文明トカゲ

ペン牛

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五 似姿の恋

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 真奈さんのことが好きか――最初会った時の印象はあまりいいものではなかったが、事情を考えれば仕方ないと思えるし、今は若干奇行が目立つがそれでも僕に好意を向けてくれているとわかる。そして彼女の見せる年相応の無邪気さや心の芯の部分にある優しさに、僕は好感を抱いている。
「うん、好きだよ」
 僕がそう言うと、梓の顔が今までに見たことのない表情で硬直した。その表情をどこかで見た気がして、少し考え込み、思い至る。
(そうだ。サン・ピエトロのピエタの聖母マリアの顔だ)
 それにしても何故梓は突然悲しみに暮れる聖母のような顔になってしまったのだろうか。まるでわからない。
「…………そう、そうだよね…………好きな人とのデート、だもんね…………ちゃんとしたプランを、練らないとね…………」
 消え入りそうな声で梓が言う。どうしたのだろう。急に体調でも悪くなったのだろうか。
「そうだね。僕にはデートとデートごっこの違いがよくわからないけど、なるべく楽しいものにしたいから」
 梓の体がビクリ、と大きく震えた。そして楓の顔に見る見るうちに生気が戻ってくる。
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