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九 望遠の楯
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「……なんですか? 梓さん」
警戒心に満ちた目で真奈さんが梓のことを見る。
「私だって……楓のこと、養えるんだから」
一瞬、時間が止まる。梓は一体、どうしてしまったのだろうか。
「――梓さんが私と張り合いたくなる気持ちはわかりますけど、絶対私の方がせんせーにいい暮らしをさせてみせます。ぜ・っ・た・い・に負けませんから」
真奈さんは異様なほど絶対を強調した。その気迫に、梓は明らかに気圧されていた。
「そ、それは……お金とか、そういうところでは、敵わないかもしれない、けど」
勝機、とばかりに真奈さんの目が輝く。
「お金とか、じゃありません。生きていく上でお金はほぼ全てです。世の中の問題の九割はお金さえあれば解決できます。わかりますか? せんせーはただでさえ生きていくのが大変な人なんだから、少しでも快適な生活ができた方がいいのは当然でしょう?」
梓は真奈さんになんとか反論しようとしているが、中々言葉が出てこないようだ。ここも僕が真奈さんを制止すべき場面か、と思った直後、
「でっ、でっ、でもっ、か、体じゃ、負けないから!!」
――梓の発言で、時間が凝固した。
警戒心に満ちた目で真奈さんが梓のことを見る。
「私だって……楓のこと、養えるんだから」
一瞬、時間が止まる。梓は一体、どうしてしまったのだろうか。
「――梓さんが私と張り合いたくなる気持ちはわかりますけど、絶対私の方がせんせーにいい暮らしをさせてみせます。ぜ・っ・た・い・に負けませんから」
真奈さんは異様なほど絶対を強調した。その気迫に、梓は明らかに気圧されていた。
「そ、それは……お金とか、そういうところでは、敵わないかもしれない、けど」
勝機、とばかりに真奈さんの目が輝く。
「お金とか、じゃありません。生きていく上でお金はほぼ全てです。世の中の問題の九割はお金さえあれば解決できます。わかりますか? せんせーはただでさえ生きていくのが大変な人なんだから、少しでも快適な生活ができた方がいいのは当然でしょう?」
梓は真奈さんになんとか反論しようとしているが、中々言葉が出てこないようだ。ここも僕が真奈さんを制止すべき場面か、と思った直後、
「でっ、でっ、でもっ、か、体じゃ、負けないから!!」
――梓の発言で、時間が凝固した。
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