札が出ている筈だが、急ぎのお客様なのか店を開けて欲しいようだ。
「エルシャちゃん、ちょっとごめん、いるかい?」
人の良さそうな声が外から聞こえて、慌てて席を立つ。
五人のお子さんを育てる、とても親切な恰幅の良いおしゃべりな馴染みの女性のお客様だ。
「はい、お急ぎの御用でしょうか?」
「いいや、なんか怪しい人物がさ、エルシャちゃんの店を探し回っているらしいんだよね。普段訪ねてくる魔道士達ともちょっと違うし、注意しといたほうがいいかなって……あ!!」
「え?」
「あいつだよ、エルシャちゃん!」
お客様が指差したほうを見れば、上質なローブを羽織っているのに埃まみれで、髪も髭も伸び放題な男が今にも倒れそうな様子でこちらに向かってきていた。
もう私には魔力を察知する力はないけれど、どこから見ても魔力の枯渇状態だ。
行き倒れ寸前な様子に、何やらデジャヴを覚えたその時、その男は私を見て一度首を傾げ、そしてハッとした様子で私のほうへヨロヨロと寄ってきた。
「……師匠、ですか?」
首を傾げながら尋ねる人物。
恐らく、私の魔力量が激減したので、確信がもてないのだろう。
そして私を師匠と呼ぶ人物は、ひとりしかいない。
「もしかして、ルクソス?」
私もつい、首を傾げて尋ねた。
彼のこんな身なりを目にしたのは、出会った時以来だ。
平民の間で人気の雑誌に「旦那にしたい男一番人気」という内容の特集が組まれていたこともあるのに、同一人物だとは誰にも気づかれなかったらしい。
「師匠!師匠!師匠!!」
「ちょっと、待ってください、離れて……っっ」
私に抱き着き、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる愛弟子を必死で離そうとする。
今の私は魔道士ではなく、接客業を営んでいるのだ。
再会したのは嬉しいけれども、何日も風呂に入ってないような状態で抱き着いて欲しくはない。
常連のお客様は私達の様子を見て「なんだい、知り合いだったんだね!」と笑って言いながら手を降って去って行った。
「師匠……、師匠……」
「ひとまず、中へどうぞ」
今日の休憩時間はなくなりそうだと思いながら、私は滂沱の涙を流すルクソスを風呂場へ案内し、愛弟子の好物を即席で調理した。
午前中の仕事が一段落したところで、魔道新聞を読みながら昼食を摂るのも日課である。
新聞の一面には筆頭魔道士候補の平民出身魔道士ルクソスが最高難易度の古代遺跡の調査を終えて無事に帰還した、という記事が掲載されていて、ホッと胸を撫で下ろした。
良かった、今度は死なずにすんだらしい。
拾った頃はとても十四才には見えなかったルクソスだが、必要な栄養を与えれば見る間に背は伸びて、本人が暇さえあれば鍛えるので逞しい身体になり、さらに元々造作は整っていたので一級魔道士に昇格した時からやたらとモテだした。
以前は平民女性からのアプローチが多かったが、これだけ有名になれば貴族からもお声が掛かるだろうと、私は愛弟子の華麗なる転身にひとり笑みが漏れる。
その時、閉めた店のドアをドンドン、と叩かれた。
「休憩中」の札が出ている筈だが、急ぎのお客様なのか店を開けて欲しいようだ。
「エルシャちゃん、ちょっとごめん、いるかい?」
人の良さそうな声が外から聞こえて、慌てて席を立つ。
五人のお子さんを育てる、とても親切な恰幅の良いおしゃべりな馴染みの女性のお客様だ。
「はい、お急ぎの御用でしょうか?」
「いいや、なんか怪しい人物がさ、エルシャちゃんの店を探し回っているらしいんだよね。普段訪ねてくる魔道士達ともちょっと違うし、注意しといたほうがいいかなって……あ!!」
「え?」
「あいつだよ、エルシャちゃん!」
お客様が指差したほうを見れば、上質なローブを羽織っているのに埃まみれで、髪も髭も伸び放題な男が今にも倒れそうな様子でこちらに向かってきていた。
もう私には魔力を察知する力はないけれど、どこから見ても魔力の枯渇状態だ。
行き倒れ寸前な様子に、何やらデジャヴを覚えたその時、その男は私を見て一度首を傾げ、そしてハッとした様子で私のほうへヨロヨロと寄ってきた。
「……師匠、ですか?」
首を傾げながら尋ねる人物。
恐らく、私の魔力量が激減したので、確信がもてないのだろう。
そして私を師匠と呼ぶ人物は、ひとりしかいない。
「もしかして、ルクソス?」
私もつい、首を傾げて尋ねた。
彼のこんな身なりを目にしたのは、出会った時以来だ。
平民の間で人気の雑誌に「旦那にしたい男一番人気」という内容の特集が組まれていたこともあるのに、同一人物だとは誰にも気づかれなかったらしい。
「師匠!師匠!師匠!!」
「ちょっと、待ってください、離れて……っっ」
私に抱き着き、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる愛弟子を必死で離そうとする。
今の私は魔道士ではなく、接客業を営んでいるのだ。
再会したのは嬉しいけれども、何日も風呂に入ってないような状態で抱き着いて欲しくはない。
常連のお客様は私達の様子を見て「なんだい、知り合いだったんだね!」と笑って言いながら手を降って去って行った。
「師匠……、師匠……」
「ひとまず、中へどうぞ」
今日の休憩時間はなくなりそうだと思いながら、私は滂沱の涙を流すルクソスを風呂場へ案内し、愛弟子の好物を即席で調理した。
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