26 / 116
「儲ける」から「稼ぐ」への架け橋。
しおりを挟む
前回は、仕事が遅い人がなぜそう思われてしまうのかを解説させてもらった。
原因は個々人の能力差にではなく、仕事のアプローチが違うことで生じる誤差だと理解していただいたと思う。
昨今の世の中は、労働者を金太郎飴のように型にはめたりしない。
そんなことするとたちまちのうちに人材確保が難しくなって、経営がたちゆかなくなってしまう。
企業も背に腹は代えられないのだ。
見方によっては企業の譲歩ととれるだろう。
そしてその視点は間違ってはいない。
会社は生き残るために、一歩私たち労働者に道を譲ったのだ。
だから時を同じくして「ワーク・ライフ・バランス」が叫ばれたのは偶然じゃない。
起には因があるということだ。
企業は生めよ増やせで製品を作らせ、利益の上昇曲線を限界まで高めてきた。
効率が最大限に上がっていないと経営陣は気を揉むが、汗を流すことはない。
片や鞭うたれ、追い立てられるようにがむしゃらにやらされるのはいつだって現場だ。
ろくに考えさせてもくれないから、生き方の手本さえ企業に委ねた。
「儲けろ」
「儲けろ」
「数字を上げなきゃ、金やらないぞ」
「儲けるだけ儲けろ。いずれ訪れる『楽』のために」
戦時下の、忍耐ばかりを強いる叶わない夢物語と同じだ。
もちろん、いずれ来ると信じていた「楽」はいつまでたってもやってこない。
手を伸ばせば消えてしまうリリィ・フェアリーみたいに、いつまでも目の前に幻をぶら下げられているだけだ。
かのルイス・リカルド・ファレーロも声をあげていたではないか。
「緊張の腰を折るな。妖精は追いかけ続けていないと幻さえ消え失せてしまう」
所詮、つかみとることなどできない絵に描いた餅。
これまではそれでよかった。
夢は膨らみ、そいつを喰らうだけでなんとなく幸せらしきものに浸ることができた。
夢は現実的で、儲けることにほかならなかった。
だけど、効率の悪い歯車を回すみたいに、どれどけエネルギーをつぎ込んでも、上前は上がらない。
しまいには息切れて、歩みを止める。
やってることの意味がよくわからなくなって、踏ん張って握りしてめていた拳から力を抜いてみたくなる。
なぜ拳にこんなに力を入れていたんだ?
疑問が波のように広がり、できた波紋が魂を揺さぶり始める。
すると。
早回しの開花みたいに五指を同時に開き始めていた。
そこにあったのは?
「これっぽっち」
企業だけが儲けていた。
内部留保という金庫にはたんまり貯まっていることはわかっている。
「楽」は見せるだけの与えられない餌で、すべては企業のためだった。
ばからしくなった。
隣を見ると、「ばからしくなった」とつぶやいている。
向こうからも「ばからしくなった」が聞こえる。
通知音が鳴り、画面が語りかけてくる。「ばからしくなった」
このようにして、ライフ・ワーク・バランスの「ライフ」が掘り起こされ、担がれるようになったわけだ。
だけどライフを立てるには、やはり金が要る。
いつまでたっても堂々巡り?
そう思われても仕方がない。
だけど、がむしゃらだった「儲ける」の理想郷は、「ばからしくなった」時点に置いてきた。
今は、馬車馬のようにゴールのない目標に向かうのではない。
ゴールは自分の生き方を決めたところにあった。
この手にあるのだ。
生き方が決まれば、どれほど必要か、そろばんをはじくことができる。
必要な金額を稼げばいい。
「自分のため」は、そこから始まる。
原因は個々人の能力差にではなく、仕事のアプローチが違うことで生じる誤差だと理解していただいたと思う。
昨今の世の中は、労働者を金太郎飴のように型にはめたりしない。
そんなことするとたちまちのうちに人材確保が難しくなって、経営がたちゆかなくなってしまう。
企業も背に腹は代えられないのだ。
見方によっては企業の譲歩ととれるだろう。
そしてその視点は間違ってはいない。
会社は生き残るために、一歩私たち労働者に道を譲ったのだ。
だから時を同じくして「ワーク・ライフ・バランス」が叫ばれたのは偶然じゃない。
起には因があるということだ。
企業は生めよ増やせで製品を作らせ、利益の上昇曲線を限界まで高めてきた。
効率が最大限に上がっていないと経営陣は気を揉むが、汗を流すことはない。
片や鞭うたれ、追い立てられるようにがむしゃらにやらされるのはいつだって現場だ。
ろくに考えさせてもくれないから、生き方の手本さえ企業に委ねた。
「儲けろ」
「儲けろ」
「数字を上げなきゃ、金やらないぞ」
「儲けるだけ儲けろ。いずれ訪れる『楽』のために」
戦時下の、忍耐ばかりを強いる叶わない夢物語と同じだ。
もちろん、いずれ来ると信じていた「楽」はいつまでたってもやってこない。
手を伸ばせば消えてしまうリリィ・フェアリーみたいに、いつまでも目の前に幻をぶら下げられているだけだ。
かのルイス・リカルド・ファレーロも声をあげていたではないか。
「緊張の腰を折るな。妖精は追いかけ続けていないと幻さえ消え失せてしまう」
所詮、つかみとることなどできない絵に描いた餅。
これまではそれでよかった。
夢は膨らみ、そいつを喰らうだけでなんとなく幸せらしきものに浸ることができた。
夢は現実的で、儲けることにほかならなかった。
だけど、効率の悪い歯車を回すみたいに、どれどけエネルギーをつぎ込んでも、上前は上がらない。
しまいには息切れて、歩みを止める。
やってることの意味がよくわからなくなって、踏ん張って握りしてめていた拳から力を抜いてみたくなる。
なぜ拳にこんなに力を入れていたんだ?
疑問が波のように広がり、できた波紋が魂を揺さぶり始める。
すると。
早回しの開花みたいに五指を同時に開き始めていた。
そこにあったのは?
「これっぽっち」
企業だけが儲けていた。
内部留保という金庫にはたんまり貯まっていることはわかっている。
「楽」は見せるだけの与えられない餌で、すべては企業のためだった。
ばからしくなった。
隣を見ると、「ばからしくなった」とつぶやいている。
向こうからも「ばからしくなった」が聞こえる。
通知音が鳴り、画面が語りかけてくる。「ばからしくなった」
このようにして、ライフ・ワーク・バランスの「ライフ」が掘り起こされ、担がれるようになったわけだ。
だけどライフを立てるには、やはり金が要る。
いつまでたっても堂々巡り?
そう思われても仕方がない。
だけど、がむしゃらだった「儲ける」の理想郷は、「ばからしくなった」時点に置いてきた。
今は、馬車馬のようにゴールのない目標に向かうのではない。
ゴールは自分の生き方を決めたところにあった。
この手にあるのだ。
生き方が決まれば、どれほど必要か、そろばんをはじくことができる。
必要な金額を稼げばいい。
「自分のため」は、そこから始まる。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる