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十 文明と影
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(急げ。急ぐんだ)
最寄りのバス停までの道を駆ける。すぐに息が上がって、走って、また息が上がって、走って、法山のところへ向かっているのか、梓と真奈さんから逃げているのか、その両方なのか、息苦しさと足の痛みで思考が混沌として、けれどその混沌が自分の心を楽にしていると実感してしまい、もう幾度となく目にした自分の醜さが目の前に現れる。
(――止まるな)
もう決めたんだ。僕は二人を振り切って法山のところに向かう。最寄りのバス停に辿り着くとすぐにバスが来た。バスの中でこれから自分がどうなるのかを考えると、右手の指先が震え出した。
(怯えない、というのは、無理か)
アパートから出た時は勢いよく動いていた体が、目的地に近づくにつれて嘘のように強張っていった。降りなければいけないバス停に着いた時、僕は車内から外へ一歩踏み出すことにすら苦労した。
最寄りのバス停までの道を駆ける。すぐに息が上がって、走って、また息が上がって、走って、法山のところへ向かっているのか、梓と真奈さんから逃げているのか、その両方なのか、息苦しさと足の痛みで思考が混沌として、けれどその混沌が自分の心を楽にしていると実感してしまい、もう幾度となく目にした自分の醜さが目の前に現れる。
(――止まるな)
もう決めたんだ。僕は二人を振り切って法山のところに向かう。最寄りのバス停に辿り着くとすぐにバスが来た。バスの中でこれから自分がどうなるのかを考えると、右手の指先が震え出した。
(怯えない、というのは、無理か)
アパートから出た時は勢いよく動いていた体が、目的地に近づくにつれて嘘のように強張っていった。降りなければいけないバス停に着いた時、僕は車内から外へ一歩踏み出すことにすら苦労した。
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