24 / 330
一章
二十一話 テスターミーティングⅠ
しおりを挟む
「こんにちは、キョウ。迎えに……!?」
約束の時間より少し前、家の前でエリスとハティとで早めの食事を取っていたところに迎えに来たアラマキさんが、庭に入ってくるなり固まっていた。
そういえば、アラマキさんはライノス襲撃の顛末については話を聞いていたみたいだけどハティを実際に見るのはコレが初めてだったか。
うんうん、わかるぞ。
コイツを突然目にしたらやっぱり固まるよな。
俺も全く同じ様な反応だったからものすごく理解できる。
「こんにちわー」
「――あ、ああ。こんにちはエリスちゃん」
エリスの挨拶で硬直が解けたアラマキさんだったが、その顔はあからさまに引きつっていた。
まぁ、長閑な……とは少々言い難い村の雰囲気だけど、平和な村の庭先で自分の数倍はある狼が居たら誰だってビビるよな。
「大丈夫ですよアラマキさん。ハティはこれで居てかなり賢いんで」
「ああ、うん。話には聞いていたけど、聞きしに勝るとはまさにこのことだね……」
ちょうど食べ終わるところだったので、自分の食器を片付けたエリスがハティの背中によじ登っていた。
ちなみにハティの食事は夜のうちに自分で取ってきていた。
狩場で腹を満たした後、牛か何かの後ろ足を2本持ち帰ってくるようで、それをこちらの朝食や昼食に合わせて齧っていた。
最初はこの巨体を維持するだけの餌の確保をどうしようかと本気で悩んだが、実際には自力で解決してくれる手のかからないワンコだった。
「ご覧の通りこちらに対して敵意は持ってないし、死にかけた俺を救ってくれたりするうちの新しい家族なんで、あんまり怖がらないでやってくれると助かります」
「ああ、うん……がんばってみるよ」
初見はビビっちまうのは仕方ないよな。
むしろ、このリアリティでこのサイズの狼が眼前に迫ってきてビビらないほうがちょっとおかしいと思う。
心臓に毛が生えてるっていうかなんというか。
「それにしてもこんな高レベルのモンスターをテイムするなんていつの間にそんなスキルを?」
「いえ、テイムスキル持ってないっす」
「え?」
「たまたま森のなかで遭遇した時は、俺も死を覚悟したんですけどね。なんか背中乗っけてもらってそのまま懐いて家で暮らしてるんです」
「テイムモンスターではなく?」
「ええ、僕のスキルツリーに関連しそうなスキルって乗っけてもらった時に恐らく追加された【騎乗】のスキルだけですよ」
「そんな事が……? いや、このゲームはまだ不明なパラメータが多すぎるし或いは……?」
何やら長考モードに入ってしまったようなのでこちらの準備を手早く終わらせる。
何か装備が必要なわけでもないので食器を洗い流してこちらの準備も完了。
「さて、エリス。俺は出かけてくるから留守番お願いな」
「はーい。行ってらっしゃいキョウ」
「ハティ、留守の間エリスを頼むな」
「ウォン!」
よし、これなら任せても平気だろう。
ハティの頭をなでて後を任せる。
「さて、こちらの準備はオッケーです行きましょうか」
「あ、ああ……そうだね、行こう」
アラマキさんの家の中から村人たちからは見られないように特殊なエリア転移を行いミーティング会場とやらに到着した。
普段がリアリティ高すぎて、こういう転移とかシステマチックな部分に安堵を覚えるのはゲーマーの性だろうか。
ミーティング会場は湖畔のロッジ、といった感じの避暑地にはもってこいなイメージのエリアだった。
10分前だが、エリアには既に10人ほど集まっている。
全員参加とは聞いていないが、ALPHAのテスターは20人前後と聞いているので、少なくとも半分以上はこの場に来ているということか。
遠くで別のプレイヤーと話している田辺さんのT1を見つけたが、視線と手振りだけで返してきた。
あの人は運営側だから色々と他のプレイヤーから情報を集めたりするので忙しいんだろう。
詳しく見た感じ、どのプレイヤーもそれなりに高レベルなのか良い装備に身を包んでいる人が多い。
アラマキさんも2ヶ月やっていると言っていたし、New World一本でガッツリテスターやってる人はレベル3とか4に到達していてもおかしくはないか。
俺もああいう装備に身を包んでモンスターとガツガツやり合いたいんだがなぁ。
現実はヤギやサイに命がけの大バトルである。
俺のプレイ方法が下手くそなのか、スタート地点の当たりが悪かったのかは判らんけど今の俺ってファンタジーMMOというよりもリアルで過酷なスローライフゲームなんだよな。
過酷なスローライフってどういうことだよって自分で言っておいて思う所だが、実際そうなのだから困る。
今までの俺のプレイで感じたファンタジー成分ってオババの治癒魔法とハティだけだしな!
少し考えにふけっているうちにアラマキさんは別の職人系と思われる装備のプレイヤーと親しげに話していた。
リアルの知人か、あるいは職人プレイヤー同士のコミュニティでもあるんだろうか。
ゲーム内の知り合いがT1とアラマキさんしか居ない俺はこういう場所だとボッチ一直線だ。
せめて俺以外の後発組が分かれば、同期として色々話が合わせられるんだが……
そんな事を考えていたら突然肩を叩かれた。
「よう! まさかまたお前と同じゲームがやれるとはな、キョウ」
振り返るとそこに居たのは筋骨隆々といった感じの大男。
なんか暗黒騎士っぽい感じの格好いい鎧にグレートソードとショートソードを二本差しで身に着けた、実にファンタジーといった出で立ちだった。
……誰だろう。
こんな体格の人に俺知り合いいたっけか……?
そしてふとプレイヤーネームに目が留まる。
SAD。
……SADだと?
「おまえ、まさか伊福部か!?」
「おいおい、一応ここはゲーム内なんだから本名はよしてくれよ」
「お、おう、すまん。つい驚いて口走っちまった」
伊福部 幸治
俺と同期で同じ会社に入社したゲーム事業部のデバッッガー兼、テストプレイヤーだ。
入社の切っ掛けも全く同じ。
同社の出した格闘ゲームの公式大会の決勝で優勝した伊福部と準優勝だった俺が大会後にスカウトされたのだ。
当時の自分は弱小の外受けデバッグ会社の平社員でしかなかったので喜んで飛びついた。
「簡単な事情は田n……T1から聞いてるよ。よくその状況で参加する気になったもんだぜ」
「お前も俺と同じ状況になれば、多分俺と同じ選択したと思うぜ? 寝たきりで病院の天井のシミを数える以外何も出来ないくらいならどんなデカイリスクがあろうが、俺は自由に動けるネットゲームを選ぶ」
「かなり危険なんだって聞いたぜ?」
「既に『ただ生きてるだけ』の状態になれば、危険だとかどうでも良くなったよ」
「相変わらず変な方に覚悟決まってるなぁお前」
実際、植物状態だとか言われてしまえば『巫山戯るな!』とか『何で俺がこんな目に!』とか怒りというかやるせなさを感じるのは事実だ。
だが、どういった所で現状どうにもならないから、結局開き直っちまうんだよな。
一言で表すのならこうだ。
『もう、どうにもならないんだから仕方がない』
そんな状況で、ネットの中限定とは言え自由に動き回れるなんて知らせられたんだ。
ゲーマーであるこの俺に。
大げさでも何でも無く天秤に命を乗せるだけの価値がある。
「こちらはSADさんのフレンドさん?」
「フレンド……というか元同僚だな。理由があって会社をやめちまったがゲームの腕は互角だったからよく公式大会とかで張り合ってたんだ」
「へぇ、リアルライバルってやつですか。SADさんが互角とか相当ですね」
「ぜひ一度戦りあってみたいですね。テスターの人数が少なくてPvPってほぼ発生しないからぜひ戦ってみたい」
「そうだねー。このゲームはモンスターもありえないくらい賢いし、NPCも実際のPvPレベルで対策とか普通に撮ってくるんだけど、やっぱり対人ゲースキーとしてはぜひプレイヤーとも戦ってみたい」
伊福部……SADの後ろから現れた3人は俺を囲むと興味深そうに眺めてきた。
装備が似通ってるって事は同じ街かなんかで購入した装備か?
「改めて紹介すると、コイツはキョウ。俺の元同僚だ。ゲームの腕に関してはDDの大会動画でSAD vs KYOで検索すればいくらでも出てくると思うぜ」
「KYOって、あのザック使いの!?」
「あの、なのかは判りませんけどザック使いのKYOです」
「うっわ、レジェンドプレイヤーじゃないですか。あなたのプレイスタイルに憧れて俺も一時期ザック使ってたことあるんですよ」
また懐かしい呼び名を……
DD――デッドドライヴというハイスピード対戦格闘ゲームの大会で俺とSADは壇上……つまりトップ8の常連だった。
自分らで呼んでいたわけではないが、DDの大会では俺やSADを含めた数人が常連トッププレイヤーとして数年に渡って壇上を占拠しており、一般プレイヤーから『レジェンド』なるこっ恥ずかしい呼び方をされていたのだ。
「おいロイ、いきなり話し込むなって。紹介が終わらねーよ」
「おっとすまん。つい興奮しちまってな」
あの当時は結構対戦動画とかネットに上がってたからなぁ。
ちなみに公式大会で直接決勝で戦った時の戦績は2対2で完全に互角だ。
「で、コイツラはALPHAで俺とパーティ組んでやってる連中な。このゴツイ盾持ちはロイ、杖持ってるのがカイウス、弓持ってるのがリリティアだ」
「どうも。SADの元同僚のキョウです。つい数日前からテスターとして参加することになりました。よろしくおねがいします」
「俺はロイ、実は俺も社内のテスターなんだ。折角だから早く追いついて一緒にパーティ組んでみようぜ」
「ええ、まだ始めたばかりで何時追いつけるか判りませんがその時はぜひお願いします」
さっきとは口調が違う……って事はプレイヤーの設定に合わせてをロールプレイしてるのか。
モニター越しのネトゲだとちょっと寒々しく感じてたが、このゲームはまさに自分がプレイヤーになりきってる訳だからこういう遊び方も全然有りだな。
というかちょっと面白そうだ。
「私はリリティア。私は外部のテスターで3D格闘メインのプレイヤーなんだけどたまたま声がかかって、MMO形式のゲームをガッツリやるのは今回初めてなの」
「カイウスです。ロイやSADと同じ社内テスターです。元々MMO好きなので今回声がかかって即参加したクチです。ゲーム内で出会うことがあればよろしくおねがいします」
「はい、こちらこそ出遅れ組ですが、その時は是非」
取り敢えず無難に挨拶を返しておく。
こういう時は変に印象づけたりせず無難なのが一番いいのだ。
「12時となりました。これよりテスターミーティングを始めたいと思います」
気がつけばもう時間になっていた。
「おっと時間だ、積もる話はミーティング終わってからにしようぜ」
「だな、向こうに集まるみたいだ。行こう」
約束の時間より少し前、家の前でエリスとハティとで早めの食事を取っていたところに迎えに来たアラマキさんが、庭に入ってくるなり固まっていた。
そういえば、アラマキさんはライノス襲撃の顛末については話を聞いていたみたいだけどハティを実際に見るのはコレが初めてだったか。
うんうん、わかるぞ。
コイツを突然目にしたらやっぱり固まるよな。
俺も全く同じ様な反応だったからものすごく理解できる。
「こんにちわー」
「――あ、ああ。こんにちはエリスちゃん」
エリスの挨拶で硬直が解けたアラマキさんだったが、その顔はあからさまに引きつっていた。
まぁ、長閑な……とは少々言い難い村の雰囲気だけど、平和な村の庭先で自分の数倍はある狼が居たら誰だってビビるよな。
「大丈夫ですよアラマキさん。ハティはこれで居てかなり賢いんで」
「ああ、うん。話には聞いていたけど、聞きしに勝るとはまさにこのことだね……」
ちょうど食べ終わるところだったので、自分の食器を片付けたエリスがハティの背中によじ登っていた。
ちなみにハティの食事は夜のうちに自分で取ってきていた。
狩場で腹を満たした後、牛か何かの後ろ足を2本持ち帰ってくるようで、それをこちらの朝食や昼食に合わせて齧っていた。
最初はこの巨体を維持するだけの餌の確保をどうしようかと本気で悩んだが、実際には自力で解決してくれる手のかからないワンコだった。
「ご覧の通りこちらに対して敵意は持ってないし、死にかけた俺を救ってくれたりするうちの新しい家族なんで、あんまり怖がらないでやってくれると助かります」
「ああ、うん……がんばってみるよ」
初見はビビっちまうのは仕方ないよな。
むしろ、このリアリティでこのサイズの狼が眼前に迫ってきてビビらないほうがちょっとおかしいと思う。
心臓に毛が生えてるっていうかなんというか。
「それにしてもこんな高レベルのモンスターをテイムするなんていつの間にそんなスキルを?」
「いえ、テイムスキル持ってないっす」
「え?」
「たまたま森のなかで遭遇した時は、俺も死を覚悟したんですけどね。なんか背中乗っけてもらってそのまま懐いて家で暮らしてるんです」
「テイムモンスターではなく?」
「ええ、僕のスキルツリーに関連しそうなスキルって乗っけてもらった時に恐らく追加された【騎乗】のスキルだけですよ」
「そんな事が……? いや、このゲームはまだ不明なパラメータが多すぎるし或いは……?」
何やら長考モードに入ってしまったようなのでこちらの準備を手早く終わらせる。
何か装備が必要なわけでもないので食器を洗い流してこちらの準備も完了。
「さて、エリス。俺は出かけてくるから留守番お願いな」
「はーい。行ってらっしゃいキョウ」
「ハティ、留守の間エリスを頼むな」
「ウォン!」
よし、これなら任せても平気だろう。
ハティの頭をなでて後を任せる。
「さて、こちらの準備はオッケーです行きましょうか」
「あ、ああ……そうだね、行こう」
アラマキさんの家の中から村人たちからは見られないように特殊なエリア転移を行いミーティング会場とやらに到着した。
普段がリアリティ高すぎて、こういう転移とかシステマチックな部分に安堵を覚えるのはゲーマーの性だろうか。
ミーティング会場は湖畔のロッジ、といった感じの避暑地にはもってこいなイメージのエリアだった。
10分前だが、エリアには既に10人ほど集まっている。
全員参加とは聞いていないが、ALPHAのテスターは20人前後と聞いているので、少なくとも半分以上はこの場に来ているということか。
遠くで別のプレイヤーと話している田辺さんのT1を見つけたが、視線と手振りだけで返してきた。
あの人は運営側だから色々と他のプレイヤーから情報を集めたりするので忙しいんだろう。
詳しく見た感じ、どのプレイヤーもそれなりに高レベルなのか良い装備に身を包んでいる人が多い。
アラマキさんも2ヶ月やっていると言っていたし、New World一本でガッツリテスターやってる人はレベル3とか4に到達していてもおかしくはないか。
俺もああいう装備に身を包んでモンスターとガツガツやり合いたいんだがなぁ。
現実はヤギやサイに命がけの大バトルである。
俺のプレイ方法が下手くそなのか、スタート地点の当たりが悪かったのかは判らんけど今の俺ってファンタジーMMOというよりもリアルで過酷なスローライフゲームなんだよな。
過酷なスローライフってどういうことだよって自分で言っておいて思う所だが、実際そうなのだから困る。
今までの俺のプレイで感じたファンタジー成分ってオババの治癒魔法とハティだけだしな!
少し考えにふけっているうちにアラマキさんは別の職人系と思われる装備のプレイヤーと親しげに話していた。
リアルの知人か、あるいは職人プレイヤー同士のコミュニティでもあるんだろうか。
ゲーム内の知り合いがT1とアラマキさんしか居ない俺はこういう場所だとボッチ一直線だ。
せめて俺以外の後発組が分かれば、同期として色々話が合わせられるんだが……
そんな事を考えていたら突然肩を叩かれた。
「よう! まさかまたお前と同じゲームがやれるとはな、キョウ」
振り返るとそこに居たのは筋骨隆々といった感じの大男。
なんか暗黒騎士っぽい感じの格好いい鎧にグレートソードとショートソードを二本差しで身に着けた、実にファンタジーといった出で立ちだった。
……誰だろう。
こんな体格の人に俺知り合いいたっけか……?
そしてふとプレイヤーネームに目が留まる。
SAD。
……SADだと?
「おまえ、まさか伊福部か!?」
「おいおい、一応ここはゲーム内なんだから本名はよしてくれよ」
「お、おう、すまん。つい驚いて口走っちまった」
伊福部 幸治
俺と同期で同じ会社に入社したゲーム事業部のデバッッガー兼、テストプレイヤーだ。
入社の切っ掛けも全く同じ。
同社の出した格闘ゲームの公式大会の決勝で優勝した伊福部と準優勝だった俺が大会後にスカウトされたのだ。
当時の自分は弱小の外受けデバッグ会社の平社員でしかなかったので喜んで飛びついた。
「簡単な事情は田n……T1から聞いてるよ。よくその状況で参加する気になったもんだぜ」
「お前も俺と同じ状況になれば、多分俺と同じ選択したと思うぜ? 寝たきりで病院の天井のシミを数える以外何も出来ないくらいならどんなデカイリスクがあろうが、俺は自由に動けるネットゲームを選ぶ」
「かなり危険なんだって聞いたぜ?」
「既に『ただ生きてるだけ』の状態になれば、危険だとかどうでも良くなったよ」
「相変わらず変な方に覚悟決まってるなぁお前」
実際、植物状態だとか言われてしまえば『巫山戯るな!』とか『何で俺がこんな目に!』とか怒りというかやるせなさを感じるのは事実だ。
だが、どういった所で現状どうにもならないから、結局開き直っちまうんだよな。
一言で表すのならこうだ。
『もう、どうにもならないんだから仕方がない』
そんな状況で、ネットの中限定とは言え自由に動き回れるなんて知らせられたんだ。
ゲーマーであるこの俺に。
大げさでも何でも無く天秤に命を乗せるだけの価値がある。
「こちらはSADさんのフレンドさん?」
「フレンド……というか元同僚だな。理由があって会社をやめちまったがゲームの腕は互角だったからよく公式大会とかで張り合ってたんだ」
「へぇ、リアルライバルってやつですか。SADさんが互角とか相当ですね」
「ぜひ一度戦りあってみたいですね。テスターの人数が少なくてPvPってほぼ発生しないからぜひ戦ってみたい」
「そうだねー。このゲームはモンスターもありえないくらい賢いし、NPCも実際のPvPレベルで対策とか普通に撮ってくるんだけど、やっぱり対人ゲースキーとしてはぜひプレイヤーとも戦ってみたい」
伊福部……SADの後ろから現れた3人は俺を囲むと興味深そうに眺めてきた。
装備が似通ってるって事は同じ街かなんかで購入した装備か?
「改めて紹介すると、コイツはキョウ。俺の元同僚だ。ゲームの腕に関してはDDの大会動画でSAD vs KYOで検索すればいくらでも出てくると思うぜ」
「KYOって、あのザック使いの!?」
「あの、なのかは判りませんけどザック使いのKYOです」
「うっわ、レジェンドプレイヤーじゃないですか。あなたのプレイスタイルに憧れて俺も一時期ザック使ってたことあるんですよ」
また懐かしい呼び名を……
DD――デッドドライヴというハイスピード対戦格闘ゲームの大会で俺とSADは壇上……つまりトップ8の常連だった。
自分らで呼んでいたわけではないが、DDの大会では俺やSADを含めた数人が常連トッププレイヤーとして数年に渡って壇上を占拠しており、一般プレイヤーから『レジェンド』なるこっ恥ずかしい呼び方をされていたのだ。
「おいロイ、いきなり話し込むなって。紹介が終わらねーよ」
「おっとすまん。つい興奮しちまってな」
あの当時は結構対戦動画とかネットに上がってたからなぁ。
ちなみに公式大会で直接決勝で戦った時の戦績は2対2で完全に互角だ。
「で、コイツラはALPHAで俺とパーティ組んでやってる連中な。このゴツイ盾持ちはロイ、杖持ってるのがカイウス、弓持ってるのがリリティアだ」
「どうも。SADの元同僚のキョウです。つい数日前からテスターとして参加することになりました。よろしくおねがいします」
「俺はロイ、実は俺も社内のテスターなんだ。折角だから早く追いついて一緒にパーティ組んでみようぜ」
「ええ、まだ始めたばかりで何時追いつけるか判りませんがその時はぜひお願いします」
さっきとは口調が違う……って事はプレイヤーの設定に合わせてをロールプレイしてるのか。
モニター越しのネトゲだとちょっと寒々しく感じてたが、このゲームはまさに自分がプレイヤーになりきってる訳だからこういう遊び方も全然有りだな。
というかちょっと面白そうだ。
「私はリリティア。私は外部のテスターで3D格闘メインのプレイヤーなんだけどたまたま声がかかって、MMO形式のゲームをガッツリやるのは今回初めてなの」
「カイウスです。ロイやSADと同じ社内テスターです。元々MMO好きなので今回声がかかって即参加したクチです。ゲーム内で出会うことがあればよろしくおねがいします」
「はい、こちらこそ出遅れ組ですが、その時は是非」
取り敢えず無難に挨拶を返しておく。
こういう時は変に印象づけたりせず無難なのが一番いいのだ。
「12時となりました。これよりテスターミーティングを始めたいと思います」
気がつけばもう時間になっていた。
「おっと時間だ、積もる話はミーティング終わってからにしようぜ」
「だな、向こうに集まるみたいだ。行こう」
2
お気に入りに追加
630
あなたにおすすめの小説
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
異世界転生? いいえ、チートスキルだけ貰ってVRMMOをやります!
リュース
ファンタジー
主人公の青年、藤堂飛鳥(とうどう・あすか)。
彼は、新発売のVRMMOを購入して帰る途中、事故に合ってしまう。
だがそれは神様のミスで、本来アスカは事故に遭うはずでは無かった。
神様は謝罪に、チートスキルを持っての異世界転生を進めて来たのだが・・・。
アスカはそんなことお構いなしに、VRMMO!
これは、神様に貰ったチートスキルを活用して、VRMMO世界を楽しむ物語。
異世界云々が出てくるのは、殆ど最初だけです。
そちらがお望みの方には、満足していただけないかもしれません。
「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」
パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。
彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。
彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。
あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。
元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。
孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。
「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」
アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。
しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。
誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。
そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。
モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。
拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。
ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。
どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。
彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。
※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。
※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。
※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる