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百二十一話 お題:幅広 縛り:乳母日傘、艫
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地元の友人から聞いた話である。彼はいいところのお嬢さんと結婚し、今子供を育てているのだが、
「嫁と嫁の実家が息子を甘やかしすぎるんだよ。乳母日傘って言うのかな。もう息子のためならなんでもしてやるって感じでさ。正直よくないと思うんだ」
彼の息子は三歳になるが、他の子と比べて明らかに臆病で、自分でできることも少ないという。
「テントウムシすら怖がって泣き出すくらいだからさすがに心配でさ。こうなったら俺は俺で息子のためになることをしようと思って」
まずは自然に触れさせようと、子供と一緒に船に乗り、船を降りたら今度は有名な山に登る計画を立てたのだという。奥さんや奥さんの実家には猛反対されたそうだが、彼はそれを強行した。
「船に乗ってデッキから海を眺めてたら、息子はやっぱり怖がってたんだけど、怖がり方がちょっと普段と違っててさ」
息子は船の艫の側の海面を指さして、あれ怖い、あれ怖い、と繰り返し言っていた。見ると海面に幅の広い巨大な影があり、まさかクジラか、と彼が思っていると、
「幅10メートルくらいかなぁ、そのくらいある人の手が海から出てきてさ。すぐに引っこみはしたんだけど、俺はびっくりしちゃってしばらく動けなかったんだ。でも息子は出てきた手を見て面白そうに笑っててさ。あぁ、こいつ俺より勇気があるじゃないかって思えて、なんだかすごく嬉しかったんだ」
それから彼は長い間息子の将来が楽しみだ、きっと大物になるぞ、などと言い続けていた。どうやら彼は奥さんや奥さんの両親とは違うタイプの親馬鹿のようである。
「嫁と嫁の実家が息子を甘やかしすぎるんだよ。乳母日傘って言うのかな。もう息子のためならなんでもしてやるって感じでさ。正直よくないと思うんだ」
彼の息子は三歳になるが、他の子と比べて明らかに臆病で、自分でできることも少ないという。
「テントウムシすら怖がって泣き出すくらいだからさすがに心配でさ。こうなったら俺は俺で息子のためになることをしようと思って」
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