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しおりを挟む私たちのやりとりは、結構な人の目を引いていたようで、飲食店の従業員ではなく、冒険者ギルドの受付の方が別室を用意してくれた。
冒険者組合の建物はどこも、食堂の宿泊施設が一緒になっているものらしい。私が眠っていたのは女性専用の宿泊スペース。男性用と女性用がはっきり分かれていて、お互いに行き来はできない。しっかりとしたセキュリティになっているらしい。
受付の女性の案内で通された部屋は、商談用の応接室。屋敷ほど豪華な応接室ではないけど、それなりに広く、ローテーブルとソファーに観葉植物まで完備されている。
この場にいるのは、私、フィリップ、セルジ、そして例の少女の4人だけ。
「あたしは人呼んで『暁のロッテ』! 炎系の攻撃魔術を得意とする魔術師!」
彼女はなんだか不思議なポーズをとりながら自己紹介を始めた。やっぱり面白い。
「何をどこまで知っている?」
彼女の朗らかな挨拶に流されることなく、フィリップは短く切り込んでいく。
「真面目なフィリップさんが1ヶ月間もの長期休暇を取得したのは、何やらおめでたい理由があったかららしいじゃないですか」
おめでたい理由というのは、婚約の話かな。両親の様子がおかしくなければ、フィリップは妹と……あのまま……今は感情にのまれてる場合じゃない! ロッテは思っていた以上に正確に事情を把握しているみたい。彼女は今も、教会の関係者と連絡を取り合っているのかもしれない。
「そんなフィリップさんが、今では騎士団の目を逃れイイトコのお嬢様を人、辺境の地へ逃れようとしている」
彼女は何をしているのか、腕を組みながら小さな部屋の中をうろうろ歩き始めた。自分の顎に手をかけ、目を伏せながら。歩きにくくないのかな?
「そんなことをする理由はただ1つ!」
彼女は人差し指をフィリップにつきつける。私達の間に緊張が走る。
「――結婚を嫌がってそこのお嬢様と駆け落ちしようと、そう考えているのでしょう!!!」
ん? え、えええ!!!
「いや、ちょっと待――」「ち、ちがっ!」
フィリップと、私が返答を躊躇っている間に――
「そうなんすよ!」セルジが肯定した?!
何でそんなことを?! と思ったのは私だけではなかったはずなのに、一瞬黙り込んだ後、フィリップもその話に乗り始めた!
「まあ、そういうことなんだ。だから、何かと目立つ君と行動を共にするわけにはいかないんだ。すまないが今回は諦めてくれ」
フィ、フィリップまで。この場を乗り切るための嘘だと分かっていても照れる。でも彼女は諦めない!
「いやいや、だったら尚更、あたしを仲間にした方がいいですって! 絶対!」
「なぜ?」
「フィリップさん朴念仁じゃん! あたしがいないと、絶対すぐに振られちゃいますよ?!」
「そ、そうなのか?!」
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