上 下
51 / 302

五十話 お題:働き口 縛り:晩期

しおりを挟む
 友人の女性の話である。彼女は一時期占い師として働いていたことがあるそうだ。
「職場の先輩ともめて辞めたのはいいんだけど、中々次のところが決まらなくって。それで求人広告を眺めてたら占い師になりたい人募集みたいな広告があってさ、半分ヤケで応募したんだよね」
 広告に載っていた番号に電話をすると、中年の女性の声でとりあえず会って話をしたいから履歴書を持って面接に来てくれと言われた。
「ずいぶん話が早いなぁと思ったけど、面接してもらえるだけありがたいと思って行ってみたんだ」
 電話で教えられた住所はマンションの一室のもので、彼女は若干不安に思いながらその部屋を訪ねると、電話と同じ声の中年の女性が出迎えてくれたそうだ。
「占い師って言っても見た目は普通のおばさんでね。ただ話してる時ふっと視線が外れるのがちょっと気になったんだけど。でも、やる気があるなら是非働いてくれって言われて、仕事も欲しかったし面白そうだからやってみることにしたの」
 次の日から彼女は占い師の女性の手伝いをしつつ、占いの勉強を始めた。勉強は思っていたのと違い、占うというより占っているように見せかけるようなものばかりだったという。
「とにかくお客さんの反応を見て、お客さんの望む答えを返していくことが大事だって言われて。それでいいのかなぁって思ったんだけど、折角見つけた職場をすぐなくすのも嫌だったから」
 やがて彼女は女性からお墨つきをもらい、一人でお客さんのことを占うようになった。最初は一度占ってそれっきり、ということばかりだったが、段々と繰り返し来てくれるお客さんが増え、それに伴って収入も増えていった。
「占いって儲かるんだぁって思ってね。ただちゃんとした勉強もしてないのにいいのかっていう後ろめたさは常にあったなぁ」
 占い師の仕事の晩期に、彼女はあることに気づいた。
「占いがやけに当たるようになってたのね。占ってるうちに本当に実力がついたのかと思ったんだけどそうじゃなかった。現実のことを占いで当ててるんじゃなくて、現実が私の占いの通りになってたの」
 思い込みではないか、と私が言うと、彼女は、
「あるお客さんが子供が病気でどうしたらいいかわからないって言ってて、私がお子さんの病気はよくなりますよって占ったら本当に治っちゃったの。別のお客さんは大嫌いなやつがいるんだけどいなくならないだろうかって言ってきたから、私がいなくなりますよって占ったらその人が死んだってことを笑顔で報告されてね。そんなことが何度も何度も続いて、評判が勝手にどんどん上がっていって、もらえるお金もどんどん増えていって、ある時自分のやってることはなんなんだろうって考えちゃって、それでもう続けられないなってなったの」
 占い師の女性に辞めることを伝えたところ、あなたには占い師として最高の能力があるのにそれを捨てるのかと鬼のような形相でつめよられたが、彼女は女性のことを突き飛ばしてその場から逃げたそうだ。
「それがどんなにすごいものでも、身の丈に合わない能力を持っちゃったら結局不幸になるんだってよくわかったよ」
 彼女は今結婚し、専業主婦として静かに暮らしているそうだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

松本先生のハードスパンキング パート4

バンビーノ
BL
 ほどなく3年生は家庭訪問で親子面談をさせられることになりました。やって来るのは学年主任の松本先生です。嫌な予感がしましたが、逃げられません。先生は真っ先にわが家を訪問しました。都立高は内申重視なので、母親は学校での僕の様子を知りたがりました。 「他の先生からも聞きましたが、授業態度ははっきり言ってよくない印象です。忘れ物とか宿題をやってこないとか、遅刻とか。2学期が特に大事なので、先日も厳しく叱りました」  母は絶句しましたが、すぐに平静を装い何があったのかと聞きました。 「けがをさせるような体罰はしません。本人も納得しているし、躾の範囲だとご理解ください」 「もちろんです。でもひっぱたくときは、なるべくお尻にしてやってください」  松本先生は大きくうなずきました。  理科だけはちゃんとやらないと。でも染みついた怠け癖はすぐには直りません。5月の連休明けでした。理科の授業で僕は松本先生に指名され、教室の前の黒板に宿題の答えを書くように言われました。僕は忘れたと素直に言えなくて、ノートを持って黒板のところへ行きました。でも答えがすぐ思いつくはずもなく、すっかり動揺していました。松本先生は僕に近づいてくると黙ってノートを取り上げました。宿題はおろか板書もろくに取っていないことがばれました。先生は前の席の女子生徒のノートも取り上げました。先生の表情が穏やかになりました。 「きれいなノートだ」  松本先生は女子生徒にノートを返すと、今度は険しい顔で僕にノートを突き返しました。僕はお仕置きを覚悟しました。 「お母さんの前で約束したよな」  僕は前の黒板の縁に両手をつかされました。松本先生は教室の横の棚から卓球のラケットを持ってきて、僕のすぐ右横に立ちました。その卓球のラケットは素振り用で、普通のラケットよりずっと重いものでした。今度はこれでひっぱたかれるのか。僕は前回よりは素直にお仕置きの姿勢をとりました。松本先生は左手で僕の腰のあたりを押さえつけました。パーン! 「痛え」。ラケットはお尻にズシンときて、僕は反射的にお尻に右手のひらを当てていました。「熱っ」。   

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

“5分”で読めるお仕置きストーリー

ロアケーキ
大衆娯楽
休憩時間に、家事の合間に、そんな“スキマ時間”で読めるお話をイメージしました🌟 基本的に、それぞれが“1話完結”です。 甘いものから厳し目のものまで投稿する予定なので、時間潰しによろしければ🎂

ロリっ子がおじさんに種付けされる話

オニオン太郎
大衆娯楽
なろうにも投稿した奴です

おむつオナニーやりかた

rtokpr
エッセイ・ノンフィクション
おむつオナニーのやりかたです

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

処理中です...