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貧乏暇なし

50.最近の悩み

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 しかし、38歳の若くない俺にはこの睡眠不足は堪えるな。

 昇進するまでは激務も多くて徹夜もザラだったから、体力には自信があったんだが、商社の仕事は頭と口先を使うだけで実際に身体は使わないから、肉体労働は思っていた以上に堪える。


 そんな中で二日ぶりの、しかも地下室という閉鎖空間で醸成されてしまっている蒼空くんのフェロモンを嗅いでみろ。
 理性なんて土砂降りの雨に濡れたティッシュが如く、すぐに散り散りに破けてしまいそうだ。

 この甘い香りに、果たして檻に囚われているのは自分なのか、蒼空くんなのか解らなくなる程だ。


 蒼空くんの強烈なフェロモンに抗えなくなってしまわないように、俺は調理時に抑制剤を飲んでいる。ちょうど夕食が出来上がって下に運ぶ時には最高に抑制剤がキマっている状態だ。

 そして、夕食を食べたらすぐ地下でお風呂に入って、余り長居せずにすぐ一階に上がる様にしている。


 正直毎日綱渡りだ。
 迂闊にソファーに並び座ったりなんかしたら、うっかり抱きしめてしまうかもしれない。
 いつ自分の我慢が利かなくなって、蒼空くんを襲ってしまうのか怖い。

 蒼空くんの事を考えるだけで、本当は毎日でも何回でも熱を発散したくなっているのだ。


 二日に一度の公園仮眠だが、さすがに公園のトイレで発散してしまうのは人としてヤバい気がして、最初のうちは我慢していた。

 しかし、二日ぶりに自宅に戻った時に溜まっていると、いつか自制が効かずに蒼空くんを襲ってしまって傷つけてしまう危険性がある。
 それが怖くて、結局三回目の公園仮眠から、トイレの個室で蒼空くんの監視カメラの映像を見ながら発散する事が日課になってしまった。
 我ながら変態だと思う。


 そして家に帰った日の夜は、地下でのお風呂上りにそのまま蒼空くんの洗い物を上に持っていき、蒼空くんのフェロモンが染みついている服を使って盛大に発散してから、死んだように眠る。

 疲れマラも相まって何回でも抜けるが、一応三回までと回数制限を付けている。睡眠時間は大事だからな。



 きっと蒼空くんは、俺が夜勤で疲れてすぐ寝ていると思っているのだろう。
 会話を最小限にして、極力俺を早く地上に行かせてくれようと気を遣ってくれている気がする。

 俺と話したく無いからだとは思いたく無い。断じて違うだろう。

 そんな日々の繰り返し。



 そんな俺の最近の悩みは、蒼空くんのおパンツが洗い物の中に入っていない事だ。
 これは、睡眠不足と同じくらい俺を悩ませている。


 何かを感じ取ったのか、最近は蒼空くんのパンツが洗い物の中に入っていないのだ。それが無常に悲しい。
 あのパンツに染み込んだ蒼空くんの匂いとフェロモンの香りは、三連勤で疲れて帰ってきた俺への極上のご褒美だったのに。あぁ、残念だ。
 そんなパンツに顔を埋めるのを楽しみに頑張っていたと言っても過言ではないのに、いざ帰ってきてそれだと、テンション爆下がりだ。


 もしかしてわざわざパンツだけ手洗いしているのだろうか。
 湿度が高い地下室で、生乾きになって臭くなってしまっていないか心配だ。

 そして、その生乾きの匂いがするパンツを蒼空くんがもう一度履いて、更になんとも言えない匂いになっているだろうおパンツ。

 あぁ、嗅ぎたい。
 違う違う。

 俺は生乾きの心配をしているんだ。生乾き臭は雑菌が繁殖している匂いだって言うだろう?
 そんな雑菌まみれのパンツを履いて、蒼空くんが病気にでもなったらどうするんだ。

 でも、その心配を口に出して言う事は出来ない。

 なんで僕のパンツの有無を注目してるんですか?上に持って行って無造作に洗濯機に入れている訳じゃなくて、もしかして一枚一枚洗い物を確認してるんですか?え。僕のパンツでナニかしようとしていたんですか?

 なんて気味悪がられたらと思うと、何も言えない。


 あぁ、どう言ったら蒼空くんが自然に、おパンツを洗い物の中に入れてくれるだろうか。
 誰か教えてくれ。

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