アリスと女王

ちな

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報せ

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恐らく祭壇があった場所だろうと思しき場所の、左側に扉を見つけました。長い蔦が幾重にも絡みつき、その扉を隠しているようにも見えました。濃い緑色の葉がひしめき合って、かくれんぼを楽しんでいるようです。

凛はゆっくり扉に近付き、そっと手を伸ばしてみました。少し探るだけでドアノブは簡単に見つかりました。随分錆びていますが、手をかけると案外あっさりと動きます。引き戸の扉は、呆気ないほど軽く開きました。

何が出てくるのか分かりません。慎重に、ゆっくりと開きます。

暗い扉の奥から、肌を刺す冷たい風がひゅっと零れました。

きい、と蝶番が鳴りました。ここだよ、ここにおいでよと誘うように、凛の力が無くとも、自然と扉が開いていきます。

ごくりと喉を鳴らして中を覗こうとした凛に、二羽の青い小鳥が割れた窓からばさばさと騒がしく入ってきました。

「えっ、きゃああっ!」

小鳥は狂ったように、前へ進もうとする凛を阻みます。ピーピーと甲高い声で泣き喚き、凛の手や髪を啄みました。

「いっ痛い!なに、どうし……」

凛ははっとしました。

この小鳥に見覚えがあったのです。

凛はたった今思い出しました。この子たちとは以前、森で出会いました。蜜とミルクを腹いっぱいに啄んで、嬉しそうに飛び立っで行った、あの小鳥たちです。

指を伸ばして見ましたが、小鳥はそんなものに目もくれず、ドアノブを掴む手を必死に啄みます。

「なにか伝えようとしてるの…?」

ドアノブからゆるく手を離した凛は、改めて小鳥を見ました。必死に何かを伝えようと鳴き、凛の頭の上をばさばさと旋回します。

残念ながら動物のことばを理解できませんが、凛は何かを感じ取りました。

「…なんだろう」

異常なほど狂ったように凛の頭の上を旋回し、今度は高く舞いました。

その様子を目で追うと、小鳥は二羽揃って凛が倒れ込んだ扉の辺りに飛んでいきます。そしてまた、ピーピーと何かを鳴いて報せました。

首を傾げながら一歩踏み出すと、扉が酷い音を立てて閉まってしまいました。

あまりの音にびくりと肩を跳ねさせ、今一度扉をじっと見つめます。

扉は沈黙していました。しかし、何となく、嫌な予感がしたのです。

正しい道だとばかり思っていた凛ですが、急に恐ろしくなって、慌てて小鳥たちのほうへ駆けていきました。

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