書庫『宛先のない手紙』

思考停死。

　死の恐怖ってなんだろうって考えた。
　長々、いくつも、めげたり閃いたりしながらいろいろと考えてきたけど、ひとつの答えがやっと出た。

　それは「考えられなくなること」じゃないのかな。
　突然、明日になって何も考えることがない自分になる。
　それって確かに怖い。
　食べたいと思う気持ちも、出かけたいという欲求も、のんびりしたいなあと何も考えなくてもすむ時間に憧れる自分も、ぜんぶなくなる。
　瞼は閉じても、開ければ世界は元どおり。こんなこともできなくなる。閉じたら閉じっぱなし。考えることの蓋も、閉じたら閉じっぱなし。
　心電図モニターの生命線が、ぴーーーって横棒一本槍になる状態。

　仮に肉体はなくなっちゃうけど、思考が残る場合はどうだろう。
　食べたいと思う気持ちも、出かけたいという欲求も、のんびりしたいなあと何も考えなくてもすむ時間に憧れる自分も、ぜんぶ残る。
　食べられないし、出かけるの意味が違ってくるし、のんびりしたいなあと憧れることはなくなるだろうけど、心身ともに死んでしまうより気持ちははるかに楽。

　つまり人って、考えることが生きることだったんだね。

　考えること、好きだよ。ずっと考えていたいくらい。
　まだまだ考えられるよ。
　まだまだ、がんがえ、かんが、ががが。



「所長、またAI止まりました」


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　どうですか、先生。
　重い話題を擬人化っぽくオブラートに包んでみたんですけど。
　うまく伝わりますかね。

　タイトルは『思考停死』にしようと思っています。