文明トカゲ

ペン牛

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五 似姿の恋

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 階段を降り、居間にいる串矢さんに一言挨拶をする。すると串矢さんも見送りのために玄関まで来てくれた。
「今日もありがとうございました。どうか気をつけて帰ってくださいね」
「……せんせー、またね。帰り道、気をつけてね」
 串矢さん親子に軽く頭を下げ、
「はい、ありがとうございます。またよろしくお願いします」
 挨拶をして玄関から出る。家庭教師を始めた頃と比べると、同じ時間でも明らかに空気が冷たい。つまりそれだけ時間が経って、季節が進んだ、ということ。
(――生きてるんだよな、僕は)
 トカゲと関わり、狙われ、そして五体満足で生きている――その事実を信じられなくなることが、最近増えてきた。地に足が着いていない、というか、あるいは自分は本当は幽霊で、何かの間違いで肉体を持ってしまった、とでもいうような、そんなどうしようもない違和感に度々襲われる。
(……うん、まずは真奈さんとのデートのプランを考えよう)
 自分が現実にいることが信じられないなら、自分から現実に近づいていけばいい。今の僕にとってはおよそ二ヶ月後の真奈さんとのクリスマスデートこそが、確かな現実だった。
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