41 / 43
第41話 王宮にて......
しおりを挟む
今日はセシリアが王宮に来る日だ。
エミリアが母上に来ることを言ったみたいで、エミリアも母上もセシリアに会う気満々だ。そんなに王族と一遍に会うと、またセシリアが気絶するんじゃないか?
僕も朝から部屋着ではなく、王族然とした衣装を身に纏っている。ミリアは久しぶりに着てくれて嬉しいです! ミリアは幸せです! と恍惚とした表情を浮かべていたのは正直怖かった。そんなことになるならもう着ないぞ?
セシリアのお迎え役には、アルトという小間使いを選んだ。と言っても小間使いはアルト一人だけなんだけどね。
アルトを見つけたのは一年ほど前だ。王宮を歩いていると、頭を下げて僕が通り過ぎるのを待っていたのがアルトとの出会いだ。王宮にいる人はどんどん鑑定していて、アルトも鑑定対象の一人だった。鑑定してみたらすべてが80台を超えていて、性格も真面目、こんなにいい人材はそういないと思い、父上に頼み込んで小間使いとして僕のもとで働いてもらうことになった。
将来は僕の側近としていて欲しいから、今は、通常の業務に加えて、勉強もして貰っている。覚えも早く、もうすぐ、中等部の勉強は終了しそうだ。
王宮には家から通っていて、家には妹さんがいる。妹さんは体が弱いようで、早めに家に帰らすようにしている。王宮に住めば? と提案してはいるもののなかなか首を縦に振ってくれない。
アルトに任せておけば、セシリアは大丈夫だろう。妹さんがいるせいか、女の子の扱いが手馴れているしな。ミリアもすっかりアルトと仲良くなっているし、嬉しい限りだ。
もうそろそろセシリアが着く頃だろう。
エミリアと共に馬車の停車場まで向かう。
◆
アルトが馬車に乗って戻ってきた。中にはセシリアがいるのだろう。
アルトが御者席から降り、馬車の扉を開ける。
中から出てきたセシリアはいつものセシリアとは見違えて見えた。
いつものセシリアが可愛くないわけじゃない。むしろ、制服のセシリアはそれはそれで破壊力がある。でも、化粧をしたセシリアはまた違った良さを持っている。
いつもの愛らしさもありながら、純白のドレスを身に纏っていることによって、大人で清楚な女性を演出している。ドレスの白と黒髪がいい具合にマッチしていて、似合っている。それに、化粧が控えめな点も好感が持てる。本来のセシリアの可愛さを損ねず、それでいて大人っぽい。
あまりに可愛くて、綺麗で、思わず、『綺麗だ、似合っているよ』なんて普段言わないような発言をしてしまった。それくらいセシリアの綺麗さに心を奪われていたという事なのかな。
セシリアは僕の言葉に反応したのか分からないけど、いつもみたいに気が飛んでた。多分、エミリアのドレス姿でも見て前の時と同じように気が飛んだのだろう。
僕の言葉で照れていたのなら少しうれしいけど、でもないんだろうなぁ。
とりあえず、セシリアを介抱しながら、僕の部屋へと連れていくことにした。
◆
部屋では既にミリアが紅茶を準備して待っていた。
ミリアもアルトと同様とても優秀なメイドだ。王宮内での評判も高く、主である僕も鼻が高い。
セシリアはやっと慣れてきたようで、普通に会話ができるレベルにまでなっている。でも、やっぱり怖いみたいで僕の腕を掴んでいる。僕にとっては得としか言えない。前世でもこんなことなかったし、夢のような時間だ。何とは言わないが当たってるんだ。初めての感触だ。
いけないいけない。そんなこと考えちゃいけない。セシリアは怖がってるんだから、僕は支えにならないといけないんだ。
ミリアは少しムッとした顔をしているし、エミリアはにやりとこっちを見てくるだけだし、なんだか不気味だ。
「セシリア、そろそろ大丈夫? ほら、その……」
さすがにずっと腕に捕まられると、僕の理性が持たなくなる。心惜しいが仕方ない。
「あ、ごめんねっ!! 迷惑だったよね……」
「迷惑じゃ全然なくてむしろその…ずっとそうして欲しいというか……」
「よかった! 迷惑じゃなかったんだ…… ありがとう。ユーリ君っ!!」
いきなり離してくれだなんて言ったらそりゃ僕が嫌がっているように感じちゃうよね。配慮が足りなかった。
エミリアは依然としてニヤニヤしたままだ。なんか嫌だなぁ。
◆
その後は学園での話を交えながら談笑して過ごした。
優雅なひと時を楽しんでいたが、突然、ドアがノックされた。
コンコンッ
「メリルに御座います。ユーリ様、イリーナ様の準備が整いました」
遂に来てしまった。
「ユーリ君、イリーナ様ってもしかして……」
「僕の母上だ。母上もセシリアと一度話をしてみたいと言っててね……」
頭の中で想像したのかセシリアの顔がみるみる蒼褪めていく。
「セシリアさん、お母様の所へ行きますよ」
エミリアがセシリアの手を半ば強引に引き、母上の所へ連れて行った。セシリア、すまない。母上は絶対なんだ。決してマザコンなどではない。家族全体が母上には逆らえないのだ。あの般若のような顔が出てきた時は必ず地獄を見る。その時の姿は決して聖女などには見えない。
セシリア、頑張れ……
エミリアが母上に来ることを言ったみたいで、エミリアも母上もセシリアに会う気満々だ。そんなに王族と一遍に会うと、またセシリアが気絶するんじゃないか?
僕も朝から部屋着ではなく、王族然とした衣装を身に纏っている。ミリアは久しぶりに着てくれて嬉しいです! ミリアは幸せです! と恍惚とした表情を浮かべていたのは正直怖かった。そんなことになるならもう着ないぞ?
セシリアのお迎え役には、アルトという小間使いを選んだ。と言っても小間使いはアルト一人だけなんだけどね。
アルトを見つけたのは一年ほど前だ。王宮を歩いていると、頭を下げて僕が通り過ぎるのを待っていたのがアルトとの出会いだ。王宮にいる人はどんどん鑑定していて、アルトも鑑定対象の一人だった。鑑定してみたらすべてが80台を超えていて、性格も真面目、こんなにいい人材はそういないと思い、父上に頼み込んで小間使いとして僕のもとで働いてもらうことになった。
将来は僕の側近としていて欲しいから、今は、通常の業務に加えて、勉強もして貰っている。覚えも早く、もうすぐ、中等部の勉強は終了しそうだ。
王宮には家から通っていて、家には妹さんがいる。妹さんは体が弱いようで、早めに家に帰らすようにしている。王宮に住めば? と提案してはいるもののなかなか首を縦に振ってくれない。
アルトに任せておけば、セシリアは大丈夫だろう。妹さんがいるせいか、女の子の扱いが手馴れているしな。ミリアもすっかりアルトと仲良くなっているし、嬉しい限りだ。
もうそろそろセシリアが着く頃だろう。
エミリアと共に馬車の停車場まで向かう。
◆
アルトが馬車に乗って戻ってきた。中にはセシリアがいるのだろう。
アルトが御者席から降り、馬車の扉を開ける。
中から出てきたセシリアはいつものセシリアとは見違えて見えた。
いつものセシリアが可愛くないわけじゃない。むしろ、制服のセシリアはそれはそれで破壊力がある。でも、化粧をしたセシリアはまた違った良さを持っている。
いつもの愛らしさもありながら、純白のドレスを身に纏っていることによって、大人で清楚な女性を演出している。ドレスの白と黒髪がいい具合にマッチしていて、似合っている。それに、化粧が控えめな点も好感が持てる。本来のセシリアの可愛さを損ねず、それでいて大人っぽい。
あまりに可愛くて、綺麗で、思わず、『綺麗だ、似合っているよ』なんて普段言わないような発言をしてしまった。それくらいセシリアの綺麗さに心を奪われていたという事なのかな。
セシリアは僕の言葉に反応したのか分からないけど、いつもみたいに気が飛んでた。多分、エミリアのドレス姿でも見て前の時と同じように気が飛んだのだろう。
僕の言葉で照れていたのなら少しうれしいけど、でもないんだろうなぁ。
とりあえず、セシリアを介抱しながら、僕の部屋へと連れていくことにした。
◆
部屋では既にミリアが紅茶を準備して待っていた。
ミリアもアルトと同様とても優秀なメイドだ。王宮内での評判も高く、主である僕も鼻が高い。
セシリアはやっと慣れてきたようで、普通に会話ができるレベルにまでなっている。でも、やっぱり怖いみたいで僕の腕を掴んでいる。僕にとっては得としか言えない。前世でもこんなことなかったし、夢のような時間だ。何とは言わないが当たってるんだ。初めての感触だ。
いけないいけない。そんなこと考えちゃいけない。セシリアは怖がってるんだから、僕は支えにならないといけないんだ。
ミリアは少しムッとした顔をしているし、エミリアはにやりとこっちを見てくるだけだし、なんだか不気味だ。
「セシリア、そろそろ大丈夫? ほら、その……」
さすがにずっと腕に捕まられると、僕の理性が持たなくなる。心惜しいが仕方ない。
「あ、ごめんねっ!! 迷惑だったよね……」
「迷惑じゃ全然なくてむしろその…ずっとそうして欲しいというか……」
「よかった! 迷惑じゃなかったんだ…… ありがとう。ユーリ君っ!!」
いきなり離してくれだなんて言ったらそりゃ僕が嫌がっているように感じちゃうよね。配慮が足りなかった。
エミリアは依然としてニヤニヤしたままだ。なんか嫌だなぁ。
◆
その後は学園での話を交えながら談笑して過ごした。
優雅なひと時を楽しんでいたが、突然、ドアがノックされた。
コンコンッ
「メリルに御座います。ユーリ様、イリーナ様の準備が整いました」
遂に来てしまった。
「ユーリ君、イリーナ様ってもしかして……」
「僕の母上だ。母上もセシリアと一度話をしてみたいと言っててね……」
頭の中で想像したのかセシリアの顔がみるみる蒼褪めていく。
「セシリアさん、お母様の所へ行きますよ」
エミリアがセシリアの手を半ば強引に引き、母上の所へ連れて行った。セシリア、すまない。母上は絶対なんだ。決してマザコンなどではない。家族全体が母上には逆らえないのだ。あの般若のような顔が出てきた時は必ず地獄を見る。その時の姿は決して聖女などには見えない。
セシリア、頑張れ……
1
お気に入りに追加
820
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
前世は最悪だったのに神の世界に行ったら神々全員&転生先の家族から溺愛されて幸せ!?しかも最強➕契約した者、創られた者は過保護すぎ!他者も!?
a.m.
ファンタジー
主人公柳沢 尊(やなぎさわ たける)は最悪な人生だった・・耐えられず心が壊れ自殺してしまう。
気が付くと神の世界にいた。
そして目の前には、多数の神々いて「柳沢尊よ、幸せに出来なくてすまなかった転生の前に前の人生で壊れてしまった心を一緒に治そう」
そうして神々たちとの生活が始まるのだった...
もちろん転生もします
神の逆鱗は、尊を傷つけること。
神「我々の子、愛し子を傷つける者は何であろうと容赦しない!」
神々&転生先の家族から溺愛!
成長速度は遅いです。
じっくり成長させようと思います。
一年一年丁寧に書いていきます。
二年後等とはしません。
今のところ。
前世で味わえなかった幸せを!
家族との思い出を大切に。
現在転生後···· 0歳
1章物語の要点······神々との出会い
1章②物語の要点······家族&神々の愛情
現在1章③物語の要点······?
想像力が9/25日から爆発しまして増えたための変えました。
学校編&冒険編はもう少し進んでから
―――編、―――編―――編まだまだ色んなのを書く予定―――は秘密
処女作なのでお手柔らかにお願いします。文章を書くのが下手なので誤字脱字や比例していたらコメントに書いていただけたらすぐに直しますのでお願いします。(背景などの細かいところはまだ全く書けないのですいません。)主人公以外の目線は、お気に入り100になり次第別に書きますのでそちらの方もよろしくお願いします。(詳細は200)
感想お願いいたします。
❕只今話を繋げ中なためしおりの方は注意❕
目線、詳細は本編の間に入れました
2020年9月毎日投稿予定(何もなければ)
頑張ります
(心の中で読んでくださる皆さんに物語の何か案があれば教えてほしい~~🙏)と思ってしまいました。人物、魔物、物語の流れなど何でも、皆さんの理想に追いつくために!
旧 転生したら最強だったし幸せだった
装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます
tera
ファンタジー
※まだまだまだまだ更新継続中!
※書籍の詳細はteraのツイッターまで!@tera_father
※第1巻〜7巻まで好評発売中!コミックス1巻も発売中!
※書影など、公開中!
ある日、秋野冬至は異世界召喚に巻き込まれてしまった。
勇者召喚に巻き込まれた結果、チートの恩恵は無しだった。
スキルも何もない秋野冬至は一般人として生きていくことになる。
途方に暮れていた秋野冬至だが、手に持っていたアイテムの詳細が見えたり、インベントリが使えたりすることに気づく。
なんと、召喚前にやっていたゲームシステムをそっくりそのまま持っていたのだった。
その世界で秋野冬至にだけドロップアイテムとして誰かが倒した魔物の素材が拾え、お金も拾え、さらに秋野冬至だけが自由に装備を強化したり、錬金したり、ゲームのいいとこ取りみたいな事をできてしまう。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる