文明トカゲ

ペン牛

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八 懐旧の澱

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 ――意識を取り戻し、身じろぎをすると、
「あ、やっと起きたのね」
 僕の斜向かいの位置から声が聞こえた。声の位置には浴衣姿の佐治さんが呆れたような顔で座っていた。
「佐治、さん」
「ていうかアンタ鍵閉めないで部屋で寝てるとか何考えてんの? まぁ鍵閉めて寝られるよりは手間がなかったけど」
「す、すみません……その、思ったより、疲れてたみたいで」
 佐治さんはため息を吐いて、
「――ま、いいわ。特に何もなかったんだし」
 と言った。まだよく回らない頭で必死に何か言おうと考える。結果、
「……佐治さんて、意外と、側にいてくれますよね」
 こんな言葉が出てきた。佐治さんは一瞬目を丸くして驚き、そして不気味なものを見た、という風に顔を歪ませた。
「……なんなの?」
「あ、その、すみません、ちょうど佐治さんが来てくれて助かったってことが、今まで何回かあったから、それで……」
 慌てて言い訳をするが、それさえも要領を得ない。また怒られるのではないかと思い身構えるが、佐治さんは何故か決まりの悪そうな顔で、
「……そういえばまだアンタに左目の中のやつのこと、ちゃんと話してなかったわよね」
 と言った。
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