天つ乙女と毛獣

あわ☆さくら

文字の大きさ
上 下
23 / 37
SS No.2 旅立ちし乙女

両虎共闘の戦い

しおりを挟む
さて、二人の出てきた地上には、穴が貫通したことにより、周囲に警戒にあたっていた数人のハイドが長槍を持って集結し、何ともいえないものものしい雰囲気を漂わせていた。
「おんどれら、すばるの王妃や。シコメを人質にとっている。早よういってまえや!!」
その中の一人の男のハイドが、シコメ姫を背負っているヤカミ妃の姿を見つめた後、まわりにいた仲間のハイドに指示を下した。
彼は、赤々しくて目立つ鎧を身にまとい、顔は怒ったサルジュウみたいにいかつく、シコメ姫やヤカミ妃が話す際に使うすばる語を用いていた。
ハイドらは、ヤカミ妃の真下に集結し、いかつくて思わずぞっとしたくなる目線で見つめ、長槍にてすぐにでも攻撃ができるようにした。
「お母様。あいつは、ゲアシオ。名だたる他国の国王や武将を血一色に染めてきよったヨモツの宰相で、うちのほんまもんの父親や。油断しよったら、一撃で殺されてまうで。」
おんぶしてもらっているシコメ姫は、鎧のハイドを見た瞬間、はっと驚いた様子でヤカミ妃に言葉をかけた。
「シコメ。分かってる。わての剣をもってすれば、奴らは恐れおののいて逃げてわな。」
ヤカミ妃は、生真面目で恐怖すら感じさせない顔でシコメに言葉を返し、ゲアシオやその他のハイドに交戦するため、土面からわずか一尺ほど離した位置まで身体をもってきた。
これを見計らい、シコメも自信に満ちたヤカミ妃のことを娘として半ば心配して地に足を付け、自らの背中にある長槍をぎこちなさそうに用意して構えた。
「すばるのヤカミ、わいが相手や!!」
背後にハイドの群れを連れた赤鎧のハイド、ゲアシオは、慣れた手つきで長槍を振り回し、ヤカミ妃に切りかかった。
「ふっ。わてに比べれりゃぁ、あんたらは、へぼい奴や。」
ヤカミ妃は、言葉まじりに身体を浮かせたまま、手持ちの青い光を放つ剣にてゲアシオや彼らの長槍を跳ねよけた。
続くように、
「このあほんだら。人を閉じ込め、えげつないことばかりしてる。そないなこと、人間の娘のうちとして許すことは、でけへんわ!!」
シコメ姫は、顔をしかめつつ長槍を構えて声を発し、次々とハイドに攻撃を仕掛けた。
彼女は、このとき、心の中でヨモツ国と縁を切る決心がついたようで、自ら持っているヨモツ国の姫君という名高くて、大銭では買えない地位を捨て、母方のすばる王朝に寝返る覚悟を抱いた。
「シコメ姫様がすばる側の王妃に寝返ってわれわれをやっつけている!? 助けてくれ。」
ハイドたちは、味方のシコメ姫が裏切り、自分たちに攻撃を仕掛けてくる様子を見て、思わず驚いた声を発するのとともに浮足を立たせた。
「シコメ。娘のくせに、父親のわてやミタマ様たちのことを裏切りよった。死に値する罪やわ。」
ゲアシオは、顔のまわりにしわをつくり、シコメ姫に対するぐつぐつとした怒り感情を心の中で爆発させた。
天女のヤカミ妃と彼女の味方として寝返ったシコメ姫、ヨモツ方のゲアシオやハイドらによる戦いは、一進一退の攻防が続いた。
初めは、剣の天女のヤカミ妃と娘のシコメ姫が、圧倒的な動きの早さ、また剣・槍さばきにてゲアシオらハイドの一団を劣勢に追い込んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

【一話完結】3分で読める背筋の凍る怖い話

冬一こもる
ホラー
本当に怖いのはありそうな恐怖。日常に潜むあり得る恐怖。 読者の日常に不安の種を植え付けます。 きっといつか不安の花は開く。

処理中です...