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君が死なないための試行錯夢
探しものは見つからない
しおりを挟む本鈴が鳴る音に、顔を上げる彼はカミオだ。大きな目で、鐘の音のする天上を見上げてから、教室内を見回した。
「サークマ、遅刻魔かな。本鈴鳴っちゃったよ~」
予鈴の前には必ずいるはずのサクマの姿がないことに、カミオは不満を募らせていた。仕入れたばかりでフレッシュなネタの吐き出し先がないのだ。
カミオが口を尖らせて、他の発散先を探して、教室を再び見回し始めたとき、青い顔をした青年がふらっと教室に入ってきた。カミオにとって好みな雰囲気ではあったが、病んだ中にある彼の透明感がカミオの範囲対象外だった。
「道野樹君も遅刻スレスレ魔? 顔が青いけど、幽霊でも見た?」
彼にとって興味があるのは、がっつり霊に取り憑かれて、儚く、人生あきらめモードの気質、ちょっぴりやんちゃで強引な人間だけだった。隙あらば、心霊やオカルトのうわさは抜かりなく聞き出す質だったのだが。
「サクマが……」
カミオと道野樹志音が一瞬だけ目を合わせた。つぶらな瞳と色のない瞳がかち合って、すぐに逸れた。
「居なくなった」
さがしものは見つからない。なぜなら、それは自分の中にあるから。
聞かせてくれないのなら、供物ごと、その名──"ささげもの"をもらう。
夏至が過ぎ、梅雨が終わるまでに、もっとも乞い願ったものの「名」を捧げなければならない。結んだ約束からは逃れられない。代償は永劫、払い続けなければならないのだ。
また、ささげものの意思疎通が可能な場合、一つ、その願いを聞き入れなければならない。願いは神約として結ばれ、千切れることはなく、役目に縛られ続ける。
声がした。確かに声だった、はずなのに。その音の響きの正体はつかめなかった。せせらぎの音、まぶたを刺す陽光、濡れた冷たい感触。
重いまぶたを押し上げ、眠気を覚まそうと、きらめく水面に吸い寄せられていく。水に手を伸ばそうとした意思は僕。川面に映る姿は、シノだ。チグハグした感覚はなかった。倦むほど永く痛む、裂かれた傷がやっと癒えていく気がした。
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