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十 文明と影
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沈黙したまま歩き続ける。少しずつ道路の傾斜がきつくなっていく。
「……法山がいるのは、山の中なんですか?」
「それだったらちゃんと準備しなきゃでしょ。アイツがいるのは名前もはっきりしないような小さな神社。ずっとそこから動いてないみたい」
あれほど圧倒的で凶悪な力を振るった法山が一つの場所から動いていない。それが事実だとしたら、きっと想像すらもできないことが、法山を襲ったのだろう。
「花屋の店員さんの鎖、ずいぶんと薄くなってましたよね。あれは、このまま薄くなって消えるんでしょうか?」
「さぁ? 明日には完全に消えてるかもしれないし、しぶとく百年も千年も絡みつく相手とっかえひっかえして残っていくかもしれないし、きっと考えたところで無駄ってやつよ」
傾斜のきつい道を上り続けているせいで、少しずつ歩くペースが落ちていく。もっと日頃から歩いておけばよかった、と後悔する。
「……アンタ、もしかしてもう疲れたの? ったく、しょうがないわね。ちょっと休憩しましょ」
そう言うと数十mほど先の自販機へ歩いていく。僕もその後を追って歩いていく。
「アンタは何にする?」
「あ、えっと、ココアで」
佐治さんは無言でココアを買うと、それを僕に手渡してくれた。
「……法山がいるのは、山の中なんですか?」
「それだったらちゃんと準備しなきゃでしょ。アイツがいるのは名前もはっきりしないような小さな神社。ずっとそこから動いてないみたい」
あれほど圧倒的で凶悪な力を振るった法山が一つの場所から動いていない。それが事実だとしたら、きっと想像すらもできないことが、法山を襲ったのだろう。
「花屋の店員さんの鎖、ずいぶんと薄くなってましたよね。あれは、このまま薄くなって消えるんでしょうか?」
「さぁ? 明日には完全に消えてるかもしれないし、しぶとく百年も千年も絡みつく相手とっかえひっかえして残っていくかもしれないし、きっと考えたところで無駄ってやつよ」
傾斜のきつい道を上り続けているせいで、少しずつ歩くペースが落ちていく。もっと日頃から歩いておけばよかった、と後悔する。
「……アンタ、もしかしてもう疲れたの? ったく、しょうがないわね。ちょっと休憩しましょ」
そう言うと数十mほど先の自販機へ歩いていく。僕もその後を追って歩いていく。
「アンタは何にする?」
「あ、えっと、ココアで」
佐治さんは無言でココアを買うと、それを僕に手渡してくれた。
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