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永遠の誓い
208.お迎え
しおりを挟む急いでもろもろの手配を済ませ、迎えに行った勇樹邸。そこで見たのは、卑猥な道具とパスタを片手に真剣に講義を受けている蒼空だった。
変なことを学んで帰らない様にと思っていたのだが、一歩遅かったか…。
「あっ正吾さん!これは!えっ!えっ!ちょっと勇樹!正吾さん呼ぶなら先に言ってよ!
あ。違う。正吾さんが反省するまで、僕は帰らないんだからね!ふんっ!」
まずは俺の登場に驚き、アワアワと手元の道具を机の下に隠した蒼空は、俺との1日ぶりの再会にちょっと瞳を輝かせた後で、やっと思い出したかの様に、ツンとしてそっぽを向いた。そのコロコロと変わる表情が愛おしい。
良かった。俺に会えて喜んでくれている。本当に愛想を尽かされた訳では無かった様だ。
その様子が先ほどのお義母様と重なり、俺は自然と目尻が垂れた。
一戦を終えた後の俺は気持ちが昂っていて、今すぐご褒美を貰って抱きつぶしたいが、今日はそれではいけない。夜までとっておこう。
「蒼空、たった今、蒼空のご両親と和解してきたよ。もう何も心配要らないよ。
だから、これから俺とデートに行きませんか?」
俺は膝をつき、まるで中世の騎士の様に手を差し出した。
「えっ…。僕の両親と?」
蒼空は戸惑いながらも、おずおずとその手を俺の手に重ねてくれた。
「あぁ。蒼空のご両親に心から俺と蒼空の結婚を祝福して欲しいと思っていたんだ。だから、まだ蒼空に将来の事を伝えられるタイミングじゃなくて。一昨日は本当にごめん。
だから、これから仕切り直しで俺とデートして頂けませんか?」
「そうだったんだ…。正吾さんがいろいろ考えてくれてたのに、僕ったら自分の事ばかりで…。ごめんね!もっと恥ずかしいや…。
うん!行きたい!でも僕、服が無いや。一旦家に戻って着替えてからでもいい?」
蒼空が見下ろした身体には、見覚えが無い服が。誰だ!俺の蒼空に他の男の服を着せたヤツは!!
「その服は借りたのかな?大丈夫。まずは服を買いに行く所からにしようか。
蒼空くんのお義父様には申し訳ないけれど、両家顔合わせの時に着ていく服は、俺が用意したいから。それでいい?」
蒼空は嬉しさに顔を輝かせた。
「はい!お願いします!」
「じゃあ、まずはそこに隠している道具をよく見せてくれないかい?さっきまで、何してたのかな?」
「あ…いや…これはその…。」
蒼空とベータ男が何か視線でやり取りをしている。顎をしゃくってイケッイケッと言っているベータ男に、必死で首を振る蒼空。面白くない。全く面白くない。
自分の父の若い時の顔で警戒心が緩んでいるのだろうが、ソイツはアルファですら掘る男だぞ。全くもって人畜無害なベータじゃない。騙されるなよ。
なぜその恐ろしさに気が付かないんだ。そして、ついさっきまでソイツから絶対に変なことを仕込まれていただろう。長短太さ模様、色とりどりの様々な細長い棒のセットが机の上に並べられていたのを俺はこの目で見たぞ。それを、茹でられた細長い筒状のパスタに差し込んで、何かしていた。
「そちらの方、頼みますから蒼空に変なことを吹き込むのは止めて下さいね。」
「あ…いやこれは。蒼空さんの希望で…。」
「とにかく、これはお土産ね!」
と勇樹に蒼空が紙袋に入ったなにかを笑顔で渡されていて、至極嫌な予感がする。
蒼空の方も、やってやるぞとどこか決心顔だ。またこの前の再来かよ…。やめてくれよ。
自ら墓穴を掘りに来る蒼空は可愛いんだが、自制するのが大変なんだ。明日は仕事もあるし、今日も休んでしまった分会社に行かせてやりたいのに。行かせてあげられなくなってしまうじゃないか。
勇樹はなにやら共犯者の顔で、俺を見てニヤニヤしている。塩は送ったぞとでも言いたげだ。そういう時だけアルファになるなよな。
まぁ、いい。もし俺の想像通りのものなら、蒼空が俺に使おうとしたところで没収すればよい。
蒼空に使ってよがる顔を見たいという欲もあるが、俺でも入れない様なところに、俺以外のモノが入るなんて、嫉妬で狂いそうになるからダメだ。
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