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六十九話 お題:休職 縛り:委曲、農事、几帳面、漢検、トランクス
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漢検の受験の際知り合った男の話である。彼は几帳面で、ちょっとしたことに関しても委曲を尽くした説明をしてくれるような男なのだが、何かにつけて細かいことにこだわるその性格のせいで職場の大雑把な仕事の進め方に馴染めず、精神的に参ってしまって休職することになった。彼は農家をやっている実家に戻り、そこで農事を手伝うことになったのだが、以前の職場よりも更に大雑把になった仕事の進め方に彼は日に日にストレスを溜めていき、ある日とうとうそれが爆発した。彼はまず自分の身辺を完璧に整理し、精神科に通院していた時にもらって飲まずにためておいた睡眠薬を両親に飲ませ、完全に眠った状態で絞殺した。そして彼の両親が日頃最も親しくしていた彼の父方の叔父に父と母を殺したので申し訳ありませんが後のことは頼みます、と連絡すると警察を呼び、駆けつけた警官に自首をしたという。自首した後裁判が行われたが彼は非常に協力的な態度で心証もよく、刑務所でも常に模範囚だったため通常よりかなり短い期間で仮釈放となった。なお彼はどうして両親を殺害しようと思ったのか、と聞かれた際、
「毎日両親のあまりに雑な仕事を見せられてストレスが溜まり続けたところに母が間違った柄のトランクスを買ってきたので我慢できなくなりました。僕は白地に黒の格子柄のトランクスでなければ絶対に駄目なんです」
と答えたそうだ。私は何度か面会に行ったが、刑務所の生活はどうだい、と聞いた時に彼が、全て管理されていて中々心地がいいがトランクスの柄がどうしようもないと言ってきて、思わず呆れてしまったことが印象に残っている。
「毎日両親のあまりに雑な仕事を見せられてストレスが溜まり続けたところに母が間違った柄のトランクスを買ってきたので我慢できなくなりました。僕は白地に黒の格子柄のトランクスでなければ絶対に駄目なんです」
と答えたそうだ。私は何度か面会に行ったが、刑務所の生活はどうだい、と聞いた時に彼が、全て管理されていて中々心地がいいがトランクスの柄がどうしようもないと言ってきて、思わず呆れてしまったことが印象に残っている。
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