【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

貧乏暇なし

60．いざ地上へ２階（オメガ視点）

　食卓には、開いたノートパソコンが置いてあった。開放的なアイランドキッチンの目の前だから、頑張ればこの短い鎖でもなんとかできる…のか？
　いや、無理だろう。首が締まってうっとなってしまう未来しか見えない。

　正吾さんは食卓を押して、キッチンのカウンターと食卓をくっつけてくれた。
　これで物理的な距離は近くなったが、この鎖の短さでは、どんなに頑張ってもアイランドの方でしか作業は出来ない様に思う。壁側のコンロや冷蔵庫・食器棚まではとてもじゃないが届かない。


「鎖も想定外に短いし、今夜の夕食は一緒に作ろう。
　まぁ、これから先も出来れば一緒に台所に立って作りたいなとは思ってるんだけどね。
　アルファとして給餌の本能があるのかな。蒼空くんには俺の手料理を食べて欲しいからさ。」

　正吾さんがそう言ってくれて、一緒に台所に立って料理をするなんて、夫婦みたいだなと嬉しくなった。

「はい。嬉しいです。」

　返答も自然と笑顔になる。

　正吾さんは僕の笑顔に一瞬見とれて、一瞬遅れてパッと明るい笑顔になった。
　もしかしたら、正吾さんも僕と一緒に料理をするのは嬉しいのかな。同じことを考えていたらいいな。

「一階はこれで全部だよ。この家は二階建てなんだ。二階を案内するね。

　二階へは、このリビングからしか行けないんだ。」

　そう言って、正吾さんは階段を上り始めた。正吾さんが階段を登っている間だけは、首輪との距離が近くなって、鎖に余裕が出来て安心する。


　

「この正面の扉は、空き部屋だから今は倉庫として使っていて、特に何もないんだけど、この右側の扉が書斎だよ」


　二階にあがってすぐ目の前の扉はスルーし、右側の扉を正吾さんが開けてくれると、そこは書斎だった。
　本棚に所狭しと本が並べてあり、机と椅子、それから寛げそうな柔らかそうなソファーが置いてあった。


「そして、左側がトイレ、短い廊下の先が主寝室だよ。
　こちらにどうぞ。最近は仕事に行き詰った時の仮眠に使う程度なんだけど、蒼空くんと寝る前は毎晩ここで寝ていたんだ。」


　そう言って開けられた扉の先には、正吾さんのフェロモンが濃厚に漂っていた。
　さっき一階のウォークスルー・シュークローゼットで既にヤバかったのだが、本日二回目とあって身体が反応している。

　正吾さんに気付かれない様にと祈りながら、主寝室を見回した。
　多分十畳はある部屋なのだろうが、僕が寝ている部屋と比べると大分小さい。ベッドも多分クイーンサイズで僕が寝ているキングサイズのベッドよりも小さい。

　奴隷の僕の方がとても優遇されていて、なんだか悪いなと思った。


「これで一通り見てもらったかな。この主寝室には秘密があってね。それは、私と蒼空くんがもっと仲良くなった時のお楽しみね。」


「秘密…ですか？
　はい。なんだかわくわくしますね。じゃあ、楽しみにしていますね。」


　秘密とはなんだろうか。天井裏に行けるとかなのかな。もしそうだったら楽しみだなぁ。
　もっと仲良くなったらという事は、ちょっと人に言いづらい趣味の部屋だったりするのかなぁ。と思ったところで地下の十字台を思い出した。
　SMグッズとかあったら嫌だなぁ。いけない、いけない。首輪のせいで、変な思考になっているかもしれない。


　振りむいたら、正吾さんが獲物を見つけた肉食獣の様な、捕食者の目で僕を見ていた。あれ？ベッドがある地下室にいつもいたから、寝室に入っても平気だと思っていたのに、やはりここはアルファの縄張り。
　アルファの寝室に迂闊に入ったのはまずかった？鎖もあるし、逃げられない？と少し覚悟を決めて、僕は唾をごくりと飲んだ。


　僕の覚悟が決まった様な真剣な表情に、正吾さんはハッと気が付いて、顔を背ける様にして言った。


「じゃあ、そろそろ仕事に戻るから、書斎で何冊か本でも選んで、リビングで自由に過ごしていてね。

　自由と言っても、鎖が短すぎて今日は何も出来ないかもしれないけど、来週までには長い鎖を用意するから、今日はごめんね。ちょっと我慢してね。」

「はい。大丈夫です。ありがとうございます。」


　僕がお辞儀をしたら、鎖がまたじゃらりと音を立てた。