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百六十五話 お題:馬の骨 縛り:山里、波乗り、拝聴
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祖父と祖母の馴れ初めの話である。祖母と話している時に何気なく、
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんってどうやって出会ったの?」
と聞いてみたところ、祖母は照れるばかりで中々話してくれなかったため、冗談めかして、
「拝聴いたしますから、どうか話してくれませんか?」
と言ったところ、祖母は仕方ないねぇと折れて話をしてくれた。
「お祖父さんと初めて会ったのは、家の側の川だったんだよ」
祖母が住んでいる村は今でこそ多少ましになったが、昔はそれこそ山里と呼ぶしかないような土地だったという。祖母は当時家の側の川によく洗濯をしに行っていたのだが、ある時川に流れ込んできた土石流に巻き込まれそうになった。
「その時助けてくれたのが、お祖父さんだったんだよ。こう、波乗りみたいに土石流の流れに乗ってきてね、飲み込まれそうになってた私をパッと抱き抱えて逃げてくれたのよ。その時にはもう絶対この人のお嫁さんになるんだって決めてたねぇ」
なお祖父はどうも素性のはっきりしない人で、祖母は結婚を認めてもらうまで随分苦労したそうだが、結婚させてくれないなら首をくくって死ぬ、とまで言って押し切ったという。それにしても話を聞く限りどうも祖父は人間ではないような気がしたので、そのことについて祖母に聞いてみると、
「いいじゃないの。人間じゃなくたって。昔話でもあるじゃない、鶴がお嫁さんに来たりとか。それと一緒よ」
これも恋は盲目というやつなのだろうか、と思い私はそれ以上何も言えなくなった。
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんってどうやって出会ったの?」
と聞いてみたところ、祖母は照れるばかりで中々話してくれなかったため、冗談めかして、
「拝聴いたしますから、どうか話してくれませんか?」
と言ったところ、祖母は仕方ないねぇと折れて話をしてくれた。
「お祖父さんと初めて会ったのは、家の側の川だったんだよ」
祖母が住んでいる村は今でこそ多少ましになったが、昔はそれこそ山里と呼ぶしかないような土地だったという。祖母は当時家の側の川によく洗濯をしに行っていたのだが、ある時川に流れ込んできた土石流に巻き込まれそうになった。
「その時助けてくれたのが、お祖父さんだったんだよ。こう、波乗りみたいに土石流の流れに乗ってきてね、飲み込まれそうになってた私をパッと抱き抱えて逃げてくれたのよ。その時にはもう絶対この人のお嫁さんになるんだって決めてたねぇ」
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「いいじゃないの。人間じゃなくたって。昔話でもあるじゃない、鶴がお嫁さんに来たりとか。それと一緒よ」
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