文明トカゲ

ペン牛

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三 雷鳴の猫

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「あとは下だね。ベッドから足を下ろしてくれる?」
「……わかった」
 言われた通りにベッドから足を下ろすと、梓は僕に体を密着させて腰に手を回した。
「腰、浮かせられる?」
「できるよ」
 僕が腰を浮かせると、梓は僕のパジャマのズボンをずりおろした。梓はそれを手早く畳み、薄手のホワイトデニムを履かせてくれた。
「あとは上まで上げなくちゃね。立てる? あ、そうだ、ベルトも通しちゃおっか」
「……うん」
 本当に何から何まで、という感じだ。僕と梓は友達だが、それでもこんなに色んなことを手伝ってもらっては流石に申し訳なさが募る。
(梓が困った時に力になるのは当然として、それ以外に何かできないか考えないと……誕生日プレゼントを豪華にする、とかかな)
 思い切ってアクセサリーを贈ってみようか――ふと、そんなことを考えた。梓は服にはそれなりにこだわりがあるようだが、アクセサリーの類はそれほど持っていないようだった。感謝を形で示す、というのも大事なのではないか、と僕は思った。
「シャツは大丈夫、デニムも履いた、ベルトも締めたし……あ、そうだ、靴下! ごめん、もう一度ベッドに座ってもらっていい?」
「わかった。それと梓、謝らなくちゃいけないのは僕の方だから」
 ベッドに座りながらそう言うと、梓は僕に見せつけるように溜め息をついて、言った。
「あのね、楓。楓はずーっとそうやって自分が悪いんだっていう風にしてるけど、楓が悪いことなんて一つもないんだよ? 楓は私の大切な友達なんだから、怪我をしたら手伝うのは当たり前だし、それに私は楓のことを手伝うの楽しいんだからね? 着替えを手伝うのだって言い方は悪くなっちゃうけど、その、おっきな着せ替え人形で遊んでるような感覚だから」
(――なるほど、僕は梓にある意味玩具にされてた、と考えれば、多少は気持ちが楽になるかもしれない)
 もっとも、それで梓に対する感謝の気持ちが薄れるわけではないけれど。というかそれならいっそ徹底的に玩具にしてくれた方がよかったように思う。
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