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四十七話 お題:精神分析 縛り:レフレックス、日中、農機具、進取

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 子供の頃お世話になった男性の話である。彼は当時まだ二十歳そこそこで、僕の家の近所の農家で働いていた。その農家とは家同士のつきあいがあり、頻繁におすそわけをし合う程度の関係だったのだが、ある日母親からいただきものの林檎を持っていってちょうだいと頼まれ、その農家に行ったところ彼に声をかけられた。
「お手伝いかい、えらいね」
 彼の訛りのない綺麗な発音が珍しかったこともあり、それ以来僕は彼を見かける度に話をするようになった。彼は日中は農家で働き、夜は農業の技術について勉強しているのだと言った。非常に博識で機械の知識もあり、農機具の整備も彼がしているという。また当時僕が興味を持ち出したカメラについても詳しく、一眼レフのレフがレフレックスの略だということを教えてくれた人だった。進取の気性があるのか見かける時は大体忙しそうにしており、それでも僕の姿を見るとわざわざ手を止めて話をしてくれた。彼は僕にとっていわゆる理想のお兄さんだったのだが、ある日突然、彼は逮捕されてしまった。ニュースによると彼は山の中に小屋を建て、そこに家出中の子供達を連れてきて監禁していたらしい。取り調べの際、どうして子供達を監禁したのか聞かれると彼は、
「人間を家畜として飼育してどういった有効利用の方法があるか調べたかった」
 と答えたという。彼が逮捕された後、何人もの精神科医が、彼に対して行った精神分析の結果だとして好き勝手なことを言っていたが、納得できるものは一つもなかったし、そもそも納得などしたくなかった。僕はどうしても、彼の見せてくれた優しさが全て嘘だったとは思いたくないのだ。
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