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情熱
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毎日、当たり前のようにパソコンをいじっている。
でもボクの高校生だったときはこれが高級品で、少なくともボクの家にはなかった。
だからボクは手書きで小説を書いていた。
茨木くんはパソコンで書いていたし、なんと一時期は保田くんまでもがワープロを使って小説を書いていたから、うらやましくて仕方なかったのを覚えている。
パソコンやワープロで文字を綴るということで一番ありがたいのは下書きができることである。
手書きで書くと下書きしてからすべてを書き直さなければならない。
小説を書き始めたばかりのボクは早く作品を完成させたかった。
できた作品を早く公開したかったのだ。
感想が欲しかった……。
否……
感想が欲しかったのではなく、自分に都合のいい誉め言葉が欲しかったのだ。
否定的な感想などいらないのだ。
批判されるぐらいなら読んでくれなくてもいい。
実はこんな思いに関しては今も変わっていないような気がする。
まあ、さすがに今は、10代の時よりは大人になっているので、すべて褒めてほしいとは思わない。
でもあまりに否定的な意見はやっぱり耳を傾けないことにしている。
早く作品を完成させたかったボクは初稿を手書きで書くだけで完成としていた。
初稿だけで何作の作品を書いたかは覚えていない。
とにかくたくさん書いたのを覚えている。
勉強する暇を惜しんで書いていた。
深夜のラジオを聴きながらノートに小説を綴っていた。
ボクの青春とは……。
文字を書くことだった。
自分の頭の中にある物語を綴ることこそ一生かけてやりたいボクの『やりたいこと』だった。
書きあがった作品は仲の良い友人に見せた。
仲の良い友人なのでそんな厳しい意見はない。
言うてもそこまで悪い文章ではないのだろうから、厳しい意見はなかったのだろうと思う。しかしすごく良いものではないはずなので改善点はたくさんあっただろう。
しかしそんなことはあまり言わない友人たちだった。
たくさんの作品を読んでもらいたいと思い書き続けた結果、ついにはボクの右手はシャープペンシルを持つと痛くなるようになった。
病院にはいかなかったけど、おそらく腱鞘炎ではないかと思う。
初稿で作品を上げていたことには書き直しが面倒だという理由が大きな理由の一つだったのだけど、もう一つの理由としては、当時あふれ出るほどあったアイデアをすべて作品にしてみたかったということもある。
一つの作品にこだわるよりも次から次に新しい作品を書きたかったのである。
書き直しは大変でめんどくさい。
そんなことしているぐらいなら新しい作品を書きたい。
そう思っていたボクだけど推敲の重要性を軽く見ていたわけではない。
初稿で完成させた作品がいい作品であるわけがないのはよく分かっていたし、自分で読み直しても書き直したいところはたくさんあった。でも手書きでそれをやると最初からすべて書き直さなければならない。
それをやるにはたくさんの時間がかかるし、手はさらに痛くなる。
手が痛いからと言って書くのを辞めるということは考えなかった。
でも痛みに耐えながら休憩しつつ書かなければならないのは煩わしかった。
だから当時からボクはパソコンが欲しかった。
パソコンがあれば、腱鞘炎を起こして痛くなった右手に無理させなくても好きなだけ書ける。
それに初稿の作品に手直しもできる。
もう最高ではないか。
いやいや……。
これを書いていてあらためて思ってのだが、なんてボクは考えが甘いのだろう。
パソコンやワープロがなかった時代の文豪たちは腱鞘炎の痛みに耐えながら、推敲の面倒くささなど何も思わず何度も作品を手直しし、自分の納得いく作品を世に送り続けてきたのではないだろうか。
つまりそこまでのこだわりや情熱がないボクが未だに趣味でしか文章を綴ることができないのは当然のことなのだ。
高校を卒業して数年後にボクはパソコンを手に入れた。
でもその時にはすでに社会人になっており『仕事が忙しい』という理由で書かなくなっていた。
高校生だった頃の情熱はなくなっていた。
再びその情熱が燃え上がるのは、その10年以上経った後の話である。
パソコンがないから推敲しない。
仕事が忙しいから書かない。
ボクの情熱はその程度なのかもしれない。
でも現時点でのボクははっきりと『書きたい』と思っている。
今、情熱はある。
それがどの程度のものかは分からない。
ただ……書きたいという気持ちがある以上、ボクはどんな環境でも書き続けるだろう。
でもボクの高校生だったときはこれが高級品で、少なくともボクの家にはなかった。
だからボクは手書きで小説を書いていた。
茨木くんはパソコンで書いていたし、なんと一時期は保田くんまでもがワープロを使って小説を書いていたから、うらやましくて仕方なかったのを覚えている。
パソコンやワープロで文字を綴るということで一番ありがたいのは下書きができることである。
手書きで書くと下書きしてからすべてを書き直さなければならない。
小説を書き始めたばかりのボクは早く作品を完成させたかった。
できた作品を早く公開したかったのだ。
感想が欲しかった……。
否……
感想が欲しかったのではなく、自分に都合のいい誉め言葉が欲しかったのだ。
否定的な感想などいらないのだ。
批判されるぐらいなら読んでくれなくてもいい。
実はこんな思いに関しては今も変わっていないような気がする。
まあ、さすがに今は、10代の時よりは大人になっているので、すべて褒めてほしいとは思わない。
でもあまりに否定的な意見はやっぱり耳を傾けないことにしている。
早く作品を完成させたかったボクは初稿を手書きで書くだけで完成としていた。
初稿だけで何作の作品を書いたかは覚えていない。
とにかくたくさん書いたのを覚えている。
勉強する暇を惜しんで書いていた。
深夜のラジオを聴きながらノートに小説を綴っていた。
ボクの青春とは……。
文字を書くことだった。
自分の頭の中にある物語を綴ることこそ一生かけてやりたいボクの『やりたいこと』だった。
書きあがった作品は仲の良い友人に見せた。
仲の良い友人なのでそんな厳しい意見はない。
言うてもそこまで悪い文章ではないのだろうから、厳しい意見はなかったのだろうと思う。しかしすごく良いものではないはずなので改善点はたくさんあっただろう。
しかしそんなことはあまり言わない友人たちだった。
たくさんの作品を読んでもらいたいと思い書き続けた結果、ついにはボクの右手はシャープペンシルを持つと痛くなるようになった。
病院にはいかなかったけど、おそらく腱鞘炎ではないかと思う。
初稿で作品を上げていたことには書き直しが面倒だという理由が大きな理由の一つだったのだけど、もう一つの理由としては、当時あふれ出るほどあったアイデアをすべて作品にしてみたかったということもある。
一つの作品にこだわるよりも次から次に新しい作品を書きたかったのである。
書き直しは大変でめんどくさい。
そんなことしているぐらいなら新しい作品を書きたい。
そう思っていたボクだけど推敲の重要性を軽く見ていたわけではない。
初稿で完成させた作品がいい作品であるわけがないのはよく分かっていたし、自分で読み直しても書き直したいところはたくさんあった。でも手書きでそれをやると最初からすべて書き直さなければならない。
それをやるにはたくさんの時間がかかるし、手はさらに痛くなる。
手が痛いからと言って書くのを辞めるということは考えなかった。
でも痛みに耐えながら休憩しつつ書かなければならないのは煩わしかった。
だから当時からボクはパソコンが欲しかった。
パソコンがあれば、腱鞘炎を起こして痛くなった右手に無理させなくても好きなだけ書ける。
それに初稿の作品に手直しもできる。
もう最高ではないか。
いやいや……。
これを書いていてあらためて思ってのだが、なんてボクは考えが甘いのだろう。
パソコンやワープロがなかった時代の文豪たちは腱鞘炎の痛みに耐えながら、推敲の面倒くささなど何も思わず何度も作品を手直しし、自分の納得いく作品を世に送り続けてきたのではないだろうか。
つまりそこまでのこだわりや情熱がないボクが未だに趣味でしか文章を綴ることができないのは当然のことなのだ。
高校を卒業して数年後にボクはパソコンを手に入れた。
でもその時にはすでに社会人になっており『仕事が忙しい』という理由で書かなくなっていた。
高校生だった頃の情熱はなくなっていた。
再びその情熱が燃え上がるのは、その10年以上経った後の話である。
パソコンがないから推敲しない。
仕事が忙しいから書かない。
ボクの情熱はその程度なのかもしれない。
でも現時点でのボクははっきりと『書きたい』と思っている。
今、情熱はある。
それがどの程度のものかは分からない。
ただ……書きたいという気持ちがある以上、ボクはどんな環境でも書き続けるだろう。
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