【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

暗転

94．ショートメッセージ（支配人サイド）

　正吾からの連絡を受けた支配人の動きは迅速だった。

　蒼空は自分が指示を出してわざと重点査定リストから外していた。それなのに、重点査定リストに入っていると客から指摘されるのは明らかにおかしい。記録上の配達日と受け取りのサインの日付が違うのもおかしい。何かが起きている。


　支配人は腹心に蒼空が使ったと報告されていた部屋の監視カメラの映像を探る様に指示を出した。

　部屋の監視カメラの映像では、確かに蒼空は査定を受けるまではその部屋で輸送の為の薬が抜けるまで寝かされていた。そこまでは映っていた。しかし、蒼空が査定から戻ってくる姿が映っていない。
　まるで通常の半日査定のオメガの様に、査定が終わったからそのまま段ボールに詰めて帰宅させたかの如く部屋に戻ってきた記録は無かった。
　施設中の監視カメラの映像も全て探したが、その後の二週間で蒼空が施設の中に居た痕跡はなかった。


　もしかして、正吾の言っている事が間違っているだけで、実際は半日で帰ったのでは？とも一瞬疑ったが、今日担当の輸送車の輸送員を呼び出して聞けば、確かに今日正吾の自宅に配送したと答えた。逆に二月五日の記録に載っている輸送員に聞いても、その日は正吾の家には配達していないらしい。それは明らかにおかしい。
　一体この空白の二週間と少し、蒼空はどこに消えたのだろうか。


　しかし監視カメラを探る中で不自然な事があった。正吾が蒼空を買った変態爺と呼んだと思われる男が、外の監視カメラには映っていて、確かに査定用の建物の中には足を踏み入れているはずなのに、施設の中の監視カメラにはどこにも映っていない。まるでその訪いを誰かが意図的に抹消したかの様に、どこの監視カメラにも映っていない。

　その後二時間かけて腹心が探し出したのは、記録では空き部屋になっているはずの部屋に続く廊下の監視カメラの映像が不自然に編集されている事だった。廊下はその性質上人が歩き回る。他のカメラで明らかにその廊下の方面に歩いて来ていた人が居たにも拘わらず、この廊下のカメラに何も映っていないのは不自然だった。それで無人の廊下の映像をループさせているという事が解った。
　後から解った事だが、部屋の中もさも空き部屋かの様に編集されていたが、こちらは誰もいない様子をループすればよいだけなので、腹心が見ただけで不自然さを見つけることはほぼ不可能だった。


　支配人は監視カメラ担当の職員を呼び、尋問した。最初はのらりくらりと躱していたが、重点査定リストに入っていたと顧客から言われた事と、配達員も二週間前ではなく今日配達したと回答した事を伝え、映像のハードディスクの中で消されている記録が無いか専門機関に復元させるぞと脅すと、「アイツ等しくじったな」と呟いてあっさりと吐いた。

　変態爺に買収されて、蒼空を本来の半日査定に見える様に監視カメラの映像を編集したらしい。
　蒼空が映っているデータは消したらしいので、消去されたデータの復元が得意なところに回した。一週間もすればデータが復元できるはずだ。


　拷問部屋に連れて行った途端自分の未来を悟ったのか、その従業員は蒼空が二週間滞在していて何回か売春していた事と他にも変態爺に買収されている従業員の名前をあっさりと吐いた。ずっと監視カメラで覗き見していた様だ。

　支配人とその腹心は、出てきた名前の従業員を順番に尋問し、今回の件に関わっていた世話係の男を突きとめた。

　その男は、元々記録上では蒼空の担当では無かったが、凛空りくのファンで凛空の息子を一目見たい、お話ししたいと本来の担当者に頼み込み、担当を代わっていた事が解った。


　支配人は、監視カメラの映像が編集されていて気が付く事ができなかったが、確かに蒼空は二週間以上こちらに滞在していた様であること、何回か売春していたと言う従業員からの自供があった事。今映像のデータを復元に回している事を正吾にショートメッセージで送った。このショートメッセージを見たら、折り返し電話を下さいと添えて。