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第32話 パーティー構成

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 ミミックシェルに近づきすぎて、パクッと食べられてしまった。
 一瞬の出来事だった。




 まだ生きているのは俺の体が小さいので、丸呑みにされたおかげだ。
 もし、咀嚼されていたらひとたまりもなかっただろう。
 現にハミ出ていた足3本、一噛みで食いちぎられている……痛い。

『ナビー、食いちぎられた足が、ウツボの時よりもヒリヒリとかなり痛いんだけど?』
『♪ マスターの足元のその水溜りは胃酸です。なので、とっても傷口にしみて痛いのでしょう』

『エッ!? それ、かなりマズイじゃないか! どうしたらいい?』
『♪ お腹の中に居る限り、相手もこれ以上は攻撃できないので、ある意味チャンスではないのですか?』

『ん? チャンス? あ! そうか……ここは奴の腹の中だった』

「八雲君からメールが来た! 八雲君まだ生きてるのよね? 死んでないのよね?」
「ヤクモ~早く出てきてよ~、グスン」

『♪ マスター、外の2人が凄く心配しています。さっさと終わらせちゃってください』
『分かってるよ……【テトロドトキシン】』

 俺は奴の腹の中で毒を直接まき散らしてやった。奴は俺を吐きだそうとしたが、そう簡単に出てやらない。
 今出たら、今度こそ間違いなく噛み殺される。中から残った5本の触手で必死に蓋を閉じる。

 暴れていたが5秒もしないうちに奴は毒で死んだようだ。

 死亡すると【亜空間倉庫】に入ってる物がその場にぶちまけられる。俺は宝箱の姿になっているシェルの蓋を開けて中から這い出てきた。

「八雲君!【アクア・ヒール】大丈夫!?」
「ヤクモ! 良かった! 本当に生きてた!」

「ごめん! 心配させたね……ちょっと油断した」

 ちーちゃんが3回ヒールしてくれて全快した。
 勿論食いちぎられた足も生えてきて治っている。

「おお! 『魔石』と『魂石』が一杯ある!」
「ちょっと! もう大丈夫なの!?」

 『魂石』に駆け寄った俺に、ちーちゃんが不機嫌そうに叱咤する。

「ヤクモ、わたくしたちに散々心配させておいて、その態度は良くないですよ! 反省できないなら、また同じ失敗をします!」

 ミーファにも睨まれた。

「そうよ! あなた一度死にかけたんでしょ? だから私がこの世界に呼ばれたんじゃなかったの? なのにまたさっき死にかけたのよ? 分かってる? 即死は回復できないのよ? 危険があるなら止めようねって話し合ったでしょ?」

 めちゃくちゃ2人とも怒ってる……どうも本気で心配させていたようだ。

「ごめん、またナビーの注意を軽視して死にかけた……もう油断はしない」

 15分ほど2人に説教されて、やっと解放してくれた。怒られたのだが、悪い気はしなかった。むしろ本気で怒って心配してくれていたので嬉しかった。だって2人とも知り合ったばかりだけど、ちゃんと絆ができている事がなんか嬉しかったんだ。


 ミミックシェルの討伐で、俺とちーちゃんのレベルが1つ上がった。

 このミミックは、転生者や魔獣を倒しても、魔石や魂石を殆ど食さないで溜めこんでいたようだ。
 『魂石』が4つに、『屑魔石』が26個も入っていた。

「結構『魂石』も『魔石』も入ってるのに、こいつレベル9なんだな」
「私たちは、ちーちゃんとヤクモのパッシブ効果のおかげじゃない?」

「そうね、それが無かったら、多分まだレベル6とか7の成り立てぐらいでしょうね」

 問題は、この魂石をどうするかだな。

「先に言っておくけど、俺が『魂石』取り込んじゃったら、レベルがひょっとすると10超えちゃうかもしれない」

「それは仕方ないって事前に話したじゃない」
「そうよ、仕方がない事は気にしちゃダメ。ヤクモがレベル11になっちゃった場合は次の町に行けばいいだけでしょ」

「そうなんだけど、初心者の町ってなんか魅力的じゃん。最初しか入れない特別感があるし、できれば行っておきたいよね?」

「そうだけど、スキルのパッシブ効果で普通の者より有利なんだから多少の事は我慢しなきゃ」
「議論する前に実際に取り込んでみれば分かる事です。レベルが上がっちゃった後で話し合えばいいでしょ」

「ミーファの意見が適切過ぎて、言い訳がましく言った俺がショボイ……」

「魂石にはスキルを得られるものもあるのでしょ? それってあなたの鑑識魔法である程度分かるんじゃない?」

 ちーちゃんの案を試してみたら、マジで判別可能だった。

「本当に判別できちゃったよ……しかもどれくらい経験値を溜めこんでるかも判別できたので、俺は経験値の少ないやつを貰うよ」

「ちょっと待って! レベルアップは考えないで、有用なスキルを得る方を選んで頂戴」
「そうですよヤクモ、町の入場なんかより将来に関わるスキルの方を選んでください」


 鑑識で調べた結果、経験値の少ない順にこんな感じだった

 1、【魔力感知】【魔力操作】【水魔法】
 2、【魔力感知】【魔力操作】【擬態】
 3、【魔力感知】【魔力操作】【魔法攻撃力Up】【風魔法】【土魔法】
 4、【魔力感知】【気配察知】【体力強化】【忍足】


「【魔力感知】と【魔力操作】が多いって事は、ひょっとしてすぐ習得できる部類なんじゃないのかな?」


『ナビーそのあたりどうなのかな?』
『♪ 智穂のいう通りです。魔法を使う者の気配を少し注意するようにすれば得られるものです。【気配察知】を行っていれば、いずれ手に入るモノですね。マスターたちはまだ幼生体のうちにどんどんレベルだけ上がっちゃったのでおかしな事になっていますが、普通は成体になる前に得られるものです』

『母さん持ってたっけ? 無かったと思うんだけど』
『♪ ちゃんとありましたよ。母上様の口頭での申告でしたので、持ってて当たり前のモノは言わなかったのかもしれませんね』

「どうも、俺たちは幼生体なのにどんどんレベルが上がっちゃったんで、変な感じに仕上がってるんだって。普通はいろんな経験を積みながら、成体になるまでに得られるものだそうだよ」

「レアじゃないって事ね……それに適性が合わないと魂石食べてもスキルは得られないんだよね?」
「それがね、俺とちーちゃんは多分食べたら付与が付いてるやつ、全部得られるかもしれないんだって」

「かもなの? なんか曖昧ね……」
「だって、上位世界からの転生者って俺たちが初なんだから、前歴が無いから分からないんだってさ」

「上位世界の者だから、得られるって事なんだ」
「2人ともいいな~私は分からないのですね?」

「ミーファもエルフなので、殆どのモノを得られるそうだよ。エルフ族って万能種なんだってさ。剣も魔法もいけるんだって、でも個人で主系統の魔法があるそうで、生前でも得られなかった属性はこっちでも得られないみたいだよ」

「わたくしは、風>水>土>聖の4系統の魔法が使えました!」
「へ~、凄いね! じゃあ、ミーファは魔法も覚える感じに育成しようか? せっかく魔法適性があるのに、タンクとして物理面だけ強化しているのは勿体ないよね」

「そうですけど、良いのですか? わたくしが盾役になると思って仲間に入れてくれたのじゃないのです?」
「パーティーの構成も大事だけど、個人の育成の方が大事だよ。自分の目指す構成じゃないスキルを得ても、後で後悔する事になるだけだよ。個人を優先しつつ、仲間の事も念頭に入れて考えてくれると有難いかな」


「八雲君、私の構成はどうすればいい?」
「ちーちゃんて、成体になっても6cmほどなんだよね……前衛はどう頑張っても無理だよ。なので後衛職の魔法使いかな……ヒーラーメインで、攻撃魔法も増やしていこうか?」

「そうね、魔法使いが良いわ!」

「じゃあ、今回の魂石は2番を俺が、3番をちーちゃんが、1と経験値の一番多い4をミーファが食べるのが良いかな? 【体力強化】獲れるといいけど、ミーファの場合は食べてみないと分かんないからね」

「わたくしが2個も貰っていいのですか!?」
「ちーちゃん、別に良いよね?」

「ええ、一番バランスが良い割り振りだと思う。八雲君、2番で良いの? 【擬態】っておそらく八雲君が成長すれば、種族特性として得られるモノじゃないの?」

「うん。もう少し成長したら得られるモノだろうね。でも、【擬態】はちーちゃんもミーファもどうやっても得られないスキルだから、俺が少し早く手に入れておいた方が良いんじゃない」

 話し合った結果、最終的には俺の案で皆納得してくれた。



 1と4をミーファが、2を俺が、3をちーちゃんがそれぞれ食べてスキルを得る事にした。
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