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三章
大神官の忠告
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体調の優れぬ国王の代理としての執務をこなす傍ら、軍の総指揮官としても日々果たさなくてはならない責務を負うカスピアン。午前中は王宮の近くにある闘技場で行われる兵士達の鍛錬に付き合い、昼過ぎに王宮へ戻った。午後の議会が始まるまでの束の間の休憩時間、カスピアンは、人払いをしたバルコニーで側近エイドリアンの報告に耳を傾けていた。
「小人夫婦によると、やはり、セイラ様は実の娘ではなく、湖畔に一人倒れていたところを助け匿っていたとのことでした。発見した時に身に纏っていたものがこちらです」
カスピアンは艶やかな光沢のある純白のドレスを受け取り、その繊細な作りと細部まで手の込んだ装飾の美しさに眉をしかめた。
「庶民が身につけるようなものではないな」
「はい。異国の方で、それなりの家柄の生まれだということは間違いないようです。小人夫婦の話だと、セイラ様ご自身も、なぜ湖畔に倒れていたか分からないようだったと」
「ふむ……」
カスピアンは頷いて、考え込むように腕組みをした。
何度かセイラに生まれについて問いただしたが、毎回黙り込み答えないので、親だという小人夫婦に真実を吐かせるようエイドリアンに指令を出していた。セイラ本人も何故、どのように異国からラベロア王国に来たのかわからないらしいという小人夫婦の話が真実であれば、セイラに記憶がないという可能性もあるのかもしれない。
カスピアンが、出生のはっきりしない、しかも山奥育ちという噂の怪しい娘を突然王宮に連れ帰ったのは紛れも無い事実であるため、王宮内では、カスピアンのことを、影で気狂い呼ばわりしている貴族達も存在する。
美しい竪琴の音色に魅せられ、セイラは音楽の女神であるエランティカの乙女の化身だと信じる者も多いため、王宮は二派に分裂している状態だ。同時に、父の国王エスタスがセイラの竪琴をいたく気に入っており、これまでどんな医者も薬も効果がなかった体調が改善してきている事も紛れも無い事実である。何れにせよ、周囲の注目が、いい意味でも悪い意味でもセイラに集中している。
カスピアンは、両手で広げたその艶やかな光沢が美しいドレスを見下ろし、初めてセイラを見た時のことを思い出す。
カスピアンはあの夜、気分転換を兼ねた夜狩りで山中にいた。遠くからかすかな竪琴の音色が聞こえ、音を頼りに湖畔にたどり着いたのだった。薄がりの中、月光と小さなランプの灯りに照らされ、ぼんやりと浮かび上がる竪琴を奏でる娘の姿。
奇しくもエランティカの花が咲く夜。伝説の通り、神秘的な光を放つエランティカの花が咲き乱れる闇夜の湖畔で、竪琴を奏でる娘がそこにいた。
目を凝らして見れば、純白の衣を身に纏い、腰まで届こうという長い漆黒の髪、そして、ほっそりと伸びた白い腕。たおやかな手の動きが紡ぎだす竪琴の音色は、この世のものとは思えないほど美しく、カスピアンの魂を魅了した。
まさに、音楽の女神、エランティカの乙女ではないか。
しばし我を忘れて聴き入っていた。音が止んだ時ハッと我に返り、急ぎ娘のところへ馬を駆けさせてみたが、あろうことか姿を見失ってしまう。その時の動揺と落胆は筆舌しがたいものだった。
湖畔にはあきらかに人が居た痕跡が残されていたため、幻ではなく間違いなく実在していると確信し、それから毎晩のように捜索へ出た。
しかし、湖畔の周辺をいくら探しても見つからず、念のため街で情報を集めさせてみたが一切手がかりがなく、日が経つに連れてカスピアンの苛立ちも募っていく。
あの娘が、伝説のエランティカの乙女なのか、この目で、この手で確かめたい。
竪琴の乙女を王宮に住まわせる準備を開始させたのも、鮮明な記憶に残るあの美しい乙女を、必ず手に入れたいという強い想いからだった。
やっと居所を突き止め、セイラを王宮へ連れ帰ったものの、歴史的にも前例のないカスピアンの行動に、周りが騒然とした。
山奥育ちで出生もはっきりしない異国人の娘が、カスピアンの招いた貴賓として王宮に滞在しているという事実は隠しようが無かった。竪琴の乙女を捜索していると知っていた父、国王エスタスが、セイラの竪琴に興味を示し、エティグス王国のルシア王子をもてなす茶会に連れてくるように命じた時、気は進まなかったが、父王の癒しになるだろうと思い了承した。セイラの美しい竪琴の音色は、病んでいる父王を深い安らぎの眠りに落とすほど優しく響き渡り、その場に居た者すべての心を打つものだった。
あの茶会で間近に見た、セイラが竪琴を抱く姿。
まさに可憐な幻の花、エランティカそのものだ。ベール越しに見えた、優雅な微笑みを浮かべたその横顔と、流れるように弦を滑る細く白い指。周りのすべては視界から消え失せ、神話の女神と見紛う清らかさを纏うセイラから、一瞬たりとも目が離せなかった。そしてまた、この世の物とは思えないほど神々しい音色に魅せられ、この魂を奪われてしまうのだ。
エイドリアンが、セイラを竪琴奏者として王宮に雇いこむことを提案したが、カスピアンは首を縦に振らなかった。
そのような形で王宮に留まらせることは、到底納得できない。
自分だけのものとして近くに置きたいからだ。
そうなると、選択肢は限られてくる。
最も身近に繋ぎ止めるには、妃にするということだ。
世の中の男どもは、気に入った娘を手に入れたければ、攫って妻にしてしまえばよいと言う。確かにこれが、最も単純で確実な方法だ。世継ぎ王子であるカスピアンは、気に入った娘がいれば、容易く愛人として、それこそいくらでも手に入れる事が出来る地位に立っていたが、逆に、妃を迎えることは容易ではない。王子であるカスピアンが妃を娶るには、父王の許しを得て、議会の過半数の同意が必要だ。
セイラを妃に迎えるという計画を実現させるには、それなりの根回しをする必要がある。
いずれ国王となるカスピアンの妃として求められる娘は、家柄、容姿、知性と人格、そのすべてが揃う必要があるが、其れ以前に難儀な問題は、セイラが全く従順でないことだ。
セイラは、竪琴を奏でている時を除けば、当初の予想に反し神秘的とは言い難い。カスピアンを目の前にして物怖じもせず、真っ直ぐに感情をぶつけてくる非常に変わった娘だった。
世継ぎ王子として腫れ物にさわるように育てられ、物心ついた頃からは、周りのものが機会あらば取り入ろうと近づいてくる。貴族の娘達は妃の座を狙い、事あるごとに自分の気を引こうと躍起になり、背後では女同士の醜い争いを繰り広げ続けていた。
全てが常に自分を軸に回っている。
そんな世界にいたカスピアンを、王子である以前にただの一介の男だと自覚させた娘。
自分を目の前にして、恐怖に怯え失神するか、気に入られようと機嫌を取ろうとするか、あるいは泣いてすがってくるかと思っていたが、そのどれでもなかった。セイラは、怒りに任せて食ってかかり、気に食わねば無視するという、反抗心を隠さない初めての人間だった。
女であれば喜ぶであろうと思い、美しい衣装や豪華な部屋を与えてみたが、喜ぶどころか、一刻も早く山奥の小人の家へ戻りたいと歯向かう。
即刻牢にぶち込み鞭打ちか、下手すれば首をはねられるようなことも、戸惑いもなく態度に出しあまつさえ言葉にもするという、全くもって、この手に余る娘だ。
この娘は単なる無知なのか。
まこと、無礼極まりない娘であることは間違いない。
だが……
カスピアンはひとつ、深いため息をついた。
あれは、不思議な娘。
あの、蜂蜜色の瞳を見ると、何故か胸がざわつく。
この自分を惑わす魔力でも持っているのか。
近づけば逃げる。捕らえようとする度に、するりとこの腕からすり抜けていく。
なぜ、あの娘は、女官達に向ける笑顔を、自分には向けないのか。
募る歯痒さと、やり場の無い苛立ちに甘んじるしかない自分。
この娘がいつか自分に服従し、思い通りになる様子を見たいという、この征服欲が、どういう感情から来るものか、今は自分でもよくわからない。
正妃の間へ移動させた後、ひどく怒っていたセイラの様子を見に行った、昨晩のことを思い出す。
静まり返った薄暗い正妃の間。
月光の差し込む大きなベッドの端で、セイラは静かに眠っていた。
横たわるセイラの姿に目を落とし、その清らかな姿にカスピアンは息を飲んだ。
この自分が側に居るとも知らず、無防備に深い眠りに落ちている。絹のように滑らかなその肌に触れても、深い眠りに落ちていたセイラは逃れようとしなかった。
もっと間近にその姿を見ようと、引き寄せられるように傍らに身を横たえた。
その体に手を伸ばし抱き寄せると、漆黒の髪が煌めく河のようにその細い肩をサラサラと流れ、カスピアンの腕に滑り落ちた。
ふわりと舞い上がった甘く優しい香り。
小鳥を抱いているような華奢な背中。美しい音色の竪琴を奏でる腕は力を加えれば折れてしまうほどほっそりとしていた。
突然感じた胸の疼きに戸惑いながら両腕にそっと力を込めると、身じろぎをしたセイラがもぞもぞと寝返りを打つ。顔を覗き込むと、羽のような睫毛が僅かに震え、コツン、と頭を自分の胸に預けて、そのまま再び、深い眠りに落ちていく。花びらのような唇に微かな微笑みが浮かぶのを見て、胸が怪しく騒いだ。
自分の腕の中の温もりから、何か尊い光が生まれるような気がした。
不思議な高揚感を感じながら、カスピアンは目を閉じたのだった。
無論その時はまさか、翌朝、耳をつんざくような悲鳴で目を覚ますことになるとは想像もしていなかったが。
カスピアンは今朝のことを思い出し、ひとり、苦笑いをする。
王子と共に朝を迎えたのが普通の娘ならば、恐れ多くも自分は王子のお手付きになったのだと、名誉ある事だと思うだろう。セイラであれば当然、怒るだろうとは予測はしていたものの、あの娘は、耳をつんざく悲鳴をあげ、真っ赤になり激怒し、あろうことかクッションで自分を強打してくるという蛮行に出た。
非力な小娘一人、力で説き伏せて無理矢理我が物にすることなど容易い。
その場で罪人の首を跳ねることさえ許される地位に立つ一国の王子だ。
だが、カスピアンはただ、真っ赤になって怒っている小娘を静かに抱きすくめた。
自分を恐れ、ぶるぶると小刻みに震えながらも、小さな背中をこちらに見せて尚も反抗する、決して意思を曲げない健気なこの娘を、果たしてどのように扱うべきかと思案しているうちに、女官達が入ってきたのだが。
朝食を摂りながら、相変わらずプリプリ怒った様子で黙々と食べたり飲んだりするセイラ。眠る姿は可憐な女神そのものなのにと、その変貌ぶりに可笑しくなる。
そうだ、自分の前で、ここまで自由に感情を表現し、真っ向から向かって来る人間は、これまで誰一人もいなかったのではないか。
身分も生まれも超えた意思の疎通がここにある。
セイラは、自分に対して一切偽りも計算もない、恐らく初めての人間だ。
その時、カスピアンの心の中で、一つの決意が生まれた。
やはり、この娘は誰にも渡さない。
誰が何を言おうと、自分のものにする。
天変地異が起ころうともこの決意は変わらないだろう。
この娘が欲しい。
はっきりとした自分の意思を確信し、即座にセイラに告げた。おまえを妃にする、と。
唖然とし顔色を変えたセイラ。
必ず、その身も心も我が物にすると、決めたのだ。
例え、セイラが泣こうと喚こうと、周りの連中がどれほど激しく異議を唱えようと、すべてねじふせてやると。
カスピアンはエイドリアンに目を向けた。
「大神官のロドリゲスを呼べ」
エイドリアンが足早に去っていくのを見ながら、カスピアンは今朝から胸に引っかかっている不快なざわめきを思い出した。
妃にすると告げた後、真っ青になったセイラが反論しようと後を追って来た。今までいつも、手を伸ばせば逃げ回っていたセイラが、初めて、自分のところへ駆け寄って来たことに気がついた。その手でマントを掴み、蜂蜜色の瞳を大きく見開いて自分を見上げたセイラの青ざめた顔を見た時、気がつけば抱き上げて口づけていた。自分の強い意思を、そしてどれだけ足掻いても逃れらないということを、その身を以て知らしめてやろうと思ったのは確かだ。
自分の思い通りにその唇を奪ってやったというのに、何故か心が激しくざわめいた。
なぜ、このような焦燥感が残っているのか。
しばらく考えてみて、やがてその理由が、セイラの唇から自分を拒否する言葉など聞きたくはなかったからだと気づき、愕然とする。
認めたくはなかった苦々しい事実に顔を歪めた。
なぜだ。
この自分が、そのような取るに足らないことを恐れるはずがないはずだろう。
拒否されたところで、何も変わりはしない。
セイラの意思など聞く必要もないのだ。
しばらくして大神官、ロドリゲスが神官数人を引き連れてやってきた。
「殿下、お呼びでしょうか」
初老の大神官、ロドリゲスは、父王エスタスの従兄にあたる。
カスピアンが背後の神官達を一瞥し、下がるように目で指示をすると、バルコニーにはロドリゲスとカスピアンの二人きりとなった。
「よほど重要なお話とみえますな」
白い髭を触り、柔和な笑みを浮かべたロドリゲスが、カスピアンの向かいのカウチに腰掛けた。
カスピアンは目の前のロドリゲスを見据え、単刀直入に意思を伝える。
「セイラに位を与える」
ロドリゲスが興味深そうに眉をあげ、ふむ、と頷いた。
「なるほど。それなりの位を与えれば、セイラ殿を妃に迎えても反対派を黙らせることが出来るということですな」
無論、国王の許可が必要ではあるが、ただ位を与えるだけではなく、妃に迎えることを前提にするならば、婚儀を執り行う大神官の同意も必要だ。
これまでも、戦で大きな活躍をした無名の兵士や、王室御用達の肖像画を描く絵描きがその才能を認められて貴族の位を与えられたことがある。何よりも、亡き母シルビアは、もともとは女官の一人であり、父王の強い望みで妃となったが、位の低い貴族であった母の親族は全員、婚姻の前に伯爵の位を与えられた。しかし、父王エスタスがもと女官のシルビアを正妃にしたため、不満に思う輩も多かった。病に倒れたということにはなっているが、実際のところ、母の死因は明らかではない。
「父王と同じいばらの道を行かれますか」
苦笑のようなため息をつくロドリゲス。
位の低い貴族家庭の出身で、王宮に仕える女官だった母の血を継ぐカスピアンが世継ぎ王子であることに反発している貴族達も少なくない中、山奥育ちと噂の異国娘を妃にするとなると、例え手続き上可能であっても、かえって根深い確執を生みかねない。
ロドリゲスはカスピアンをまっすぐに見つめながら、強い口調で進言する。
「決して正妃にセイラ殿を選んではなりません」
予測していた進言に、カスピアンは黙ってロドリゲスを見返す。
母シルビアのように、周りの妬みや恨みを買い、命を狙われる危険があるからだ。
「すでに、妃を娶り御子の一人も生まれていたら、問題にはならなかったでしょう。まずは、国の為に由緒ある家柄の姫君を妃に迎え、お世継ぎを生むことを優先せねばなりません。次期国王としての務めを果たせば、庶民の娘の一人や二人を愛人にしたところで不満に思う輩は出ないでしょう」
「そんな話は耳が腐るほど聞いておるわ!」
カスピアンが苛々した様子で髪を搔きあげ、ロドリゲスをジロリと睨んだ。
「俺は、欲しくない妃は要らんのだ!」
吐き捨てるように言うカスピアンに、ロドリゲスは怯むことなく、諭すように静かに繰り返す。
「なんとも、賢明な殿下らしくないお言葉ですな。セイラ殿のお命を守るには、他には方法がありませんぞ。正妃という地位が、どれほど難しいかはご存知でしょう。身分もない異国人であるセイラ殿を、更にお辛い立場に追い込むだけです。殿下は、ご自分が次期国王という立場をお忘れですか?一般庶民の結婚と、貴方の婚姻は全く別のものだとご存知でしょう」
その言葉にカスピアンは忌々しげに舌打ちをした。
国の有力貴族達の力関係のバランスは、王族との婚姻により、絶妙なバランスを取っている。好む好まざるに関係なく、国の平和と調和を守る為、不要な権力争いによる諍いを避ける為、複数の妃を娶るのは至極当たり前のことだ。事実、父王エスタスにも3人の妻がいた。
カスピアンも生まれながらの世継ぎ王子として帝王学を学び、複数の婚姻を結ぶことによる統治方法も常識と知っており、また、身分の低かった母が国王との婚姻により如何に苦しんだかも目の当たりにしてきていた。
母が亡くなり父王が病弱になった途端、世継ぎ王子の自分に取り入ろうと、国内貴族は己の娘を妃にと執拗に推してくる。近隣諸国からも王族同士の婚姻について打診が来ており、執務室に山積みされるこの手の手紙の量にカスピアンは辟易していた。
「殿下が、正妃の間をセイラ殿の仮住まいとして与えたと、宮殿では動揺が広がっております」
奥宮に複数ある世継ぎ王子の妃用の部屋で、王子の間と繋がっているのは正妃の間だけであるため、婚約もしていないセイラが入ったという事実は一夜にして宮殿に広まり、周囲を騒然とさせた。セイラの存在を好まぬ者がいることは疑う余地もない。あれだけ警備を厳しくしているにも関わらず、現に、搬入する荷物に毒針が見つかった。
だからこそ、何かが起こる前に、書類上だけでも正式に婚約し、婚約者として、更に厳重な警護をしけるように計らいたいと考えたのだ。
ただし、それが、そう簡単なことではないことは確かな事である。
セイラを危険に曝さないために、あえて複数の妃を娶り、正妃には、良家の娘か外国の王女を選ぶ。
理に叶う方法だ。
迷うほどの妥協ではないだろう。
それほど難しいことではないはずだと、頭では分かっていた。
「殿下、よく御考え下さい。私は貴方のお味方だということをお忘れなく」
苦悩に顔を歪めているカスピアンの肩に触れ、ロドリゲスはゆっくりと去っていった。
「小人夫婦によると、やはり、セイラ様は実の娘ではなく、湖畔に一人倒れていたところを助け匿っていたとのことでした。発見した時に身に纏っていたものがこちらです」
カスピアンは艶やかな光沢のある純白のドレスを受け取り、その繊細な作りと細部まで手の込んだ装飾の美しさに眉をしかめた。
「庶民が身につけるようなものではないな」
「はい。異国の方で、それなりの家柄の生まれだということは間違いないようです。小人夫婦の話だと、セイラ様ご自身も、なぜ湖畔に倒れていたか分からないようだったと」
「ふむ……」
カスピアンは頷いて、考え込むように腕組みをした。
何度かセイラに生まれについて問いただしたが、毎回黙り込み答えないので、親だという小人夫婦に真実を吐かせるようエイドリアンに指令を出していた。セイラ本人も何故、どのように異国からラベロア王国に来たのかわからないらしいという小人夫婦の話が真実であれば、セイラに記憶がないという可能性もあるのかもしれない。
カスピアンが、出生のはっきりしない、しかも山奥育ちという噂の怪しい娘を突然王宮に連れ帰ったのは紛れも無い事実であるため、王宮内では、カスピアンのことを、影で気狂い呼ばわりしている貴族達も存在する。
美しい竪琴の音色に魅せられ、セイラは音楽の女神であるエランティカの乙女の化身だと信じる者も多いため、王宮は二派に分裂している状態だ。同時に、父の国王エスタスがセイラの竪琴をいたく気に入っており、これまでどんな医者も薬も効果がなかった体調が改善してきている事も紛れも無い事実である。何れにせよ、周囲の注目が、いい意味でも悪い意味でもセイラに集中している。
カスピアンは、両手で広げたその艶やかな光沢が美しいドレスを見下ろし、初めてセイラを見た時のことを思い出す。
カスピアンはあの夜、気分転換を兼ねた夜狩りで山中にいた。遠くからかすかな竪琴の音色が聞こえ、音を頼りに湖畔にたどり着いたのだった。薄がりの中、月光と小さなランプの灯りに照らされ、ぼんやりと浮かび上がる竪琴を奏でる娘の姿。
奇しくもエランティカの花が咲く夜。伝説の通り、神秘的な光を放つエランティカの花が咲き乱れる闇夜の湖畔で、竪琴を奏でる娘がそこにいた。
目を凝らして見れば、純白の衣を身に纏い、腰まで届こうという長い漆黒の髪、そして、ほっそりと伸びた白い腕。たおやかな手の動きが紡ぎだす竪琴の音色は、この世のものとは思えないほど美しく、カスピアンの魂を魅了した。
まさに、音楽の女神、エランティカの乙女ではないか。
しばし我を忘れて聴き入っていた。音が止んだ時ハッと我に返り、急ぎ娘のところへ馬を駆けさせてみたが、あろうことか姿を見失ってしまう。その時の動揺と落胆は筆舌しがたいものだった。
湖畔にはあきらかに人が居た痕跡が残されていたため、幻ではなく間違いなく実在していると確信し、それから毎晩のように捜索へ出た。
しかし、湖畔の周辺をいくら探しても見つからず、念のため街で情報を集めさせてみたが一切手がかりがなく、日が経つに連れてカスピアンの苛立ちも募っていく。
あの娘が、伝説のエランティカの乙女なのか、この目で、この手で確かめたい。
竪琴の乙女を王宮に住まわせる準備を開始させたのも、鮮明な記憶に残るあの美しい乙女を、必ず手に入れたいという強い想いからだった。
やっと居所を突き止め、セイラを王宮へ連れ帰ったものの、歴史的にも前例のないカスピアンの行動に、周りが騒然とした。
山奥育ちで出生もはっきりしない異国人の娘が、カスピアンの招いた貴賓として王宮に滞在しているという事実は隠しようが無かった。竪琴の乙女を捜索していると知っていた父、国王エスタスが、セイラの竪琴に興味を示し、エティグス王国のルシア王子をもてなす茶会に連れてくるように命じた時、気は進まなかったが、父王の癒しになるだろうと思い了承した。セイラの美しい竪琴の音色は、病んでいる父王を深い安らぎの眠りに落とすほど優しく響き渡り、その場に居た者すべての心を打つものだった。
あの茶会で間近に見た、セイラが竪琴を抱く姿。
まさに可憐な幻の花、エランティカそのものだ。ベール越しに見えた、優雅な微笑みを浮かべたその横顔と、流れるように弦を滑る細く白い指。周りのすべては視界から消え失せ、神話の女神と見紛う清らかさを纏うセイラから、一瞬たりとも目が離せなかった。そしてまた、この世の物とは思えないほど神々しい音色に魅せられ、この魂を奪われてしまうのだ。
エイドリアンが、セイラを竪琴奏者として王宮に雇いこむことを提案したが、カスピアンは首を縦に振らなかった。
そのような形で王宮に留まらせることは、到底納得できない。
自分だけのものとして近くに置きたいからだ。
そうなると、選択肢は限られてくる。
最も身近に繋ぎ止めるには、妃にするということだ。
世の中の男どもは、気に入った娘を手に入れたければ、攫って妻にしてしまえばよいと言う。確かにこれが、最も単純で確実な方法だ。世継ぎ王子であるカスピアンは、気に入った娘がいれば、容易く愛人として、それこそいくらでも手に入れる事が出来る地位に立っていたが、逆に、妃を迎えることは容易ではない。王子であるカスピアンが妃を娶るには、父王の許しを得て、議会の過半数の同意が必要だ。
セイラを妃に迎えるという計画を実現させるには、それなりの根回しをする必要がある。
いずれ国王となるカスピアンの妃として求められる娘は、家柄、容姿、知性と人格、そのすべてが揃う必要があるが、其れ以前に難儀な問題は、セイラが全く従順でないことだ。
セイラは、竪琴を奏でている時を除けば、当初の予想に反し神秘的とは言い難い。カスピアンを目の前にして物怖じもせず、真っ直ぐに感情をぶつけてくる非常に変わった娘だった。
世継ぎ王子として腫れ物にさわるように育てられ、物心ついた頃からは、周りのものが機会あらば取り入ろうと近づいてくる。貴族の娘達は妃の座を狙い、事あるごとに自分の気を引こうと躍起になり、背後では女同士の醜い争いを繰り広げ続けていた。
全てが常に自分を軸に回っている。
そんな世界にいたカスピアンを、王子である以前にただの一介の男だと自覚させた娘。
自分を目の前にして、恐怖に怯え失神するか、気に入られようと機嫌を取ろうとするか、あるいは泣いてすがってくるかと思っていたが、そのどれでもなかった。セイラは、怒りに任せて食ってかかり、気に食わねば無視するという、反抗心を隠さない初めての人間だった。
女であれば喜ぶであろうと思い、美しい衣装や豪華な部屋を与えてみたが、喜ぶどころか、一刻も早く山奥の小人の家へ戻りたいと歯向かう。
即刻牢にぶち込み鞭打ちか、下手すれば首をはねられるようなことも、戸惑いもなく態度に出しあまつさえ言葉にもするという、全くもって、この手に余る娘だ。
この娘は単なる無知なのか。
まこと、無礼極まりない娘であることは間違いない。
だが……
カスピアンはひとつ、深いため息をついた。
あれは、不思議な娘。
あの、蜂蜜色の瞳を見ると、何故か胸がざわつく。
この自分を惑わす魔力でも持っているのか。
近づけば逃げる。捕らえようとする度に、するりとこの腕からすり抜けていく。
なぜ、あの娘は、女官達に向ける笑顔を、自分には向けないのか。
募る歯痒さと、やり場の無い苛立ちに甘んじるしかない自分。
この娘がいつか自分に服従し、思い通りになる様子を見たいという、この征服欲が、どういう感情から来るものか、今は自分でもよくわからない。
正妃の間へ移動させた後、ひどく怒っていたセイラの様子を見に行った、昨晩のことを思い出す。
静まり返った薄暗い正妃の間。
月光の差し込む大きなベッドの端で、セイラは静かに眠っていた。
横たわるセイラの姿に目を落とし、その清らかな姿にカスピアンは息を飲んだ。
この自分が側に居るとも知らず、無防備に深い眠りに落ちている。絹のように滑らかなその肌に触れても、深い眠りに落ちていたセイラは逃れようとしなかった。
もっと間近にその姿を見ようと、引き寄せられるように傍らに身を横たえた。
その体に手を伸ばし抱き寄せると、漆黒の髪が煌めく河のようにその細い肩をサラサラと流れ、カスピアンの腕に滑り落ちた。
ふわりと舞い上がった甘く優しい香り。
小鳥を抱いているような華奢な背中。美しい音色の竪琴を奏でる腕は力を加えれば折れてしまうほどほっそりとしていた。
突然感じた胸の疼きに戸惑いながら両腕にそっと力を込めると、身じろぎをしたセイラがもぞもぞと寝返りを打つ。顔を覗き込むと、羽のような睫毛が僅かに震え、コツン、と頭を自分の胸に預けて、そのまま再び、深い眠りに落ちていく。花びらのような唇に微かな微笑みが浮かぶのを見て、胸が怪しく騒いだ。
自分の腕の中の温もりから、何か尊い光が生まれるような気がした。
不思議な高揚感を感じながら、カスピアンは目を閉じたのだった。
無論その時はまさか、翌朝、耳をつんざくような悲鳴で目を覚ますことになるとは想像もしていなかったが。
カスピアンは今朝のことを思い出し、ひとり、苦笑いをする。
王子と共に朝を迎えたのが普通の娘ならば、恐れ多くも自分は王子のお手付きになったのだと、名誉ある事だと思うだろう。セイラであれば当然、怒るだろうとは予測はしていたものの、あの娘は、耳をつんざく悲鳴をあげ、真っ赤になり激怒し、あろうことかクッションで自分を強打してくるという蛮行に出た。
非力な小娘一人、力で説き伏せて無理矢理我が物にすることなど容易い。
その場で罪人の首を跳ねることさえ許される地位に立つ一国の王子だ。
だが、カスピアンはただ、真っ赤になって怒っている小娘を静かに抱きすくめた。
自分を恐れ、ぶるぶると小刻みに震えながらも、小さな背中をこちらに見せて尚も反抗する、決して意思を曲げない健気なこの娘を、果たしてどのように扱うべきかと思案しているうちに、女官達が入ってきたのだが。
朝食を摂りながら、相変わらずプリプリ怒った様子で黙々と食べたり飲んだりするセイラ。眠る姿は可憐な女神そのものなのにと、その変貌ぶりに可笑しくなる。
そうだ、自分の前で、ここまで自由に感情を表現し、真っ向から向かって来る人間は、これまで誰一人もいなかったのではないか。
身分も生まれも超えた意思の疎通がここにある。
セイラは、自分に対して一切偽りも計算もない、恐らく初めての人間だ。
その時、カスピアンの心の中で、一つの決意が生まれた。
やはり、この娘は誰にも渡さない。
誰が何を言おうと、自分のものにする。
天変地異が起ころうともこの決意は変わらないだろう。
この娘が欲しい。
はっきりとした自分の意思を確信し、即座にセイラに告げた。おまえを妃にする、と。
唖然とし顔色を変えたセイラ。
必ず、その身も心も我が物にすると、決めたのだ。
例え、セイラが泣こうと喚こうと、周りの連中がどれほど激しく異議を唱えようと、すべてねじふせてやると。
カスピアンはエイドリアンに目を向けた。
「大神官のロドリゲスを呼べ」
エイドリアンが足早に去っていくのを見ながら、カスピアンは今朝から胸に引っかかっている不快なざわめきを思い出した。
妃にすると告げた後、真っ青になったセイラが反論しようと後を追って来た。今までいつも、手を伸ばせば逃げ回っていたセイラが、初めて、自分のところへ駆け寄って来たことに気がついた。その手でマントを掴み、蜂蜜色の瞳を大きく見開いて自分を見上げたセイラの青ざめた顔を見た時、気がつけば抱き上げて口づけていた。自分の強い意思を、そしてどれだけ足掻いても逃れらないということを、その身を以て知らしめてやろうと思ったのは確かだ。
自分の思い通りにその唇を奪ってやったというのに、何故か心が激しくざわめいた。
なぜ、このような焦燥感が残っているのか。
しばらく考えてみて、やがてその理由が、セイラの唇から自分を拒否する言葉など聞きたくはなかったからだと気づき、愕然とする。
認めたくはなかった苦々しい事実に顔を歪めた。
なぜだ。
この自分が、そのような取るに足らないことを恐れるはずがないはずだろう。
拒否されたところで、何も変わりはしない。
セイラの意思など聞く必要もないのだ。
しばらくして大神官、ロドリゲスが神官数人を引き連れてやってきた。
「殿下、お呼びでしょうか」
初老の大神官、ロドリゲスは、父王エスタスの従兄にあたる。
カスピアンが背後の神官達を一瞥し、下がるように目で指示をすると、バルコニーにはロドリゲスとカスピアンの二人きりとなった。
「よほど重要なお話とみえますな」
白い髭を触り、柔和な笑みを浮かべたロドリゲスが、カスピアンの向かいのカウチに腰掛けた。
カスピアンは目の前のロドリゲスを見据え、単刀直入に意思を伝える。
「セイラに位を与える」
ロドリゲスが興味深そうに眉をあげ、ふむ、と頷いた。
「なるほど。それなりの位を与えれば、セイラ殿を妃に迎えても反対派を黙らせることが出来るということですな」
無論、国王の許可が必要ではあるが、ただ位を与えるだけではなく、妃に迎えることを前提にするならば、婚儀を執り行う大神官の同意も必要だ。
これまでも、戦で大きな活躍をした無名の兵士や、王室御用達の肖像画を描く絵描きがその才能を認められて貴族の位を与えられたことがある。何よりも、亡き母シルビアは、もともとは女官の一人であり、父王の強い望みで妃となったが、位の低い貴族であった母の親族は全員、婚姻の前に伯爵の位を与えられた。しかし、父王エスタスがもと女官のシルビアを正妃にしたため、不満に思う輩も多かった。病に倒れたということにはなっているが、実際のところ、母の死因は明らかではない。
「父王と同じいばらの道を行かれますか」
苦笑のようなため息をつくロドリゲス。
位の低い貴族家庭の出身で、王宮に仕える女官だった母の血を継ぐカスピアンが世継ぎ王子であることに反発している貴族達も少なくない中、山奥育ちと噂の異国娘を妃にするとなると、例え手続き上可能であっても、かえって根深い確執を生みかねない。
ロドリゲスはカスピアンをまっすぐに見つめながら、強い口調で進言する。
「決して正妃にセイラ殿を選んではなりません」
予測していた進言に、カスピアンは黙ってロドリゲスを見返す。
母シルビアのように、周りの妬みや恨みを買い、命を狙われる危険があるからだ。
「すでに、妃を娶り御子の一人も生まれていたら、問題にはならなかったでしょう。まずは、国の為に由緒ある家柄の姫君を妃に迎え、お世継ぎを生むことを優先せねばなりません。次期国王としての務めを果たせば、庶民の娘の一人や二人を愛人にしたところで不満に思う輩は出ないでしょう」
「そんな話は耳が腐るほど聞いておるわ!」
カスピアンが苛々した様子で髪を搔きあげ、ロドリゲスをジロリと睨んだ。
「俺は、欲しくない妃は要らんのだ!」
吐き捨てるように言うカスピアンに、ロドリゲスは怯むことなく、諭すように静かに繰り返す。
「なんとも、賢明な殿下らしくないお言葉ですな。セイラ殿のお命を守るには、他には方法がありませんぞ。正妃という地位が、どれほど難しいかはご存知でしょう。身分もない異国人であるセイラ殿を、更にお辛い立場に追い込むだけです。殿下は、ご自分が次期国王という立場をお忘れですか?一般庶民の結婚と、貴方の婚姻は全く別のものだとご存知でしょう」
その言葉にカスピアンは忌々しげに舌打ちをした。
国の有力貴族達の力関係のバランスは、王族との婚姻により、絶妙なバランスを取っている。好む好まざるに関係なく、国の平和と調和を守る為、不要な権力争いによる諍いを避ける為、複数の妃を娶るのは至極当たり前のことだ。事実、父王エスタスにも3人の妻がいた。
カスピアンも生まれながらの世継ぎ王子として帝王学を学び、複数の婚姻を結ぶことによる統治方法も常識と知っており、また、身分の低かった母が国王との婚姻により如何に苦しんだかも目の当たりにしてきていた。
母が亡くなり父王が病弱になった途端、世継ぎ王子の自分に取り入ろうと、国内貴族は己の娘を妃にと執拗に推してくる。近隣諸国からも王族同士の婚姻について打診が来ており、執務室に山積みされるこの手の手紙の量にカスピアンは辟易していた。
「殿下が、正妃の間をセイラ殿の仮住まいとして与えたと、宮殿では動揺が広がっております」
奥宮に複数ある世継ぎ王子の妃用の部屋で、王子の間と繋がっているのは正妃の間だけであるため、婚約もしていないセイラが入ったという事実は一夜にして宮殿に広まり、周囲を騒然とさせた。セイラの存在を好まぬ者がいることは疑う余地もない。あれだけ警備を厳しくしているにも関わらず、現に、搬入する荷物に毒針が見つかった。
だからこそ、何かが起こる前に、書類上だけでも正式に婚約し、婚約者として、更に厳重な警護をしけるように計らいたいと考えたのだ。
ただし、それが、そう簡単なことではないことは確かな事である。
セイラを危険に曝さないために、あえて複数の妃を娶り、正妃には、良家の娘か外国の王女を選ぶ。
理に叶う方法だ。
迷うほどの妥協ではないだろう。
それほど難しいことではないはずだと、頭では分かっていた。
「殿下、よく御考え下さい。私は貴方のお味方だということをお忘れなく」
苦悩に顔を歪めているカスピアンの肩に触れ、ロドリゲスはゆっくりと去っていった。
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