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八章
明らかになる事実
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顔色の悪いロリアンが、カウチに腰掛けている私のところへ近づくと、即座に跪いた。
「セイラ様、私がお呼びしたお茶会で、このようなことになってしまい、誠に申し訳ございません」
その声が震えているのに気がついて、私は彼女が、心から心配してくれているのだと知り、目頭が熱くなった。精神的に不安定な今の私は、言わば人間不信に陥っている状態なので、目の前の人が信用に値すると感じただけで、気が緩んでしまう。
エリオットは扉の所に立ち、遠巻きにこちらを見守ってくれている。
「ロリアン様、顔をあげてください」
出来るだけ落ち着いた声を出したつもりだったが、私の声も少し震えていた。ゆっくり顔をあげたロリアンのオリーブ色の目には、大きな涙が浮かんでいた。彼女は、その涙が彼女の頬をつたって落ちるのも構わず、私の右手を取り両手でそっと包んだ。
「私があの場にいたら、きっとこのようなことにはならなかったでしょう。広場に向かおうとしたところで、急に足止めされてしまったのです。今思えば、意図的に私の到着を遅らせる計画があったのだと思います」
とても苦しそうにそう言うと、彼女は包帯だらけの私を見て、まるで自分が怪我したかのように痛々しく顔を歪めた。
「婚儀の直前に、このような惨事、そしてお怪我をされることになって……どのように謝罪申し上げればよいのか……」
「大丈夫です。包帯の量が多いので、実際より大怪我したように見えているだけですから」
右肩の火傷はまだヒリヒリするけど、数日で腫れも引く軽度のものらしいし、左腕も、出血にはびっくりしたけど、実際に見てみたら、傷は4、5センチくらいのもので、それほど深くもなさそうだった。
ロリアンは少しだけホッとしたように、顔の緊張を緩める。
「ロリアン様、あの……」
私は、そこで一度、呼吸を止めた。これから聞こうと思っていることが、喉につっかえている。彼女は、私の引きつっている顔を見て、これから何か、重大な質問をされるのだと気がついたのか、黙ってじっと私を見つめた。
彼女の目に宿る光には、一切偽りの影がないことを確信した。プレーボーイで女性問題が多かったというユリアスが選んだ女性なのだ。きっと、彼女は賢く、信頼できる大人の女性に違いない。
私の右手を両手で包んでいるロリアンは、とても落ち着き、冷静な表情でじっと私の言葉を待っている。私は息を深く吸い込み、ゆっくりと、その質問を口にした。
「お願いです。カスピアンと、サーシャの関係を、教えてください」
一瞬、彼女は口元をキュッと結ぶように顔を強ばらせたが、私から目を逸らしはしなかった。あれこれと詳しい質問内容を言わずとも、私が知りたいと思っていることは、はっきりと伝わっている。ロリアンは、少しだけ迷うように何度か瞬きをしたが、やがて、小さく頷いた。
「わかりました。セイラ様。これは、一人の女性である、セイラ様へ申し上げることです。次期王妃というお立場の方には、不適切な内容であるかもしれませんから……それでもよろしいですか」
「……はい。それが、私の望むことですから」
しっかりと頷いてみせると、ロリアンは、少しだけ目を潤ませて、僅かに微笑んだ。そして、私の手に目を落とし、ひとつ、ため息をついた。
「サーシャは私の従妹です。あの子は、とても明るく、賢い子でした。アンジェ王女と姉妹のように仲良く、幼い頃から、カスピアン様、ユリアス様とも一緒に過ごすことが多かったので、周りも、きっとサーシャはカスピアン様のお妃になるのだろうと思っていたでしょう」
私がゆっくりと頷くと、ロリアンは慈しみのこもった目で私を見つめた。
「私もそれほど、サーシャと付き合いが深いわけではないのです。従妹といっても、私とは違い、サーシャは王家と大変近い侯爵家の出身ですから。大人になってからは特に、公の場で会うくらいでしたので、正直なところ、私もサーシャとカスピアン様の詳しい関係は存じません。ですから、噂ではなく、あくまで事実として知っていることだけを申し上げます」
そこで一度、言葉を切ると、彼女は私をじっと見つめた。まるで、私がこれから聞く内容をきちんと受け止めることが出来るか、心配しているのような眼差し。私は、覚悟は出来ているというつもりで、大きく頷いてみせた。ロリアンのオリーブ色の目に、悲哀の色を浮かぶ。そのまま静かに視線を落とした彼女は、沸き上がる感情を鎮めようとしているようだった。
「前王妃、シルビア様がお亡くなりになった時、カスピアン様は、大変荒れていらっしゃいました。連夜、お酒を呷るように飲まれていたことは、誰もが知っています。酔いつぶれるカスピアン様に付き添い、夜通し介抱し続けていたのは、サーシャです」
私は反射的にロリアンの手をぎゅっと握り、胸の痛みを堪えた。私は、自分が知りたいと思っていたことを、聞いているのだ。すべてを、知りたいという気持ちは、絶対に揺るがない。
動揺を耐えてじっとしている私の様子を見たロリアンが、一度きつく口を結ぶと、心を決めたようにまっすぐに私を見つめた。
「一年ほど前、サーシャが突然、私のもとを訪れました」
彼女は、苦痛に顔を歪めながら、必死で勇気を振り絞るかのように唇を噛み締めた。そして、少し震えるような声で、静かにその言葉を口にした。
「……堕胎をしてくれる医者を、紹介してほしいと」
その瞬間、私は心臓が止まったかと思うほどのショックに、頭の中が真っ白になった。
「詳しいことは知りませんが、切羽詰まった様子だったので、私が手配しました……一体何があったのかは、聞いておりません」
ロリアンは涙ぐみながら、嗚咽を堪えるように言葉を絞り出す。
「あの子は、その頃から更に言動がおかしくなってしまったのです。昔は、あんな子ではなかったのに。恐らく、堕胎したことは、サーシャの親である、侯爵や侯爵夫人も御存知でしょうが、一族の恥になるようなことを外に漏らすことはないでしょう。だから、外部の人間でこの事実を知っているのは、私だけなのです」
「……ありがとう……」
まるで氷の世界に身を投じたような感覚の中、何故か、私は冷静にお礼を述べていた。虚無という空間に佇む、血の通わない人形になったような気がした。現に、私の指先も、つま先も、すべてが氷のように冷たくなっている。全身の血が、瞬時に凍り付いたようだ。
感情が完全に失せた私を見て、ロリアンは動揺したように私の手を握りしめた。
「セイラ様」
「……大丈夫です。教えてくれて、ありがとう」
不思議なことに、私は彼女に微笑みかけていた。
ロリアンは、本当に彼女の知る事を包み隠さず教えてくれた。彼女には、感謝の気持ちしかなかった。
「セイラ様。陛下が深く愛されていらっしゃるのは、貴女だけです。それだけは、決して疑ってはなりません」
私を励ますように、力強く声をかけてくれるロリアン。彼女の言葉にわざとらしい飾りはなく、まっすぐに私の心に届く。
彼女のような、偽りのない心の優しい人に出会えて、本当に良かった。
「ありがとう」
私ははっきりとお礼を口にし、温かい彼女の手を握り返した。
もう、悩みから解放された。
私の心は、決まったのだから。
やはり、カスピアンに向き合う勇気なんか、これっぽちもない。
私は、扉の側に立つエリオットに目を向ける。私の視線を確認した彼は、小さく微笑むと、静かに部屋から出て行った。
その後、話題を変えて、テオドールの話やお妃教育のことをしばらく話す。ロリアンが退室し、入れ替わりでエリオットが戻って来る。
彼は、大きな麻袋をひとつ手にしていた。
今更言わずとも、私が王宮を出ると決意したことは彼には伝わっており、すでに準備を整えて来たということだろう。
悲しみも許容範囲を超えると、まるでそれが他人事のような気がして、涙も出ない。私はエリオットに目を向け、カウチから立ち上がった。
「それで、どうやって出るの?前もって、きちんと教えてくれる?」
この厳しい警備の中、本当に気づかれずに出る事が可能なのだろうか。一体、どういう計画なのかと思い訊ねると、エリオットは声をひそめて説明してくれた。
「これから、厩舎へ参ります。セイラ様は、当分は乗馬が出来ないため、代わりにサンダーの様子を見に行くということにしましょう」
「厩舎?まさか、馬で出るつもりなの?私、この腕では手綱も握れない……」
「いいえ、馬では出ません。厩舎に着きましたら、セイラ様の体調が急に悪くなったことにします。護衛に、輿と医師の手配をさせ、警備が手薄になったところで、厩舎から馬を放ちます。混乱が起きている間に、裏の小川から小舟を使って脱出します。もう夕暮れですので、人目につくこともないでしょう。その後については、また、説明します」
すらすらと脱出計画を説明するエリオットの、自信に溢れた表情は、いつものおっとりした彼とは別人のようだ。落ち着き払っている彼の様子を呆然と見ていると、エリオットが少し、困ったように眉間に皺を寄せた。
「時間がございませんので、ご準備をお願いします。後で、必要なものはすべて取り揃えますので、ご心配は要りません。竪琴は持って行かれますか?」
私はハッとして、暖炉の上に置いてある竪琴に目を向けた。
ラベロア王宮の謁見の間。
重大な罪状による処分の通告とし、王宮へ呼び立てられたハントリー侯爵が、左右を衛兵に挟まれ部屋の中央に立っていた。一体何事かと真っ青になっているハントリー侯爵は、国王の到着を待ちながら、額から脂汗を垂らしていた。
やがて、部屋の外が騒々しくなったかと思うと、待ち構えていた衛兵が扉を開ける。緊張の面持ちで直立するハントリー侯爵の目に映ったのは、外出着のままの国王、カスピアン。凄まじい怒りの色を浮かべた形相で、大股で謁見の間に入ってくると、ハントリー侯爵を目で捕らえるなり、手に持っていたものを投げつけた。
「あっ……」
受け取り損ねて絨毯の上に落ちたものを見下ろし、ハントリー侯爵が声を上げた。見覚えのある、ブロンドの髪。
すぐにそれが、娘、サーシャのものだと分かり、顔色を変えた。
「陛下!これは……」
髪を手に取り、真っ青になりカスピアンを見上げたハントリー侯爵。
カスピアンに代わり、臣下の一人が答えた。
「貴殿の娘、サーシャ殿は、セイラ様の暗殺を企んだ首謀者として、地下牢に閉じ込められております」
「なんですと?!サーシャが?!」
ハントリー侯爵は激しく動揺した。娘のブロンドの髪を握る手がぶるぶると震えている。
「本来ならば、死刑処分の罪状であるが、セイラ様のお情けにより、陛下が異例とし減刑をお許しになられた。貴殿の爵位は剥奪、追放が申し渡されております。3日間の猶予期間内に従わねば、減刑取り消しとなる故、早々に準備されるよう」
文面を読み上げる臣下を見て、ハントリー侯爵が驚愕の表情でカスピアンを見つめた。
「陛下!一体、何があったのか、ご説明ください!」
とても納得出来ないという様子のハントリー侯爵の訴えを、臣下が遮った。
「処分に関係する罪状は二件。サーシャ殿は、公務代行としての妃候補の任務につき、ピエール殿と密約を結び、不正に王妃になることを企んだ。昨晩、ピエール殿は逃亡先から連れ戻され、尋問が始まっており、罪状については大筋で認めております。そして、本日、お茶会の場で、セイラ様の暗殺を企み、複数の人間に協力を指示した首謀者は、サーシャ殿であるとその場で確認されております」
説明を受けたハントリー侯爵は真っ青になり、膝から崩れ落ちた。
「まさか……サーシャが、そんな……」
「おまえの娘は、あろうことか、アンジェまでそそのかし、企みに加担させたのだ。次期王妃を命の危険にさらし、怪我を負わせた罪の重さが、おまえに分からぬ筈は無かろう。セイラがあのように懇願した故、この重罪人の命を助けてやったが……」
カスピアンの怒りに震える低い声に、ハントリー侯爵がよろよろと顔をあげた。
「陛下。娘は、陛下をお慕いするばかりに、このような過ちを……」
「だまれ!過ちだと?これは、死刑に値する重罪だ!そもそも、おまえの娘は、妃の座に固執するあまりに、これまでも許しがたい言動で無礼を働いておったのだ。それを知らぬとは言わせぬぞ。己の娘をこのように野放しにした上、あまつさえ、次期王妃の命を狙うなどの愚行を未然に防がなかった、おまえの罪は重い!」
一喝したカスピアンの言葉に、ハントリー侯爵がぶるっと震え、下を向いた。
「では、退室願います」
左右の衛兵が、ハントリー侯爵に近寄り、両脇を抱えて立たせる。ハントリー侯爵は、屈辱に歪んだ顔をカスピアンに向けると、血を吐くような声で叫んだ。
「陛下!娘の名誉を守るため、申し上げます!貴方は、娘を孕ませておきながら、無理矢理堕胎させた上、妃にはしないとおっしゃった。このような、非道なことをされたことを、どう思われますか!」
突然の暴言に、周りが沈黙し、カスピアンの方を見た。
ハントリー侯爵は、声を震わせながら、尚も続けた。
「私の一人娘を、あのように弄び、狂わせたのは、貴方なんです!娘は、いずれ妃になれると信じ、泣く泣く貴方の子を堕ろしたのです!」
半狂乱となり叫ぶハントリー侯爵。
カスピアンは、感情の失せた顔でじっと侯爵を見る。無言で、目を細めてしばらく侯爵を眺めていたが、やがて、激しい嫌悪に顔を歪めた。
「おまえは、更に罪を重ねるつもりか。誰に物を申しているか、わかっているのか」
静かに問い返すカスピアンの声は、強い怒りを帯び、掠れていた。
「もちろんです!陛下!貴方が、私の娘を狂わせたのです!」
狂気に捕われた如く絶叫したハントリー侯爵に、カスピアンの顔色が変わった。
「無礼者!貴様、死にたいのかっ!」
王宮内に響き渡るほどの罵声を容赦なく浴びせた、カスピアンの凄まじい剣幕に、数歩後退したハントリー侯爵。腰から剣を抜き取ったカスピアンが、大股でハントリー侯爵に歩み寄り、その襟ぐりを掴みあげた。怒りに爛爛と燃える目に見据えられた侯爵が、恐怖のあまり、失禁する。全身を振るわせている侯爵の襟をきつく掴み上げ、カスピアンが、その喉元に剣先を突きつけた。
「貴様、血迷ったか!この私が、おまえの娘を孕ませただと?その虚言を今すぐ撤回せねば、二度と口がきけぬよう、おまえの頭と胴体を切り離すぞ!」
殺気立つ謁見の間に、短いノックの後、エイドリアン、マーゴットが入室した。二人は、激怒したカスピアンと、失神寸前のハントリー侯爵を目にして、一瞬、立ち止まったが、すぐに跪いた。
「急ぎの報告でございます」
エイドリアンの声に、カスピアンは振り向きもせず、「続けろ」と短く呟き、尚も、剣先を侯爵の首に突きつける。
「昨晩から尋問中のピエールによりますと、サーシャ殿との密約を交わす見返りとし、深い関係を持っていたと白状しました。サーシャ殿の妊娠が発覚し、堕胎を行った以降は、関係を解消したと申しております」
一同がざわめいた。ハントリー侯爵が目を剥き、絶望の色を浮かべ、カスピアンを見上げた。カスピアンは、侯爵の襟首を離し、その崩れ落ちる背に向かい、忌々し気に吐き捨てた。
「おまえの娘に手など出した事は、ただの一度もないわ!国王の私をこのように侮辱するとは……」
激しい怒りに真っ赤になっているカスピアンは、怒りに肩を震わせながら、マーゴットに目を向ける。
「おまえは何の用だ」
マーゴットは、厳しい表情でカスピアンを見上げた。
「昨晩、陛下が、ピエール殿の尋問に同席されるため、奥宮にお戻りにならなかった件でございます。アンジェ様のお部屋にネズミが出た為、陛下ご不在の国王の間でのご就寝をを希望され、陛下の許可をいただき、アンジェ様を国王の間へご案内申し上げました。今朝、伺ったところ、アンジェ様は、サーシャ殿をお呼びになっており、お二人で国王の間でお休みになられておりました。アンジェ様にご注意したところ、もともとサーシャ殿がお泊まりにいらっしゃるお約束であったため、やむを得なかったとおっしゃられました」
その報告に、カスピアンが眉をひそめ、注意深くマーゴットを見下ろす。
「今朝、お二人の身支度をお手伝いしておりましたところ、サーシャ殿が、指で肌を摘み続けられる行動を取られており、胸の周りが虫さされのように腫れるのでご指摘したのですが、お止めになりませんでした。広場での惨事につきサリーの報告を聞いていたところ、サーシャ殿が、その胸元をセイラ様にお見せするという不審な行動をしていたとのこと。また、サーシャ殿は、陛下のご寵愛を仄めかすような言葉を口にしていたそうです。その後、サーシャ殿が、竪琴を投げられ、後は、陛下のご覧になった通りです。先ほど、セイラ様が、サーシャ様が奥宮に頻繁にいらっしゃっているか質問されていたとの報告がございました。確かに、サーシャ殿はアンジェ様に会いに、奥宮に来られていましたが、そうではなく、陛下のところへいらしていたという、誤った情報がセイラ様に伝わっている可能性がございます」
カスピアンは思わぬ報告に愕然と目を見開いた。
「セイラ様、私がお呼びしたお茶会で、このようなことになってしまい、誠に申し訳ございません」
その声が震えているのに気がついて、私は彼女が、心から心配してくれているのだと知り、目頭が熱くなった。精神的に不安定な今の私は、言わば人間不信に陥っている状態なので、目の前の人が信用に値すると感じただけで、気が緩んでしまう。
エリオットは扉の所に立ち、遠巻きにこちらを見守ってくれている。
「ロリアン様、顔をあげてください」
出来るだけ落ち着いた声を出したつもりだったが、私の声も少し震えていた。ゆっくり顔をあげたロリアンのオリーブ色の目には、大きな涙が浮かんでいた。彼女は、その涙が彼女の頬をつたって落ちるのも構わず、私の右手を取り両手でそっと包んだ。
「私があの場にいたら、きっとこのようなことにはならなかったでしょう。広場に向かおうとしたところで、急に足止めされてしまったのです。今思えば、意図的に私の到着を遅らせる計画があったのだと思います」
とても苦しそうにそう言うと、彼女は包帯だらけの私を見て、まるで自分が怪我したかのように痛々しく顔を歪めた。
「婚儀の直前に、このような惨事、そしてお怪我をされることになって……どのように謝罪申し上げればよいのか……」
「大丈夫です。包帯の量が多いので、実際より大怪我したように見えているだけですから」
右肩の火傷はまだヒリヒリするけど、数日で腫れも引く軽度のものらしいし、左腕も、出血にはびっくりしたけど、実際に見てみたら、傷は4、5センチくらいのもので、それほど深くもなさそうだった。
ロリアンは少しだけホッとしたように、顔の緊張を緩める。
「ロリアン様、あの……」
私は、そこで一度、呼吸を止めた。これから聞こうと思っていることが、喉につっかえている。彼女は、私の引きつっている顔を見て、これから何か、重大な質問をされるのだと気がついたのか、黙ってじっと私を見つめた。
彼女の目に宿る光には、一切偽りの影がないことを確信した。プレーボーイで女性問題が多かったというユリアスが選んだ女性なのだ。きっと、彼女は賢く、信頼できる大人の女性に違いない。
私の右手を両手で包んでいるロリアンは、とても落ち着き、冷静な表情でじっと私の言葉を待っている。私は息を深く吸い込み、ゆっくりと、その質問を口にした。
「お願いです。カスピアンと、サーシャの関係を、教えてください」
一瞬、彼女は口元をキュッと結ぶように顔を強ばらせたが、私から目を逸らしはしなかった。あれこれと詳しい質問内容を言わずとも、私が知りたいと思っていることは、はっきりと伝わっている。ロリアンは、少しだけ迷うように何度か瞬きをしたが、やがて、小さく頷いた。
「わかりました。セイラ様。これは、一人の女性である、セイラ様へ申し上げることです。次期王妃というお立場の方には、不適切な内容であるかもしれませんから……それでもよろしいですか」
「……はい。それが、私の望むことですから」
しっかりと頷いてみせると、ロリアンは、少しだけ目を潤ませて、僅かに微笑んだ。そして、私の手に目を落とし、ひとつ、ため息をついた。
「サーシャは私の従妹です。あの子は、とても明るく、賢い子でした。アンジェ王女と姉妹のように仲良く、幼い頃から、カスピアン様、ユリアス様とも一緒に過ごすことが多かったので、周りも、きっとサーシャはカスピアン様のお妃になるのだろうと思っていたでしょう」
私がゆっくりと頷くと、ロリアンは慈しみのこもった目で私を見つめた。
「私もそれほど、サーシャと付き合いが深いわけではないのです。従妹といっても、私とは違い、サーシャは王家と大変近い侯爵家の出身ですから。大人になってからは特に、公の場で会うくらいでしたので、正直なところ、私もサーシャとカスピアン様の詳しい関係は存じません。ですから、噂ではなく、あくまで事実として知っていることだけを申し上げます」
そこで一度、言葉を切ると、彼女は私をじっと見つめた。まるで、私がこれから聞く内容をきちんと受け止めることが出来るか、心配しているのような眼差し。私は、覚悟は出来ているというつもりで、大きく頷いてみせた。ロリアンのオリーブ色の目に、悲哀の色を浮かぶ。そのまま静かに視線を落とした彼女は、沸き上がる感情を鎮めようとしているようだった。
「前王妃、シルビア様がお亡くなりになった時、カスピアン様は、大変荒れていらっしゃいました。連夜、お酒を呷るように飲まれていたことは、誰もが知っています。酔いつぶれるカスピアン様に付き添い、夜通し介抱し続けていたのは、サーシャです」
私は反射的にロリアンの手をぎゅっと握り、胸の痛みを堪えた。私は、自分が知りたいと思っていたことを、聞いているのだ。すべてを、知りたいという気持ちは、絶対に揺るがない。
動揺を耐えてじっとしている私の様子を見たロリアンが、一度きつく口を結ぶと、心を決めたようにまっすぐに私を見つめた。
「一年ほど前、サーシャが突然、私のもとを訪れました」
彼女は、苦痛に顔を歪めながら、必死で勇気を振り絞るかのように唇を噛み締めた。そして、少し震えるような声で、静かにその言葉を口にした。
「……堕胎をしてくれる医者を、紹介してほしいと」
その瞬間、私は心臓が止まったかと思うほどのショックに、頭の中が真っ白になった。
「詳しいことは知りませんが、切羽詰まった様子だったので、私が手配しました……一体何があったのかは、聞いておりません」
ロリアンは涙ぐみながら、嗚咽を堪えるように言葉を絞り出す。
「あの子は、その頃から更に言動がおかしくなってしまったのです。昔は、あんな子ではなかったのに。恐らく、堕胎したことは、サーシャの親である、侯爵や侯爵夫人も御存知でしょうが、一族の恥になるようなことを外に漏らすことはないでしょう。だから、外部の人間でこの事実を知っているのは、私だけなのです」
「……ありがとう……」
まるで氷の世界に身を投じたような感覚の中、何故か、私は冷静にお礼を述べていた。虚無という空間に佇む、血の通わない人形になったような気がした。現に、私の指先も、つま先も、すべてが氷のように冷たくなっている。全身の血が、瞬時に凍り付いたようだ。
感情が完全に失せた私を見て、ロリアンは動揺したように私の手を握りしめた。
「セイラ様」
「……大丈夫です。教えてくれて、ありがとう」
不思議なことに、私は彼女に微笑みかけていた。
ロリアンは、本当に彼女の知る事を包み隠さず教えてくれた。彼女には、感謝の気持ちしかなかった。
「セイラ様。陛下が深く愛されていらっしゃるのは、貴女だけです。それだけは、決して疑ってはなりません」
私を励ますように、力強く声をかけてくれるロリアン。彼女の言葉にわざとらしい飾りはなく、まっすぐに私の心に届く。
彼女のような、偽りのない心の優しい人に出会えて、本当に良かった。
「ありがとう」
私ははっきりとお礼を口にし、温かい彼女の手を握り返した。
もう、悩みから解放された。
私の心は、決まったのだから。
やはり、カスピアンに向き合う勇気なんか、これっぽちもない。
私は、扉の側に立つエリオットに目を向ける。私の視線を確認した彼は、小さく微笑むと、静かに部屋から出て行った。
その後、話題を変えて、テオドールの話やお妃教育のことをしばらく話す。ロリアンが退室し、入れ替わりでエリオットが戻って来る。
彼は、大きな麻袋をひとつ手にしていた。
今更言わずとも、私が王宮を出ると決意したことは彼には伝わっており、すでに準備を整えて来たということだろう。
悲しみも許容範囲を超えると、まるでそれが他人事のような気がして、涙も出ない。私はエリオットに目を向け、カウチから立ち上がった。
「それで、どうやって出るの?前もって、きちんと教えてくれる?」
この厳しい警備の中、本当に気づかれずに出る事が可能なのだろうか。一体、どういう計画なのかと思い訊ねると、エリオットは声をひそめて説明してくれた。
「これから、厩舎へ参ります。セイラ様は、当分は乗馬が出来ないため、代わりにサンダーの様子を見に行くということにしましょう」
「厩舎?まさか、馬で出るつもりなの?私、この腕では手綱も握れない……」
「いいえ、馬では出ません。厩舎に着きましたら、セイラ様の体調が急に悪くなったことにします。護衛に、輿と医師の手配をさせ、警備が手薄になったところで、厩舎から馬を放ちます。混乱が起きている間に、裏の小川から小舟を使って脱出します。もう夕暮れですので、人目につくこともないでしょう。その後については、また、説明します」
すらすらと脱出計画を説明するエリオットの、自信に溢れた表情は、いつものおっとりした彼とは別人のようだ。落ち着き払っている彼の様子を呆然と見ていると、エリオットが少し、困ったように眉間に皺を寄せた。
「時間がございませんので、ご準備をお願いします。後で、必要なものはすべて取り揃えますので、ご心配は要りません。竪琴は持って行かれますか?」
私はハッとして、暖炉の上に置いてある竪琴に目を向けた。
ラベロア王宮の謁見の間。
重大な罪状による処分の通告とし、王宮へ呼び立てられたハントリー侯爵が、左右を衛兵に挟まれ部屋の中央に立っていた。一体何事かと真っ青になっているハントリー侯爵は、国王の到着を待ちながら、額から脂汗を垂らしていた。
やがて、部屋の外が騒々しくなったかと思うと、待ち構えていた衛兵が扉を開ける。緊張の面持ちで直立するハントリー侯爵の目に映ったのは、外出着のままの国王、カスピアン。凄まじい怒りの色を浮かべた形相で、大股で謁見の間に入ってくると、ハントリー侯爵を目で捕らえるなり、手に持っていたものを投げつけた。
「あっ……」
受け取り損ねて絨毯の上に落ちたものを見下ろし、ハントリー侯爵が声を上げた。見覚えのある、ブロンドの髪。
すぐにそれが、娘、サーシャのものだと分かり、顔色を変えた。
「陛下!これは……」
髪を手に取り、真っ青になりカスピアンを見上げたハントリー侯爵。
カスピアンに代わり、臣下の一人が答えた。
「貴殿の娘、サーシャ殿は、セイラ様の暗殺を企んだ首謀者として、地下牢に閉じ込められております」
「なんですと?!サーシャが?!」
ハントリー侯爵は激しく動揺した。娘のブロンドの髪を握る手がぶるぶると震えている。
「本来ならば、死刑処分の罪状であるが、セイラ様のお情けにより、陛下が異例とし減刑をお許しになられた。貴殿の爵位は剥奪、追放が申し渡されております。3日間の猶予期間内に従わねば、減刑取り消しとなる故、早々に準備されるよう」
文面を読み上げる臣下を見て、ハントリー侯爵が驚愕の表情でカスピアンを見つめた。
「陛下!一体、何があったのか、ご説明ください!」
とても納得出来ないという様子のハントリー侯爵の訴えを、臣下が遮った。
「処分に関係する罪状は二件。サーシャ殿は、公務代行としての妃候補の任務につき、ピエール殿と密約を結び、不正に王妃になることを企んだ。昨晩、ピエール殿は逃亡先から連れ戻され、尋問が始まっており、罪状については大筋で認めております。そして、本日、お茶会の場で、セイラ様の暗殺を企み、複数の人間に協力を指示した首謀者は、サーシャ殿であるとその場で確認されております」
説明を受けたハントリー侯爵は真っ青になり、膝から崩れ落ちた。
「まさか……サーシャが、そんな……」
「おまえの娘は、あろうことか、アンジェまでそそのかし、企みに加担させたのだ。次期王妃を命の危険にさらし、怪我を負わせた罪の重さが、おまえに分からぬ筈は無かろう。セイラがあのように懇願した故、この重罪人の命を助けてやったが……」
カスピアンの怒りに震える低い声に、ハントリー侯爵がよろよろと顔をあげた。
「陛下。娘は、陛下をお慕いするばかりに、このような過ちを……」
「だまれ!過ちだと?これは、死刑に値する重罪だ!そもそも、おまえの娘は、妃の座に固執するあまりに、これまでも許しがたい言動で無礼を働いておったのだ。それを知らぬとは言わせぬぞ。己の娘をこのように野放しにした上、あまつさえ、次期王妃の命を狙うなどの愚行を未然に防がなかった、おまえの罪は重い!」
一喝したカスピアンの言葉に、ハントリー侯爵がぶるっと震え、下を向いた。
「では、退室願います」
左右の衛兵が、ハントリー侯爵に近寄り、両脇を抱えて立たせる。ハントリー侯爵は、屈辱に歪んだ顔をカスピアンに向けると、血を吐くような声で叫んだ。
「陛下!娘の名誉を守るため、申し上げます!貴方は、娘を孕ませておきながら、無理矢理堕胎させた上、妃にはしないとおっしゃった。このような、非道なことをされたことを、どう思われますか!」
突然の暴言に、周りが沈黙し、カスピアンの方を見た。
ハントリー侯爵は、声を震わせながら、尚も続けた。
「私の一人娘を、あのように弄び、狂わせたのは、貴方なんです!娘は、いずれ妃になれると信じ、泣く泣く貴方の子を堕ろしたのです!」
半狂乱となり叫ぶハントリー侯爵。
カスピアンは、感情の失せた顔でじっと侯爵を見る。無言で、目を細めてしばらく侯爵を眺めていたが、やがて、激しい嫌悪に顔を歪めた。
「おまえは、更に罪を重ねるつもりか。誰に物を申しているか、わかっているのか」
静かに問い返すカスピアンの声は、強い怒りを帯び、掠れていた。
「もちろんです!陛下!貴方が、私の娘を狂わせたのです!」
狂気に捕われた如く絶叫したハントリー侯爵に、カスピアンの顔色が変わった。
「無礼者!貴様、死にたいのかっ!」
王宮内に響き渡るほどの罵声を容赦なく浴びせた、カスピアンの凄まじい剣幕に、数歩後退したハントリー侯爵。腰から剣を抜き取ったカスピアンが、大股でハントリー侯爵に歩み寄り、その襟ぐりを掴みあげた。怒りに爛爛と燃える目に見据えられた侯爵が、恐怖のあまり、失禁する。全身を振るわせている侯爵の襟をきつく掴み上げ、カスピアンが、その喉元に剣先を突きつけた。
「貴様、血迷ったか!この私が、おまえの娘を孕ませただと?その虚言を今すぐ撤回せねば、二度と口がきけぬよう、おまえの頭と胴体を切り離すぞ!」
殺気立つ謁見の間に、短いノックの後、エイドリアン、マーゴットが入室した。二人は、激怒したカスピアンと、失神寸前のハントリー侯爵を目にして、一瞬、立ち止まったが、すぐに跪いた。
「急ぎの報告でございます」
エイドリアンの声に、カスピアンは振り向きもせず、「続けろ」と短く呟き、尚も、剣先を侯爵の首に突きつける。
「昨晩から尋問中のピエールによりますと、サーシャ殿との密約を交わす見返りとし、深い関係を持っていたと白状しました。サーシャ殿の妊娠が発覚し、堕胎を行った以降は、関係を解消したと申しております」
一同がざわめいた。ハントリー侯爵が目を剥き、絶望の色を浮かべ、カスピアンを見上げた。カスピアンは、侯爵の襟首を離し、その崩れ落ちる背に向かい、忌々し気に吐き捨てた。
「おまえの娘に手など出した事は、ただの一度もないわ!国王の私をこのように侮辱するとは……」
激しい怒りに真っ赤になっているカスピアンは、怒りに肩を震わせながら、マーゴットに目を向ける。
「おまえは何の用だ」
マーゴットは、厳しい表情でカスピアンを見上げた。
「昨晩、陛下が、ピエール殿の尋問に同席されるため、奥宮にお戻りにならなかった件でございます。アンジェ様のお部屋にネズミが出た為、陛下ご不在の国王の間でのご就寝をを希望され、陛下の許可をいただき、アンジェ様を国王の間へご案内申し上げました。今朝、伺ったところ、アンジェ様は、サーシャ殿をお呼びになっており、お二人で国王の間でお休みになられておりました。アンジェ様にご注意したところ、もともとサーシャ殿がお泊まりにいらっしゃるお約束であったため、やむを得なかったとおっしゃられました」
その報告に、カスピアンが眉をひそめ、注意深くマーゴットを見下ろす。
「今朝、お二人の身支度をお手伝いしておりましたところ、サーシャ殿が、指で肌を摘み続けられる行動を取られており、胸の周りが虫さされのように腫れるのでご指摘したのですが、お止めになりませんでした。広場での惨事につきサリーの報告を聞いていたところ、サーシャ殿が、その胸元をセイラ様にお見せするという不審な行動をしていたとのこと。また、サーシャ殿は、陛下のご寵愛を仄めかすような言葉を口にしていたそうです。その後、サーシャ殿が、竪琴を投げられ、後は、陛下のご覧になった通りです。先ほど、セイラ様が、サーシャ様が奥宮に頻繁にいらっしゃっているか質問されていたとの報告がございました。確かに、サーシャ殿はアンジェ様に会いに、奥宮に来られていましたが、そうではなく、陛下のところへいらしていたという、誤った情報がセイラ様に伝わっている可能性がございます」
カスピアンは思わぬ報告に愕然と目を見開いた。
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