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幸せな結末。
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絵を文章で表すのは難しい。
説明すれば情緒が削げるし、だいたんに文章をこそげたのでは感じ取るものに差異が出る。
逆もまたしかりなんだけどね。
気持ちや感情を絵で表すのは難しい。カタチのないものに姿を与えたら、違うものになりかねない。
で?
次のお題はこれね。
解説することなく、物語として読ませるわけか。
よくもまあこうした難題を次から次へと用意できるものだな。感心するよ、マジで。
『ごんぎつね』ね。
新美南吉が18歳の時に書いたっていう物語。
気持ちの入れ違いによる悲劇じゃないか。
でも、本人オリジナルじゃなく、幼少期に聴いた民話が素になっているらしいよ。
18歳。人情噺で人を泣かせるには、ちと若すぎるもんなあ。
そういやぁ、ごんぎつねの主人公、なんて名前だったけかなあ。
そうそう兵十っていったかな。
病弱のおっかさんが喰いたがってたウナギ、そいつを“ごん”がかすめ取ったばかりに口にする前に、おっかさん死んでしまうんだったよな。
それを知った“ごん”は悪いことをしたって悔い改めて、兵十のために食べ物をせっせか運ぶって話だよね。
物語のファンはけっこういるよ。
知り合いにも何人かいる。
結末を知ってるのに、今でも読み返すと涙が滲むって言ってたなあ。
この悲劇を絵のように変えてみたいっていうことだもんなあ。
でもなんで、兵十と“ごん”が笑って記念写真撮っているんだ?
“ごん”は撃たれたけど、死ななかったということだろ?
違うの?
それとも物語は物語、舞台が終われば演者は役者に戻りますってか。
だめだよなあ、そんなんじゃ。
わかった。
じゃあ、こうしよう。
最後の部分だけいくよ。
(裏口から兵十の家に入り込んだ“ごん”。それを見つけた兵十が)こないだウナギを盗みやがったあの“ごんぎつね”めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし」
兵十は、立ち上がって、納屋にかけてある火縄銃を取って、火薬をつめました。
そして足音をしのばせて近寄って、今、戸口を出ようとする“ごん”をドンと撃ちました。
これまでの“ごん”ならバタリと倒れるところです。
世が世なら観客はお泪ちょうだいの悲しい話に耳を傾けたいと思ったことでしょう。
ところがヒーロー不在の冬の時代が久しい現代、人々は“ごん”に死んでもらいたくはありません。
これ以上悲しい思いをしたくはなかったからです。
兵十が家の中をみまわすと、土間に栗が固めて置いてあるのが目につきました。
「おや」と、兵十はびっくりして“ごん”に目を移しました。
物語の兵十なら「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」と問いかけるシーンです。それを、人々の望みが高まって具現化したスーパー・ヒーローの力で、“ごん”はなんと前足で銃弾を受け止めていたのでした。
「ごん、お前にはそんな力があったのか」
兵十はまたもやびっくりして“ごん”を見つめました。
“ごん”は、ニヒルに目をつぶったまま、口角を上げてうなづきました。
兵十は、火縄銃をばたりと取り落としました。青い煙が、まだ筒口から細く出ています。
それから“ごん”に走り寄り、“ごん”と名を呼ぶや、しかとハグしてみせました。
絵は、そのあとに撮られた記念写真です。
『ごんぎつね』への思いが幸せに傾くよう練られたアナザー・ストーリー。
説明すれば情緒が削げるし、だいたんに文章をこそげたのでは感じ取るものに差異が出る。
逆もまたしかりなんだけどね。
気持ちや感情を絵で表すのは難しい。カタチのないものに姿を与えたら、違うものになりかねない。
で?
次のお題はこれね。
解説することなく、物語として読ませるわけか。
よくもまあこうした難題を次から次へと用意できるものだな。感心するよ、マジで。
『ごんぎつね』ね。
新美南吉が18歳の時に書いたっていう物語。
気持ちの入れ違いによる悲劇じゃないか。
でも、本人オリジナルじゃなく、幼少期に聴いた民話が素になっているらしいよ。
18歳。人情噺で人を泣かせるには、ちと若すぎるもんなあ。
そういやぁ、ごんぎつねの主人公、なんて名前だったけかなあ。
そうそう兵十っていったかな。
病弱のおっかさんが喰いたがってたウナギ、そいつを“ごん”がかすめ取ったばかりに口にする前に、おっかさん死んでしまうんだったよな。
それを知った“ごん”は悪いことをしたって悔い改めて、兵十のために食べ物をせっせか運ぶって話だよね。
物語のファンはけっこういるよ。
知り合いにも何人かいる。
結末を知ってるのに、今でも読み返すと涙が滲むって言ってたなあ。
この悲劇を絵のように変えてみたいっていうことだもんなあ。
でもなんで、兵十と“ごん”が笑って記念写真撮っているんだ?
“ごん”は撃たれたけど、死ななかったということだろ?
違うの?
それとも物語は物語、舞台が終われば演者は役者に戻りますってか。
だめだよなあ、そんなんじゃ。
わかった。
じゃあ、こうしよう。
最後の部分だけいくよ。
(裏口から兵十の家に入り込んだ“ごん”。それを見つけた兵十が)こないだウナギを盗みやがったあの“ごんぎつね”めが、またいたずらをしに来たな。
「ようし」
兵十は、立ち上がって、納屋にかけてある火縄銃を取って、火薬をつめました。
そして足音をしのばせて近寄って、今、戸口を出ようとする“ごん”をドンと撃ちました。
これまでの“ごん”ならバタリと倒れるところです。
世が世なら観客はお泪ちょうだいの悲しい話に耳を傾けたいと思ったことでしょう。
ところがヒーロー不在の冬の時代が久しい現代、人々は“ごん”に死んでもらいたくはありません。
これ以上悲しい思いをしたくはなかったからです。
兵十が家の中をみまわすと、土間に栗が固めて置いてあるのが目につきました。
「おや」と、兵十はびっくりして“ごん”に目を移しました。
物語の兵十なら「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは」と問いかけるシーンです。それを、人々の望みが高まって具現化したスーパー・ヒーローの力で、“ごん”はなんと前足で銃弾を受け止めていたのでした。
「ごん、お前にはそんな力があったのか」
兵十はまたもやびっくりして“ごん”を見つめました。
“ごん”は、ニヒルに目をつぶったまま、口角を上げてうなづきました。
兵十は、火縄銃をばたりと取り落としました。青い煙が、まだ筒口から細く出ています。
それから“ごん”に走り寄り、“ごん”と名を呼ぶや、しかとハグしてみせました。
絵は、そのあとに撮られた記念写真です。
『ごんぎつね』への思いが幸せに傾くよう練られたアナザー・ストーリー。
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