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SS NO.4 山手線散策道中銀鉄路
朝のひととき
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四月は中ほどを過ぎ、穀雨の時期を迎えるころ。
日は、エイプリルフールから数え、二〇日後の火曜日。
百合子は、いつも通りの一二と四の時刻を示すころに起床した。
彼女は、身体をゆだねていたベッドから起き上がり、目をこすりながら窓の外の天気を確かめた。
外では、穀物や芽吹いたばかりの植物を潤すしとしととした穀雨が降り、新聞や牛乳を配達にきた人が雨具を身にまとっていた。
「今日、雨だったんだ。忘れていたわ。」
百合子は、利き手を頭の上においてぼりぼりとかきつつ、うっかりとした表情で言葉をつぶやいた。
続けて、
「雨だと、ジョギングはできない。仕方ない、ブーターキャンプの体操でもしよう。」
百合子は、あきらめ顔を見せ、予定していたジョギングを取りやめて体操をはじめた。
彼女は、壁に掛けておいたタオルを首にかけ、スタンバイさせていたノートパソコンにDVDソフトを挿入し、その映像にうつるやりかたの通りに体操をはじめた。
なお、彼女のしている体操は、ブーターキャンプというアメリカの兵隊訓練の一環として行なわれているものをビリーズ(隊長)という人物がダイエット・エクササイズ用に改良したものである。
百合子は、およそ三〇分間、ブーターキャンプの体操に取り組んだ後、お風呂にて汗を流した。
そして、時は進み、時計の針がそれぞれ三と六を少し過ぎた位置を示した。
ちょうど、百合子は、養親の芳夫や美香と朝食を食べ終えて部屋に戻り、学校に行く支度をしている頃だった。
まず、百合子は、利き手の右手をピンと伸ばし、壁のハンガーにかけていたブレザー、リボン、Yシャツ、スカートをとり、そっと机の上に置いた。
次に、彼女は、着ていた繊細で美しいカワラナデシコの花色を思わせる薄いピンク色のYシャツ、安房の美しい夏の海をも連想させる青いデニムを脱いだ。
そして、百合子は、机の上にあるブレザー、リボン、Yシャツ、スカートをそれぞれとり、慣れた手つきで着替え、近くにある鏡に近寄った。
「百合子。今日も、一日頑張らなきゃ。」
百合子は、鏡の向こう側にうつる自分の姿を確かめ、決意のような言葉を発した。
このとき、彼女の瞳には、火照ったかのようにやる気がわきあがり、いつでも授業に臨めるという気持ちに満ちあふれていた。
その後、彼女は汗を流し、美香手製の朝食を食べて支度をした後、いつもと同じ長い方と短い方が六を示すころに家を出た。
外に出てみると、まだ空にはもくもくと白い雲が残っていた。
しとしととした弱い雨があたりにうちつけ、芽吹いたばかりの紫陽花の葉には、土を思わせる色でそろそろっと身体を前に動かし、鳴門のうずしおみたいに渦を巻いた殻を背負うカタツムリの姿が見られた。
さながら、百合子の目前には、ゴッホの描く絵画を思わせる景色が広がっていた。
「晴れの天気の景色は、素晴らしい。でも、雨の中に佇むカタツムリのいる景色も趣があっていいわね。」
百合子は、一旦進めていた歩みを止め、その景色を見て、感銘した様子でつぶやいた。
そのとき、彼女はまるで東京の上野で開催されている東山偕夷画伯の絵画展に行き、残照の絵に心惹かれた人みたいな表情を顔の上に浮かべていた。
そして、
「さぁ、今日も一日頑張ろう!!」
百合子は、目の中に決意を込めたかのような様子で自らを奮い立たせるべく言葉を発していた。
彼女は、止めていた足を再び歩ませ、犬が歩くのと同じ速さで館山駅に向かった。
日は、エイプリルフールから数え、二〇日後の火曜日。
百合子は、いつも通りの一二と四の時刻を示すころに起床した。
彼女は、身体をゆだねていたベッドから起き上がり、目をこすりながら窓の外の天気を確かめた。
外では、穀物や芽吹いたばかりの植物を潤すしとしととした穀雨が降り、新聞や牛乳を配達にきた人が雨具を身にまとっていた。
「今日、雨だったんだ。忘れていたわ。」
百合子は、利き手を頭の上においてぼりぼりとかきつつ、うっかりとした表情で言葉をつぶやいた。
続けて、
「雨だと、ジョギングはできない。仕方ない、ブーターキャンプの体操でもしよう。」
百合子は、あきらめ顔を見せ、予定していたジョギングを取りやめて体操をはじめた。
彼女は、壁に掛けておいたタオルを首にかけ、スタンバイさせていたノートパソコンにDVDソフトを挿入し、その映像にうつるやりかたの通りに体操をはじめた。
なお、彼女のしている体操は、ブーターキャンプというアメリカの兵隊訓練の一環として行なわれているものをビリーズ(隊長)という人物がダイエット・エクササイズ用に改良したものである。
百合子は、およそ三〇分間、ブーターキャンプの体操に取り組んだ後、お風呂にて汗を流した。
そして、時は進み、時計の針がそれぞれ三と六を少し過ぎた位置を示した。
ちょうど、百合子は、養親の芳夫や美香と朝食を食べ終えて部屋に戻り、学校に行く支度をしている頃だった。
まず、百合子は、利き手の右手をピンと伸ばし、壁のハンガーにかけていたブレザー、リボン、Yシャツ、スカートをとり、そっと机の上に置いた。
次に、彼女は、着ていた繊細で美しいカワラナデシコの花色を思わせる薄いピンク色のYシャツ、安房の美しい夏の海をも連想させる青いデニムを脱いだ。
そして、百合子は、机の上にあるブレザー、リボン、Yシャツ、スカートをそれぞれとり、慣れた手つきで着替え、近くにある鏡に近寄った。
「百合子。今日も、一日頑張らなきゃ。」
百合子は、鏡の向こう側にうつる自分の姿を確かめ、決意のような言葉を発した。
このとき、彼女の瞳には、火照ったかのようにやる気がわきあがり、いつでも授業に臨めるという気持ちに満ちあふれていた。
その後、彼女は汗を流し、美香手製の朝食を食べて支度をした後、いつもと同じ長い方と短い方が六を示すころに家を出た。
外に出てみると、まだ空にはもくもくと白い雲が残っていた。
しとしととした弱い雨があたりにうちつけ、芽吹いたばかりの紫陽花の葉には、土を思わせる色でそろそろっと身体を前に動かし、鳴門のうずしおみたいに渦を巻いた殻を背負うカタツムリの姿が見られた。
さながら、百合子の目前には、ゴッホの描く絵画を思わせる景色が広がっていた。
「晴れの天気の景色は、素晴らしい。でも、雨の中に佇むカタツムリのいる景色も趣があっていいわね。」
百合子は、一旦進めていた歩みを止め、その景色を見て、感銘した様子でつぶやいた。
そのとき、彼女はまるで東京の上野で開催されている東山偕夷画伯の絵画展に行き、残照の絵に心惹かれた人みたいな表情を顔の上に浮かべていた。
そして、
「さぁ、今日も一日頑張ろう!!」
百合子は、目の中に決意を込めたかのような様子で自らを奮い立たせるべく言葉を発していた。
彼女は、止めていた足を再び歩ませ、犬が歩くのと同じ速さで館山駅に向かった。
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