文明トカゲ

八 懐旧の澱

２０

「え……？」
「あのゴミ野郎の言うことなんて死んでも肯定したくないけど、それでも事実は事実――トカゲを殺すことに関しては、アンタの方がアタシよりも上よ。そのアンタでも無理だったんだから、そりゃ無理でしょ」
　不意に、涙が溢れてきそうになったので、僕は必死に堪えた。佐治さんがどういう思いで今の言葉を言ったのか――何気なく言った風なそれにこめられた、自分では親友の仇を討つことはできないと自身の口で認めざるを得ない無念の、あまりの巨大さを想像して、涙を流しそうになってしまった。
「――まぁそれでも、アタシはあのゴミ野郎を撃つけどね」
　佐治さんが何を言っているのかわからなかった。確かに佐治さんは自分では法山は殺せないと言った。そう、確かに言ったのに、
「……どうして、ですか？」
「決まってるでしょ。自分じゃ殺せません、だから諦めます、って潔く諦められるような――そんな綺麗な代物じゃないのよ、アタシの恨みは」