文明トカゲ

ペン牛

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五 似姿の恋

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 声のする方を見ると、そこは大型のランタンによって照らされていた。床には流谷さんと火津木さんが倒れている。そして二人を見下ろすように立つ巨大な男。もはや静かに近づく余裕はなかった。全速力で男に駆け寄り、声をかける。
「――一体何をしているんですか」
 男の視線が僕に向けられる。近づいてみると本当に大きい。人並み外れた長身の佐治さんでさえ、この男には及ばないだろう。それに加えて体の厚みに至っては倍ほども違いがある。
「……誰だ君は? 君こそ一体何をしに来た?」
 とりあえず言葉が通じることはわかった。だが油断はできない。先程聞こえた支離滅裂な内容の声からして、この男が正気を失っている可能性は高い。しかも男の体格を考えれば、僕を素手で撲殺することも十分に可能なのだから。
「僕は笹岩楓といいます――あなたと同じ、トカゲのことを知っている人間です」
 男は感情を推し量ることのできない目で僕をじっと見つめた。そして、
「……そうか。わざわざ加勢しに来てくれたということか。気持ちはありがたいが、結構だ。このトカゲは私が殺さなければならない」
「違います。僕はあなたがトカゲと呼ぶ女性を助けるために来ました」
 男の目に、明確な敵意が宿った。
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