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七 怨讐の皹
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(……いや、ここで踏み込まなければ状況は何も変わらない)
「法山。どうしてお前は、そんなに人間の価値を否定するんだ。人間はお前に一体何をしたんだ?」
法山は答えなかった。代わりに、
「僕のことを殺させてあげようか、楓?」
そんな、あまりにも理解し難いことを言ってきた。
「お前はまた……いい加減にふざけたことを言うのはやめろ!!」
法山の顔に笑顔が戻る。法山は視線を僕から佐治さんに移すと、
「楓が駄目なら佐治に頼もうか。なぁ、佐治。君のそのバッグの中身はわかってるんだ。勿体ぶってないで早く出しなよ――私を殺すために用意してくれたんだろう?」
法山の言葉に、佐治さんはキャリーバッグの中から巨大な銃を取り出すことで答えた。美しい銃だった。黒く、滑らかで、余分なものが削ぎ落とされた、岩に空いた穴を潜り抜ける烏のような銃だった。
「いいじゃないか。確かに私を殺せそうだね、それは」
「――オマエ、随分と余裕だけど、もし本当に死んだらどうする気?」
法山はニヤ、と笑って、
「あぁ、それは困るな。だからこうするよ」
「法山。どうしてお前は、そんなに人間の価値を否定するんだ。人間はお前に一体何をしたんだ?」
法山は答えなかった。代わりに、
「僕のことを殺させてあげようか、楓?」
そんな、あまりにも理解し難いことを言ってきた。
「お前はまた……いい加減にふざけたことを言うのはやめろ!!」
法山の顔に笑顔が戻る。法山は視線を僕から佐治さんに移すと、
「楓が駄目なら佐治に頼もうか。なぁ、佐治。君のそのバッグの中身はわかってるんだ。勿体ぶってないで早く出しなよ――私を殺すために用意してくれたんだろう?」
法山の言葉に、佐治さんはキャリーバッグの中から巨大な銃を取り出すことで答えた。美しい銃だった。黒く、滑らかで、余分なものが削ぎ落とされた、岩に空いた穴を潜り抜ける烏のような銃だった。
「いいじゃないか。確かに私を殺せそうだね、それは」
「――オマエ、随分と余裕だけど、もし本当に死んだらどうする気?」
法山はニヤ、と笑って、
「あぁ、それは困るな。だからこうするよ」
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