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四十話 お題:相続 縛り:安泰、顕職、校務、年式
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大学で受け持っている学生から聞いた話である。彼の祖父は名門中学の校長という顕職に就き、熱心に校務に励む立派な人だったそうだ。しかし生活が安泰だったにも関わらず、いつも寂しげで、何か人に言えない不幸を抱えているような様子だったという。
「父も僕も、いや、祖父の周りの人は一度は何か悩みごとがあるんですかと聞いてみたことがあるでしょうね。祖父は本当に人に好かれる人でしたから」
しかし彼が何度聞いても、祖父は静かに微笑んで大丈夫だ、何も心配なことはないよ、と言うだけだったという。彼が二十歳になる前に祖父は亡くなり、遺品を整理しているとひどく古い年式のカメラとそれで撮ったらしい写真が出てきた。それらは祖父の私室に隠すようにしまわれており、家族全員で写真の内容を確認すると、そこには信じ難いものが写っていた。
「全て人が亡くなる瞬間の写真だったんですよ。それも祖父と、祖父の親しい人達のものでした」
写真の中には彼が死ぬ瞬間のものもあったという。
「その場にいた全員が納得したと思いますよ。あぁ、祖父はこれを撮ってしまったから、これを撮ったことを誰にも言えなかったから、あんなに寂しそうだったんだなって」
そう言う彼はひどく寂しげに見えた。きっと彼の祖父も、こんな表情をしていたに違いない。
「父も僕も、いや、祖父の周りの人は一度は何か悩みごとがあるんですかと聞いてみたことがあるでしょうね。祖父は本当に人に好かれる人でしたから」
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