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二百二十五話 お題:来駕 縛り:キャンプ、感覚器官、志学
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料理教室で知り合った男性の話である。
「俺の地元では子供が志学になると成人の儀式をやらせるんだ。まぁ儀式って言ってもキャンプみたいなもんでさ。指定された山を登ってテント張って一晩山の中ですごすだけだから、大したことはないはずなんだけど」
彼はその儀式の最中に、命を落としそうになったそうだ。
「山の中を歩いてる時に生まれて初めての感覚に襲われたんだ。こう、なんていうか全身の感覚器官が、俺を殺すものがすぐ側まで迫ってるって警告してるみたいな。だから咄嗟にその場に倒れ込んだんだよ。そしたら」
突然彼の背後の木が倒れたのだという。木はちょうど彼が立った時の首の高さで切断されており、断面は不自然なほど滑らかだった。
「倒れ込まなかったら首が落ちて死んでただろうな。それで家に帰ってそのことを親に話したら、折角神様がお前を選んでくれたのにどうして連れていってもらわなかったんだ! って泣かれてさ」
彼の両親曰く、儀式で登る山には神様がおり、その神様はごく稀に儀式に参加する子供達の中から気に入った子供を選び、連れていくとのことだった。
「連れていくにしてもやり方があるだろうって思ったよ……まぁとにかく神様に選ばれるってのは名誉なことらしいんだわ。それに神様に選ばれた子の家には色々といいことが起こるらしいしな」
なお彼は両親から事あるごとに、
「お前があの時ちゃんと連れていってもらってれば神様が我が家にお越しになって幸福を授けてくださったのに」
と言われるのが嫌で実家とはほぼ縁を切っているという。
「俺の地元では子供が志学になると成人の儀式をやらせるんだ。まぁ儀式って言ってもキャンプみたいなもんでさ。指定された山を登ってテント張って一晩山の中ですごすだけだから、大したことはないはずなんだけど」
彼はその儀式の最中に、命を落としそうになったそうだ。
「山の中を歩いてる時に生まれて初めての感覚に襲われたんだ。こう、なんていうか全身の感覚器官が、俺を殺すものがすぐ側まで迫ってるって警告してるみたいな。だから咄嗟にその場に倒れ込んだんだよ。そしたら」
突然彼の背後の木が倒れたのだという。木はちょうど彼が立った時の首の高さで切断されており、断面は不自然なほど滑らかだった。
「倒れ込まなかったら首が落ちて死んでただろうな。それで家に帰ってそのことを親に話したら、折角神様がお前を選んでくれたのにどうして連れていってもらわなかったんだ! って泣かれてさ」
彼の両親曰く、儀式で登る山には神様がおり、その神様はごく稀に儀式に参加する子供達の中から気に入った子供を選び、連れていくとのことだった。
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なお彼は両親から事あるごとに、
「お前があの時ちゃんと連れていってもらってれば神様が我が家にお越しになって幸福を授けてくださったのに」
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