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インフォームドコンセントをちゃんと勉強しろ!!
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『承知致しました。では15時ですね。自分も同席致します』
気持ちが落ち着かないまま食事を食べて、ボクは電話をかけ続ける。
ある短期入所の施設が今日から3日ほど空いているとのこと。
早速、予約を入れて基本情報を送り、15時に入所と相成った。
契約はその場で同席した家族と共に行うことになる。
一息ついた。
これでしばらくは時が稼げるな。
まったく年末のこの忙しい時に……
そんなふうに思ったけど、まあ仕方ない。
これに関しては本人はおろか、家族も悪いわけではない。
ちゃんと退院支援をしてくれない病院が悪いのだ。
まあ、こんなことはよくある話なので、こちらで対応できることは対応すればいいのだ……と考えられるようになったのは、経験を積んでどんな状況でも慌てずに対応できるようになったつい最近の出来事であり、新人の頃はこんなことを言われたらパニックになってしまっていた。
慣れというものは恐ろしい。
そもそも、こんな状況には慣れたくはないものだ。
退院支援は入院先の病院がやるものなのだから、在宅のケアマネジャーにやらせないでいただきたいものである。
一息ついたので、今日やろうと思っていた仕事を急ぎで手につける。
早く処理してしまわないとまた他の問題がやってくるかもしれないので、昼休みも食べるものを食べたらすぐにパソコンに向かう。
支援経過を書いてしまわなければならない。
新規の人の担当者会議の記録をつけなければならない。
そして、更新の人のケアプランを立てなければならない。
事務所にいてもやることは盛沢山で、決して暇ではないのだ。
時間はあっという間に流れていく。
気が付けば14時45分。
『契約の立ち会いと担当者会議に行ってきます』
ボクは事務所にそう告げて外出する。
車で15分程度で短期入所をお願いした施設に到着する。
すでに利用者と家族はやってきていたが様子がおかしい。
何か深刻な顔をして、施設の看護師と話している。
『遅くなりました』
『ああ、お世話になっています』
『どうかしましたか?』
『はい……実は血尿が出ていまして……』
『ええ!!』
『記録を見ると心臓にも疾患がおありですし、夜間は看護師が不在なので、この状態では入所の受け入れは難しいという話しをしていたんです』
『そ……そうですか』
ボクは家族の顔を見た。
『どうしましょう?』
『入院していた病院に相談してみましょう』
そう言ってボクは病院に電話した。
退院支援の古江さんを呼び出して事情を話しする。
『そうなんですね。まあ手術の後なんで血尿はでますという話しをご家族には話したんですけど』
『それは分かります。問題はこの状態だと短期入所の受け入れができないことなんですよ』
『それはこちらに言われても困ります』
『なんでですか? そちらが考えないといけない問題でしょ。入院前から話していますけどね、この人、認知症の奥様と二人暮らしで、トイレも自分で行くことができない状態では自宅に帰るのは難しいんですよ』
『それは聞きました。ただ今回の入院期間では転院先などは探すことはできない決まりになっていまして』
『分かってます。だからこそ短期入所をこちらで手配したんですよ。でも術後の状態で血尿が出る状況だと介護施設は医療行為を基本的に行えないので受けてくれないんです。ですからこちらではもう手の打ちようがないんです』
『ただ、入院か否かを決めるのはわたしの判断ではできないので……』
『じゃあ、どうすればいいんですか?!』
『先生に判断していただくしか……』
『今から受診すればいいんですか?』
『はい……えーーと……でも入院できるという保証はありませんよ』
いい加減にしろ。
という言葉を飲み込んでボクは『分かりました』と言い、これから受診することを告げて電話を切った。
ここにきて短期入所は入所できず、血尿が出ている状況で、認知症の奥さんと二人で自宅に帰って、何かあったら古江さん、あんた、責任とれるのか?
そう言いたかった。
結局、家族はもう一度、本人を連れて病院に行った。
医師は渋々、診てくれたそうだが『ちゃんと説明したのにこんなことになるのなら手術なんか受けるべきではなかったですね』とまで言ったそうだ。
看護師も看護師なら、医師も医師である。
こんなことになるのなら?
違う。
あんたの説明が悪いから家族にちゃんと伝わっていないだけだ。
説明と同意をもう一度勉強しなおしてほしい。
それにしても質の悪い退院支援だった。
退院支援とは、単に退院させることではないんだぞ……とボクは声を大にして言いたい。
腹が立つので病院名や当該看護師、医師の名前もすべて実名で書いてやろうと思ったが、それはいくらなんでもやりすぎだと思ったのでやめた……。
だけど……
このやりとりを見ていた短期入所の担当の方はボクにこうつぶやいた。
『あの病院、評判悪いんですよね……』
ボクが言わなくても口コミで悪い噂は広がっていく。
願わくば、この病院がちゃんとした退院支援ができるようになって、こういう噂を払しょくしてもらいたいものである。
気持ちが落ち着かないまま食事を食べて、ボクは電話をかけ続ける。
ある短期入所の施設が今日から3日ほど空いているとのこと。
早速、予約を入れて基本情報を送り、15時に入所と相成った。
契約はその場で同席した家族と共に行うことになる。
一息ついた。
これでしばらくは時が稼げるな。
まったく年末のこの忙しい時に……
そんなふうに思ったけど、まあ仕方ない。
これに関しては本人はおろか、家族も悪いわけではない。
ちゃんと退院支援をしてくれない病院が悪いのだ。
まあ、こんなことはよくある話なので、こちらで対応できることは対応すればいいのだ……と考えられるようになったのは、経験を積んでどんな状況でも慌てずに対応できるようになったつい最近の出来事であり、新人の頃はこんなことを言われたらパニックになってしまっていた。
慣れというものは恐ろしい。
そもそも、こんな状況には慣れたくはないものだ。
退院支援は入院先の病院がやるものなのだから、在宅のケアマネジャーにやらせないでいただきたいものである。
一息ついたので、今日やろうと思っていた仕事を急ぎで手につける。
早く処理してしまわないとまた他の問題がやってくるかもしれないので、昼休みも食べるものを食べたらすぐにパソコンに向かう。
支援経過を書いてしまわなければならない。
新規の人の担当者会議の記録をつけなければならない。
そして、更新の人のケアプランを立てなければならない。
事務所にいてもやることは盛沢山で、決して暇ではないのだ。
時間はあっという間に流れていく。
気が付けば14時45分。
『契約の立ち会いと担当者会議に行ってきます』
ボクは事務所にそう告げて外出する。
車で15分程度で短期入所をお願いした施設に到着する。
すでに利用者と家族はやってきていたが様子がおかしい。
何か深刻な顔をして、施設の看護師と話している。
『遅くなりました』
『ああ、お世話になっています』
『どうかしましたか?』
『はい……実は血尿が出ていまして……』
『ええ!!』
『記録を見ると心臓にも疾患がおありですし、夜間は看護師が不在なので、この状態では入所の受け入れは難しいという話しをしていたんです』
『そ……そうですか』
ボクは家族の顔を見た。
『どうしましょう?』
『入院していた病院に相談してみましょう』
そう言ってボクは病院に電話した。
退院支援の古江さんを呼び出して事情を話しする。
『そうなんですね。まあ手術の後なんで血尿はでますという話しをご家族には話したんですけど』
『それは分かります。問題はこの状態だと短期入所の受け入れができないことなんですよ』
『それはこちらに言われても困ります』
『なんでですか? そちらが考えないといけない問題でしょ。入院前から話していますけどね、この人、認知症の奥様と二人暮らしで、トイレも自分で行くことができない状態では自宅に帰るのは難しいんですよ』
『それは聞きました。ただ今回の入院期間では転院先などは探すことはできない決まりになっていまして』
『分かってます。だからこそ短期入所をこちらで手配したんですよ。でも術後の状態で血尿が出る状況だと介護施設は医療行為を基本的に行えないので受けてくれないんです。ですからこちらではもう手の打ちようがないんです』
『ただ、入院か否かを決めるのはわたしの判断ではできないので……』
『じゃあ、どうすればいいんですか?!』
『先生に判断していただくしか……』
『今から受診すればいいんですか?』
『はい……えーーと……でも入院できるという保証はありませんよ』
いい加減にしろ。
という言葉を飲み込んでボクは『分かりました』と言い、これから受診することを告げて電話を切った。
ここにきて短期入所は入所できず、血尿が出ている状況で、認知症の奥さんと二人で自宅に帰って、何かあったら古江さん、あんた、責任とれるのか?
そう言いたかった。
結局、家族はもう一度、本人を連れて病院に行った。
医師は渋々、診てくれたそうだが『ちゃんと説明したのにこんなことになるのなら手術なんか受けるべきではなかったですね』とまで言ったそうだ。
看護師も看護師なら、医師も医師である。
こんなことになるのなら?
違う。
あんたの説明が悪いから家族にちゃんと伝わっていないだけだ。
説明と同意をもう一度勉強しなおしてほしい。
それにしても質の悪い退院支援だった。
退院支援とは、単に退院させることではないんだぞ……とボクは声を大にして言いたい。
腹が立つので病院名や当該看護師、医師の名前もすべて実名で書いてやろうと思ったが、それはいくらなんでもやりすぎだと思ったのでやめた……。
だけど……
このやりとりを見ていた短期入所の担当の方はボクにこうつぶやいた。
『あの病院、評判悪いんですよね……』
ボクが言わなくても口コミで悪い噂は広がっていく。
願わくば、この病院がちゃんとした退院支援ができるようになって、こういう噂を払しょくしてもらいたいものである。
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