黒き荊の檻

兎守 優

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5.素直

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 次第に人間として生きている感覚を忘れていった。俺はこの二人の吸血鬼を楽しませるために存在しているんじゃないかと思えてくる。

 俺は声も上げられないほど感じ入っていた。後ろから南場先輩が、硬くなったモノを抽挿して、突き上げるように腰を動かしながら、ナカをこねくり回す。
 前は、楠城くすのきのモノと俺のソレが擦り合わされ、ゆるゆると扱かれている。楠城くすのきの舌は口内で俺の舌を絡め取り、口内をまさぐっている。
 ときおり後ろから回った先輩の手が、ピンと起った乳首をカリカリと爪で引っかく。

 甘い痺れが大きな波となって何度も押し寄せ、真っ白になって意識が飛びそうになる。俺がイキそうになる度に楠城くすのきの手は、ひどく速度を緩めて、くすぶる俺の熱をたぎらせた。
「んー! ンんん!」
 キスの息継ぎさえ与えてもらえず、イキたいと乞うことも許されない。俺の変化に気づいたのか、楠城くすのきが唇を離した。

「南場、やれ」
 構える暇なく、ナカのしこりが先輩の硬く太いモノでグリグリと捏ねられる。
「やぁ、んっ、あ……ッ!」
 俺の先端から飛沫が吹き上がった。
「ほう。男の潮吹きというのは初めて見たな」
 恥ずかしさなど感じなかった。生暖かいモノが俺のナカに広がっていく。先輩が俺の締めつけでイッて、熱い飛沫を注いでくれているのだと考えるだけで、腰が疼く。

「射精したのか、南場。若い男だな、貴様は」
「……お前が鈍すぎるんだろうが」
 先輩の放ったモノがまだ尾を引いている。南場先輩の牙がつぷりと首筋を刺す。下から挿れられているのに、上から吸われていて。まるで俺たちは循環行為をしているじゃないかという錯覚に陥る。

「ろくに食わせもしない。休む暇も与えない。手加減もしない。お前が吸血鬼の感覚で、人間を見てるからすぐ壊すんだろうが」
「ほう。力の強い俺が悪いと?」
「お前は人間嫌いだが、人間を知りたいどうしようもない奴なんだろ。なら、人間に合わせようとしろ。相手をよくも知ろうともしないで、お前の考えをぶつけるだけの探り方は幼稚だと言ってるんだ」

 ぶるりと震えたのは快楽のせいではなかった。空気がひやりとする。まただ。楠城くすのきの怒りは場の空気を変えてしまう。
「口の利き方がなっていない小僧だな」
 楠城くすのきの目が赤く輝く。次の瞬間、俺の目の前には南場先輩が。

楠城くすのき、お前……ッ!」
「どうした? 篠垣ささがきとこうしたかったのだろう? 喜べ、南場」
「ちがう!」
 やっときちんと彼の顔を見られるのに。先輩は頑なに目を合わせてくれない。
「素直になれないのなら、従わせるまでだ」

 「俺は」と言いかけ、先輩が自分の喉を締め上げる。
「口だけ押さえようとしても無駄だ。貴様が素直になるようかけた術だからな」
 今度は楠城くすのきが俺の両腕を拘束し、後ろから一気に肉棒を突き入れた。
「ぁ、ンんっ」
 楠城くすのきのモノの先端が奥に当たって、俺の体は悦で打ち震えた。
「俺はこのまま動かないでやる。存分に愛し合え」
 先輩が頭を抱えてうめいた。

「おれは、ぐぅっ。タイキが、クソッ!」
 重厚な固い台の上を先輩は思いきり叩きかけた。
「死んでいく後輩ばかり見送ってきた。だから、こんな……巻きこみたくなかったんだ。危ないヤマだと聞いたから、タイキには伝えなかったんだ」
 かぶりを振って、声をしぼり出すように先輩は言う。
「タイキを信用していなかったわけじゃない。まだタイキにこのヤマは早すぎると思って」
 勢いを失った拳が台の上に落ちた。

「あれは俺たちでも手に負えないヤマだった。吸血鬼絡みの事件だなんて俺たちも知らなくて」
 先輩は顔を上げかける。
 「俺は一課のエースでもなんでもないんだ。ただ生き残り続けただけだ」と言い、顔を上げた。その目には涙をたたえていた。

「タイキが俺のこと、エースでもなんでもなくて、先輩のままでいて欲しい、そう言ってくれたから俺はその言葉にすがって、苦しくても息ができて」
 歯をガチガチと振るわせ、眉根をギュッと寄せながら、声をしぼり出す。

「タイキ、好きなんだ。タイキだけは失いたくない。これがただの好意とか好感じゃないと分かってからはつらかった。俺が思う好きは、タイキにもっと触りたいとかセックスしたいとか思うような、恋愛感情なんだ」
 声を震わせ、肩をわななかせ、先輩は涙を落とした。

「吸血鬼に魂を売ってでも、タイキとまた会いたかった。会って、夢の中でもいいから、タイキに触れて、タイキを抱きたかった。俺はタイキをそういう目で見てしまっていた」
 泣きながら見上げてきた先輩は、赤い目をしていた。先輩の手が俺のほおを包む。

「俺を……許さないでくれ」
 唇に先輩の唇が重ねられる。優しく唇を押しつけるだけのキスだったけれど、俺はもっともっと、欲しくなってしまう。
 俺が口を開けて舌で先輩の唇を舐めれば、誘われた先輩の舌がぬるりと口内に入ってくる。舌を合わせて、吸って、あふれてくる唾液をも互いの喉に通して。
 銀糸が引く。先輩の唇が離れていく。口寂しさを惜しむ間もなく、舌が耳を舐めていく。吸いつくようにして耳をしゃぶりながら、先輩は俺の胸の尖りに手を伸ばしてくる。クニクニと捏ねたり、指の腹で尖りを擦ったり。
 気持ちが良すぎて、喘ぎが止められない。

「ん、ぁ……あんっ」
 もう片方の耳を舐めしゃぶられ、胸の尖りはカリカリと爪で引っかかれる。
 腰がガクガクと自然と揺れてしまっていた。楠城くすのきのモノを俺が抜き差しているような感覚になる。
 こんなはしたない自分が恥ずかしくてたまらないのに、先輩の愛撫でたっぷりと快楽を与えられ、体の疼きがこらえられない。
 耳から首筋へ、鎖骨と吸いつかれながら、唇が下りていく。あぁ。先輩が俺の腫れて膨れ上がった乳首に、舌を──

「やんっ、あっ、あん」
 舌で舐めしゃぶり、吸いつく胸への愛撫は想像以上に気持ちよく、片方だけで俺はよだれが止まらなくなっていた。
「んンンっ!」
 空いている方の乳首も先輩はクリクリと摘まんで回すから、快楽の逃げ場がなく、ますます腰はみだらに揺れていく。
「ん、あ……ッ!」
 先輩が乳首を柔く噛んだ。俺はその刺激でイってしまう。

 イっているのに、先輩は俺のもう片方の乳首を口に含み、出した白濁を擦りつけながら、俺のモノを扱きだした。
 果てたばかりなのに、また快楽の波が押し寄せてくる。見れば先輩のモノも先端から先走りをこぼし、そそり立っていた。
「ぁん、せんらい、もういいから、いれて、くらさいれす」
 イッた締めつけで反応のなかった楠城くすのきのことなど、俺の頭にはもうない。後ろには楠城くすのきのモノが突き刺さったままなのに。

「仕方ないな。貴様の〝素直になる〟手助けぐらいはしてやる」
 俺の体は後ろにのけ反った。両脚を広げて、先輩の眼前にそこをさらす。先輩が欲に塗れた目で、俺の全身を舐め回すように見ている。
「タイキ……好きだ、タイキっ!」
 先輩が先端をあてがう。先客がいるそこへ、無理やり、ねじ込んで入ってきた。

 苦しい。けれど、俺で興奮して硬くなった先輩のモノが望んだところへ入ってきて、苦しさよりも興奮の方が勝った。
 先輩の太くて硬いモノが、俺のナカの気持ちのいいところばかり、押し上げながら、奥へ進んでくる。ナカのしこりをぐりと押されたとき、俺の体は勝手に跳ねた。

「んゃあ、なに、これ」
 イッたはずなのに出なかった。悦が燻って、ずっと止まらない。
「やぁん、きもちいぃ、せんらい、くすのき。たすけれ……」
 必死に頭を振って泣きじゃくった。先輩が流れていく前に涙を吸う。
 後ろの楠城くすのきが腰を揺らし出した。先輩も俺の唇を奪って、舌を絡めながら、肉棒の抽挿をはじめる。二人の太くて硬いモノにナカをぐちゃぐちゃにされて、いっぱいすぎて、涙と快楽が止まらない。

「いぃ、きもひぃい、いきたい、ぁん……」
「タイキ、タイキ……っ!」
 先輩が切なげに名前を呼び、腰を打ちつけて奥を強くうがった。
 瞬間、果てた。俺の先輩の胸にまで白濁が飛び散り、俺の体を汚した。遅れて先輩が俺のナカで果てた。
 先輩が俺の首筋に牙を立て吸血しながら、ナカに熱い飛沫を注いでいる最中に、楠城くすのきのも、ぶるりと震えて、イッた。
 楠城くすのきが俺の項を噛んだ。そこで俺の意識は落ちた。
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