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六十五話 お題:私闘 縛り:概算、一縷、点

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 知人の男性から聞いた話である。彼はとあるテレビゲームが得意で、全国大会に出たりもしているのだが、ある時よく対戦するプレイヤーと喧嘩になった。
「前から気に入らなかったからちょっと煽ってやったらゲームでボコボコにしてやるって言ってきたんで、俺も望むところだって言って対戦を始めたんだよ」
 対戦が始まると戦況はすぐに動いた。普段であればもっと膠着するはずの勝負は相手が冷静さを欠いているのか、一気に彼の有利な方に傾いていった。彼が自分の勝てる確率を八割ほどか、と概算すると、相手がこの状況を覆すべく、一縷の望みをかけて攻勢をしかけてきた。
「といっても対処できるレベルだったからさ、これで勝ったなと思ってたら」
 突然視界を大量の黒い点が埋め尽くしたのだという。ゲーム画面はまともに見えず、動揺もあって彼はあっさりと逆転され敗北した。ゲームが終わると無数の点はあとかたもなく消え、彼はしばし呆然としていたのだが、ふと亡くなった彼の祖母が生前彼に言ったことを思い出した。
「自分から喧嘩をしちゃいけない、もし婆ちゃんが死んだあとにやったらお前に罰を当ててやるからねって言われたんだよ。これが罰なのかなぁって思ってさ」
 その後彼は対戦したプレイヤーに謝り、以来ゲーム以外のことでも一緒に遊ぶようになったという。
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