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発情期の失敗
66.僕、今度こそ嫌われちゃったかな(オメガ視点)
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<オメガ視点>
目が覚めたら、僕は薄暗い地下室のベッドの上に居た。傍には誰も居なかった。そして、僕の発情期は終わってしまっていた。
自分でベッドに戻った記憶は無かったから、きっと正吾さんがベッドに戻してくれたんだ。
なんとなく身体を確認してみる。でも、下半身に違和感は無い。
僕は今まで僕の指以上に太いものを受け入れた事は無いから、もし正吾さんと何かあれば、絶対に解るはずだ。でも、そんな痕跡はどこにも無い。
あれだけ抑制剤の効きが悪かったのだから、この地下室は僕のフェロモンで満ちていたはずだ。であれば、正吾さんはきっと僕が発情していることに気が付いていたはず。
それなのに、手を出されなかった…。
いや、優しい正吾さんの事だ。きっと僕が気を失っている状態で好き勝手するのは憚られたんだと思う。
でも、アルファのラットは、理性でどうにかできるものではないと聞くし、もしかして僕の発情期のフェロモンの香りが気に入らなかったのかな…。それとも、僕が寝室へのお誘いを断った事をまだ怒っていて、抱く気にならなかったのかな…。とついつい考えてしまう。
発情期のフェロモンはいつものフェロモンとはちょっと香りが違うと聞くし、もしそうだったらどうしよう。もし僕の香りが正吾さんの好みじゃなかったらどうしよう。
今は…午後1時20分。正吾さんはお仕事の時間かな。
あれ程恋焦がれた正吾さんのフェロモンの香りがうっすらとするから、もし今日が出社している日なら朝、もし在宅勤務の日ならお昼休みの直前までここに居てくれたのかもしれない。
今は地下にいるのに、何故か首輪には鎖が繋がれている。
正吾さんが買ってくれた軽量の細身の鎖とは比べ物にならない程重く、ずっしりとした鎖だった。これを付けているだけで、自分が奴隷であるという事を常に認識させられる。
もしかしたら、僕が鉄格子に体当たりしていた事が正吾さんにバレて、脱走しようとしていると判断されたのかもしれない。
だって、正吾さんは前に言っていた。
僕が脱走するそぶりを見せたら、いやそんなそぶりを見せなくても、正吾さんが僕に脱走しようとしている意思があると見て取れたら、地下に居ても僕を鎖で繋ぐと。そして、折檻やお仕置きをすると。
それが現実になる時が来てしまったのだろうか。
折檻やお仕置きってなんだろう。何か痛い事、されるのかな。
ここの所余り食事が食べれていなかったから、もしごはん抜きとかだったら辛いなぁ。
ちょっと今のうちに何か食べておこう。お腹も空いているし喉も乾いた。
ベッドから下りようとして、ベッドサイドのチェストに水が置いてある事に気が付いた。まだ結露がそんなに溜まっていない。という事は、やっぱりお昼休みに正吾さんが地下に来たんだ。
その結露で、初日の正吾さんの挙動不審を思い出して、懐かしいけれども、ぎゅっと甘酸っぱい気持ちになった。
あの時の正吾さんは、僕への気遣いに満ちていたけど、今の正吾さんは、僕のことをどう思っているんだろう。僕のこと、嫌いになっていないかな。またあの愛おしそうな目で見てくれるかな。
発情期になっていてもご主人様に隠している奴隷オメガなんて、全然可愛くないよね。
まだ一度も正吾さんに身体を許していないし、あの日はたぶんそういう意味で2階の寝室に誘われたのに拒否して、それから発情期前だからと正吾さんを避けてしまって…。
もし、もしだけど、正吾さんが僕に愛想を尽かして、僕をあのオークションに売ったとしても、僕はもう他のアルファに触れられるなんて絶対に耐えられない。
あぁ、ダメだ。僕はもう正吾さんを好きになってしまっている。今更正吾さん以外のアルファなんて、絶対に絶対に受け入れられない。それだけは嫌だ。
もし正吾さんが僕に愛想をつかせて僕を手放すならば、その前に一度だけでいいから抱いて貰おう。
そして、申し訳ないけれど正吾さんの隙を突いて死なせてもらおう。一階の包丁の場所は解っているし、地下にはお箸だってある。
僕を買った借金だけを正吾さんに一生背負わせてしまって申し訳ない。けれど、そうすれば借金だけを残して勝手に死んだ僕の事を恨んで、きっと一生忘れないでいてくれるだろう。それにお金が無ければ他の地下オメガは買えないはず。
僕を他のアルファに売ったお金で他のオメガを買うなんて、絶対に許せないからそうしよう。
こんなにかわいくないオメガを間違えて大枚叩いて買った挙句に、変な好かれ方しちゃって、本当にごめんなさい。
来世は素直でかわいいオメガにきっとなるから。そしたら正吾さんとはまた、来世で結ばれたいな。
その時は、明るい空の下で正吾さんとデートがしたいな。
目が覚めたら、僕は薄暗い地下室のベッドの上に居た。傍には誰も居なかった。そして、僕の発情期は終わってしまっていた。
自分でベッドに戻った記憶は無かったから、きっと正吾さんがベッドに戻してくれたんだ。
なんとなく身体を確認してみる。でも、下半身に違和感は無い。
僕は今まで僕の指以上に太いものを受け入れた事は無いから、もし正吾さんと何かあれば、絶対に解るはずだ。でも、そんな痕跡はどこにも無い。
あれだけ抑制剤の効きが悪かったのだから、この地下室は僕のフェロモンで満ちていたはずだ。であれば、正吾さんはきっと僕が発情していることに気が付いていたはず。
それなのに、手を出されなかった…。
いや、優しい正吾さんの事だ。きっと僕が気を失っている状態で好き勝手するのは憚られたんだと思う。
でも、アルファのラットは、理性でどうにかできるものではないと聞くし、もしかして僕の発情期のフェロモンの香りが気に入らなかったのかな…。それとも、僕が寝室へのお誘いを断った事をまだ怒っていて、抱く気にならなかったのかな…。とついつい考えてしまう。
発情期のフェロモンはいつものフェロモンとはちょっと香りが違うと聞くし、もしそうだったらどうしよう。もし僕の香りが正吾さんの好みじゃなかったらどうしよう。
今は…午後1時20分。正吾さんはお仕事の時間かな。
あれ程恋焦がれた正吾さんのフェロモンの香りがうっすらとするから、もし今日が出社している日なら朝、もし在宅勤務の日ならお昼休みの直前までここに居てくれたのかもしれない。
今は地下にいるのに、何故か首輪には鎖が繋がれている。
正吾さんが買ってくれた軽量の細身の鎖とは比べ物にならない程重く、ずっしりとした鎖だった。これを付けているだけで、自分が奴隷であるという事を常に認識させられる。
もしかしたら、僕が鉄格子に体当たりしていた事が正吾さんにバレて、脱走しようとしていると判断されたのかもしれない。
だって、正吾さんは前に言っていた。
僕が脱走するそぶりを見せたら、いやそんなそぶりを見せなくても、正吾さんが僕に脱走しようとしている意思があると見て取れたら、地下に居ても僕を鎖で繋ぐと。そして、折檻やお仕置きをすると。
それが現実になる時が来てしまったのだろうか。
折檻やお仕置きってなんだろう。何か痛い事、されるのかな。
ここの所余り食事が食べれていなかったから、もしごはん抜きとかだったら辛いなぁ。
ちょっと今のうちに何か食べておこう。お腹も空いているし喉も乾いた。
ベッドから下りようとして、ベッドサイドのチェストに水が置いてある事に気が付いた。まだ結露がそんなに溜まっていない。という事は、やっぱりお昼休みに正吾さんが地下に来たんだ。
その結露で、初日の正吾さんの挙動不審を思い出して、懐かしいけれども、ぎゅっと甘酸っぱい気持ちになった。
あの時の正吾さんは、僕への気遣いに満ちていたけど、今の正吾さんは、僕のことをどう思っているんだろう。僕のこと、嫌いになっていないかな。またあの愛おしそうな目で見てくれるかな。
発情期になっていてもご主人様に隠している奴隷オメガなんて、全然可愛くないよね。
まだ一度も正吾さんに身体を許していないし、あの日はたぶんそういう意味で2階の寝室に誘われたのに拒否して、それから発情期前だからと正吾さんを避けてしまって…。
もし、もしだけど、正吾さんが僕に愛想を尽かして、僕をあのオークションに売ったとしても、僕はもう他のアルファに触れられるなんて絶対に耐えられない。
あぁ、ダメだ。僕はもう正吾さんを好きになってしまっている。今更正吾さん以外のアルファなんて、絶対に絶対に受け入れられない。それだけは嫌だ。
もし正吾さんが僕に愛想をつかせて僕を手放すならば、その前に一度だけでいいから抱いて貰おう。
そして、申し訳ないけれど正吾さんの隙を突いて死なせてもらおう。一階の包丁の場所は解っているし、地下にはお箸だってある。
僕を買った借金だけを正吾さんに一生背負わせてしまって申し訳ない。けれど、そうすれば借金だけを残して勝手に死んだ僕の事を恨んで、きっと一生忘れないでいてくれるだろう。それにお金が無ければ他の地下オメガは買えないはず。
僕を他のアルファに売ったお金で他のオメガを買うなんて、絶対に許せないからそうしよう。
こんなにかわいくないオメガを間違えて大枚叩いて買った挙句に、変な好かれ方しちゃって、本当にごめんなさい。
来世は素直でかわいいオメガにきっとなるから。そしたら正吾さんとはまた、来世で結ばれたいな。
その時は、明るい空の下で正吾さんとデートがしたいな。
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