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二百二十九話 お題:耳寄り 縛り:読譜、見縊る
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ギタリストをやっている友人の話である。ある時彼は奇妙な仕事を依頼されたという。
「楽譜を渡されて、この曲をギターで弾いているところを目の前で見たいって言われたんだけど、その楽譜がやばかったんだよ」
楽譜は前衛芸術じみた奇怪な形をしており、演奏どころか読譜することすら不可能だと思ったそうだ。
「断ろうと思ったんだけど、向こうが期日は定めないし料金については言い値を支払う、とか言ってくるからさぁ。しょうがないから楽譜のコピー取らせてもらって楽譜の解読から始めたんだよ」
解読を試みるうちに、問題の楽譜はバラバラにした普通の楽譜を並べ替えて作られたものだということがわかった。彼は楽譜を全て分解して組み立て直し、とうとう一つの曲を導き出した。
「で、演奏してみたらメチャメチャ喜ばれたんだよ。あなたのことを見縊るつもりはなかったが、それでも私はあなたのことを過小評価していた、どうか許してほしい、なんて言われちゃってさ」
彼に仕事を依頼してきた人物は、料金の他に是非耳寄りな情報をあなたに教えたい、と言ってきたという。
「一体どんな情報ですかって聞いてみたら」
あなたは今日からきっかり半年後に左手の指を全部失うから生活の手段を考えておいた方がいいですよ――そう言われたそうだ。なお彼はギター以外で生計を立てることは考えていないという。
「楽譜を渡されて、この曲をギターで弾いているところを目の前で見たいって言われたんだけど、その楽譜がやばかったんだよ」
楽譜は前衛芸術じみた奇怪な形をしており、演奏どころか読譜することすら不可能だと思ったそうだ。
「断ろうと思ったんだけど、向こうが期日は定めないし料金については言い値を支払う、とか言ってくるからさぁ。しょうがないから楽譜のコピー取らせてもらって楽譜の解読から始めたんだよ」
解読を試みるうちに、問題の楽譜はバラバラにした普通の楽譜を並べ替えて作られたものだということがわかった。彼は楽譜を全て分解して組み立て直し、とうとう一つの曲を導き出した。
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