文明トカゲ

ペン牛

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六 完全の家

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(そう、か……そうだよな、当然だ)
 これで出口はわからなくなってしまった。トカゲの支配する領域に踏み込むというのはこういうことだと、僕は知っていたはずなのに。
「……もしかして、出口じゃなくなってる?」
「うん、そうみたいだ……ごめん」
 楓はがっくりと項垂れたが、すぐに僕を励ますように笑って、
「雪子ちゃんが謝ることじゃないよ! 落ち込んでる暇があったらどうすればここから出られるか考えなくちゃ! それに私一応剣道やってるから、いざという時は雪子ちゃんのこと守ってあげられるから! だから安心して! ね?」
「あ、ありが、とう」
 楓の仕草や表情、言葉によって心が温められていくのを感じた。周囲に希望を抱かせる人というのは、きっと彼女のような人のことなのだろう。
「うーん、それにしてもさ、雪子ちゃんさっき出口がどこにあるか知ってる感じだったけど、もしかしてここに外から入ってきたの?」
「……あぁ、そうだよ」
「……どうして入っちゃったの? 迷い込んで、とか?」
「――いいや、自分から入ったんだ」
 楓は信じられないものを見た、という顔で、
「――なんで?」
 と僕に聞いてきた。
「……その、ここには僕の一番欲しいものがあるって、ある人から聞いたんだ。それで」
 楓はそれを聞いて不思議そうな顔をしたが、やがて何かに納得したように、
「そっか、雪子ちゃんも色々大変なんだね」
 と言った。
「でも本当にここにそんなものがあるのかなぁ? あったとしても明らかにここ私達を出さないようにしてるし」
「……確かにそうだ。僕のしたことは軽率なんて言葉じゃ到底足りない、どうしようもないくらい馬鹿なことだ」
 無意識に目を伏せる。すると、楓は屈むことで無理矢理僕と視線を合わせてきた。
「――やっちゃったことは仕方がないよ、雪子ちゃん」
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