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彼と最後の星の降る夜 一人台本(約10分)

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僕は、いつも一人だった。

昔から弱虫で鈍くさくて、人見知りで。
クラスのいじめっ子たちからは格好の標的にされてしまう。そんな風に、一生を送っていくのだと思っていた。

だが、転機は突然訪れる。それは中学二年の春だった。
彼が転校してきたのだ。成績優秀、スポーツ万能。誰からも慕われる彼は何故か僕と一緒にいたがった。

最初はからかってるのかと思ったけどそれはすぐに違うとわかった。
僕をいじめていたやつらが彼の目の前で僕をからかうと、彼は激昴しやつらを殴ったんだ。

なんでそこまで、と言うと君は

「友達のことを言われてなんとも思わないやつはいないよ。」

そう返してきた。

少し問題沙汰にはなったけれど、僕はとても嬉しかったんだ。すっと心の汚い部分が溶けたような、そんな感じがした。今まで一人だったからわからなかった。

そうか、僕らはもう〝友達〟なのか。

それからは楽しい毎日だ。放課後遊んだり、週末に出かけたり、時には一緒に怒られたり。
僕達のお気に入りは丘の上。ここからだと学校がよく見える。ここで寝転ぶのが僕らの日課になっていた。

たまにいじめっ子たちが僕と一緒にいる彼を悪く言うけれど、それに対して言い返せるようにもなった。まあ最後は物理でやられてしまうんだけど。

傷だらけの僕を彼は何も言わず手当してくれる。
ねえ、君のおかげで僕はこんなにも強くなれたんだ。・・・だからそんな悲しそうな顔はしないで。

いつものように僕らは週末、遊園地に出かけた。その日は少し違うことしてみようかって屋台のミニゲームで遊んだ。
僕はハズレのお菓子しか当たらなかったけど、彼は可愛いクラゲのキーホルダーを当てていた。

「ほら、これあげるよ。君こういうの好きでしょ?」

・・・そう言ってくれたクラゲは、今でも僕の宝物なんだよ。

普通の日常が彩りを覚えていく。
ちょうど一年、僕らは中学三年になった。始業式の朝、いつも早く学校に来る君が、来ない。
体調でも崩したのかとその日は大丈夫?とメールを送るだけで終わった。
返信が遅いのはいつもの事だと、疑いもしなかった。

次の日、学校に出る前に家のインターホンがなった。出るとそこには泣き腫れて目の真っ赤な彼のお母さんがいた。

彼は交通事故で死んだ。

歩道に入り込んできた車から小学生を守って亡くなったらしい。実に彼らしい。彼のお母さんは僕が一番の親友だったからと、一番初めに伝えに来てくれたらしい。

ショックと喪失感。彼がいなくなった。文字にすれば簡単だが、頭はそう簡単に理解してはくれない。
学校を休んで一日中丘の上にいた。ここなら、彼に会える気がしたんだ。
月が空に昇る頃、ようやく心が理解して涙が出てきた。それからわんわん泣いた。馬鹿みたいに泣いた。

「なーに泣いてんのさ。らしくもない。」

・・・?声が聞こえる。彼の、声が。

「こっちだっての。」

振り返るとそこには彼がいた。…半透明だったけど。

な、んで?

「さあねえ、君がそうやって泣いてるからじゃない?」

彼は自分が死んだことも理解していた。自分が死んだというのにとても呑気だ。
でもそれでも構わなかった。幽霊だとしても、彼がいてくれるだけで僕は嬉しかったんだ。

それから毎夜、僕は丘の上に通った。彼は夜まで眠っているから僕は毎日学校でこういうことがあったとか、今日は何をしたとか、そんな話をめいいっぱいする。それに彼は優しく相打ちを打つ。
出かけることはもうできないけれど、その時だけは以前の二人に戻れた気がした。

時間はあっという間に過ぎていき、いつの間にか僕は彼の背を通り越して見下ろすくらいになっていた。

それくらいからだ。彼は段々と苦しむようになってきた。優しいから表には出さないけど、成仏した方がいいのだろう。何故彼が成仏できないのか、理由は明白。

僕がきちんと生きれていないからだ。

彼はもういない。それを受け入れて生きること、それができないと彼は心配で成仏できないんだ。

そりゃそうだ。いじめっ子たちのいじめは彼がいなくなってから元に戻り、僕は毎日のようにいじめられている。よって囲まれて、水をかけられたり、クラゲのキーホルダーを隠されたりもした。

彼がその様子を見ていたら、きっと何故やり返さないのかと問うだろう。
だけど僕は知っている。やり返してしまったら同じなんだ。後から手は打つにしろ、冷静にならなければやつらと同じ。
だけど、だから大丈夫だよ!なんて言っても彼は信じてくれないんだろうな。

(ニュースキャスターの声)今日は珍しくこちらの地域にも流れ星が降るそうです。晴れていれば見れるかもしれませんね。

地域放送のテレビがそんなことを言っている。試しに、賭けてみるのもいいかもしれない。

いつものように僕は丘の上へ向かう。

「ふあぁぁ、おはよう。また来たんだね。」

そう君は言う。
半年前の僕は弱くて、彼がいなきゃダメだった。でもそれは僕のわがままだった。
彼を笑顔で見送ること、それが本来僕がすべきことだったんだ。
実はね、君には言っていないけど僕君以外にも友達ができたんだ。だから、もう大丈夫だよ。

おやすみ。

・・・生まれ変わった君と、また友達になれたらいいな。
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