文明トカゲ

ペン牛

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七 怨讐の皹

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「……あ、あなたは? 真奈さんは?」
 突然のことに思考が追いつかない。黙って僕の顔を見つめ、微笑んでいる。少しずつ脳が回転を始めて事態を把握していく。
 僕の顔は脳と連動した瞬間に、修羅の形相になった。
「真奈さんをどうしたんだ、トカゲ――!!」
 男性の姿をしたトカゲは何も反応しなかった。ただテーブルに両肘をついて手を組み、微笑み続けている。いいだろう。こちらを侮ってくれるというなら願ってもない。
(――僕を侮っている間に、殺す)
 銀の雫が右腕を滴り落ちていく。だが、それが鏡面と成る前に、トカゲが口を開いた。
「少し騒がしいな――静かにさせよう」
 直後、周囲のあらゆる音が、消えた。音だけではない。佐治さんを除いた僕の見える範囲にあるあらゆるものが完全に静止している。
(――このトカゲは、一体どれだけのものを止めた? 僕と佐治さん以外のこの階のあらゆるものの動き? それとも施設全体なのか? それとも――この世界全てなのか?)
「久しぶりだね、佐治」
 柔らかなトカゲの声で思考が中断させられる。佐治さんは――笑いながら、トカゲのことを見下ろしていた。
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