文明トカゲ

ペン牛

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三 雷鳴の猫

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 言葉が聞こえる、のではなく頭の中に響く、という異様な感覚。だが、僕はどうしてかその感覚に覚えがあるような気がした。
(これは――まさか、トカゲ? よりにもよって、こんな時に!!)
 まずは姿を確認しなければならない。あるいは目に見えないとしても、なんらかの異常を見つけられれば――
『これ、人間よ。トカゲとはにゃんだ、トカゲとは。せっかく余がこうやって人間が大好きだという猫の姿を取っておるというのに』
(……は? 猫?)
 一体どういうことだ。というか、今僕の頭の中で、トカゲとの会話が成立していなかったか?
『ほれほれ、人間。今お前の足元にいるにゃ。さっさとこっちを見るがいいにゃ』
 恐る恐る、僕は足元を見た。そこには確かに一匹の猫がいた。長い茶色の毛の猫で、どことなく立派というか、ただの猫ではないような風格がある。その猫はエジプト座りと呼ばれる座り方で座り、僕の方をまっすぐに見つめていた。
 僕はその猫を見つめ返しつつ、心の中で思った。
(……本当に、お前が頭の中で聞こえる声の主なのか)
『そうとも。余はお前達人間より余程位の高い存在であるからして、きちんと敬ってもらわなければ困るにゃ。というかそもそも余が聞いた限りではお前たちはただの猫にすら傅き、やりたい放題させているという話ではにゃいか。それにしても文献に書いてあった猫の姿を取った際に人間に好かれる話し方というのは実に煩わしいにゃ。本当にこれで合っているのかにゃ?』
「い――」
 思わず声に出して反論しそうになってしまい、慌てて口を噤む。すぐ側には梓がいるのだ。と、梓の方を見ると、
「――可愛い」
 梓は目をキラキラさせ、なんの躊躇もなく――恐らく猫の姿をしたトカゲ――を抱き上げていた。
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