【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

世界恐慌

81．売却先決定

　そして、オークション組織の職員立ち合いの元で伺ったお抱えの不動産屋の紹介で、俺の希望通りの物件が見つかった。


　築20年と少し古いが、周囲は山で、全く人通りが無い所にある、こじんまりとした一軒家だ。
　念のため確認したが、事故物件では無いらしい。

　本当かどうか解らないが、「生きたまま引き取って、こちらで飼い主立ち会いの元で処分しますので。」という要らない情報まで付け加えられた。
　その情報は要らなかった。「俺の杞憂かもな」で出来れば済ませたかった。


　引き続き蒼空くんを地上で生活させたいため、山奥で目の前の道路が袋小路の百パーセント私道で、他の車が家の前を通らない家を指定した。
　通りすがりの人に見られる可能性も無ければ、ご近所さんも半径五百メートル以内に居ない。そんな環境であれば、今よりも警戒せずに気持ちを楽にして生活できる。


　距離が遠ければ、『あそこの家は多分二人暮らしだけどもう一人の同居人とはたまたま外で会わないだけ、たまたま玄関を出入りするところに出くわさないだけだ』と考えるはずで、蒼空が一切外に出ていない事を近隣に悟られる事も無いだろう。
　逆に一人暮らしだと認識されて誰か人が居る気配がしても、今日はたまたま友達でも遊びに来ているのかな？位の認識でいてくれるかもしれない。


　内見の時、ここが蒼空くんとの新しい住居になるのか。なんて俺は一人感慨に浸った。


　職場からは二時間の距離になってしまうが、その分蒼空くんを自由に出来る。ローン返済額が減って稼ぎに行く必要が減れば、その分沢山蒼空くんと一緒に居られると考えた。


　引っ越してから暫く近隣の様子を見て、もし本当に誰も通りかからない環境ならば、もしかしたら蒼空くんに自然豊かな外の風景を少しは見せられるかもしれないとの野心もあった。


　駅が遠すぎるので、移動には車が必要になるが、動くだけでいい位の安い車を中古で買えばいい。
　燃費がいい車でも、今は財政難から車を手放す人が増えているから、今なら安く買えるだろう。


　不動産価格は破格で、土地建物込みで2,300万円だった。


　後は、今住んでいる家が幾らで売れるかだ。これも、同じく地下オークションの組織の息がかかった不動産会社で売りに出してくれた。

　今持っている豪邸を手放して、これくらいの実用的な大きさの家を買いたいと言う需要があるらしい。
　なるほど。良かった。その人は地下オメガを手放さない選択をしたんだなと安心した。


　家の買い手はすぐついた。不動産会社の勧めでちょっと高めに5千万から始めたのに、内見1件目であっという間に売れた。

　内見に来たのは五十代後半位のガタイがいい男。
　見るからに金持ちそうなアルファだ。そりゃあそうだよな。地下オメガを飼育するんだからアルファだよな。


　俺たちはお互い人身売買の罪を犯しているから、てっきり俺と鉢合わせしない様に職員が手引きするのかと思ったら、思いっきり引き合わされて驚いた。
　お互いに面ツラが割れて良いのか？オークション会場でも全く会わない様に配慮されていたのに。

　オークション組織の人らが考える事は良くわからない。