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第三章 嫌われた王子様と呪われた乞食

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「そんな倫理に悖るような真似をしていいはずがありません」

 立ち上がって、訴えかける。何の咎もない領民を根絶やしにするだなんて、何を考えているのか。
 そもそも、コリン領内の人間を殺したところで、疫病の予防など不可能だ。アルジュナから逃げてくる移民達はコリン領だけに行くわけじゃない。それに、アルジュナだけ、疫病が流行っているわけじゃない。コリン領の領民を皆殺しにしたところで、根本的な解決にならない。
 聡明なフィリップ兄様なら分かっているはずなのに。

「そうだ。大体、誰も彼もが罹っているというわけではないだろう」
「人徳が高そうな台詞をどうもありがとう。罹っている、いないなんて分からないだろう? 潜伏期間がどれくらいかも詳しく解明出来てはいないのだから」
「だとしてもだ。人を殺めていい理由にはならない。罪人でもないんだぞ」
「罪がないから殺してはならないのだったら、人を殺せなくなってしまうだろう」

 何でもないようなことのように、フィリップ兄様は額を指で小突く。

「法は罪の前に平等であるべきだろう」
「人が平等ではないのに? 誤解しないでほしいが、ぼくは法を好んでいる。人なんかよりずっと。法典を抱いて眠りたいぐらいだ」

 皮肉げな言い回しだった。

「けれど、国は非常事態に強権を発動できる。人権や人命を無視して使える。戦時中にも使っているしね」
「だが、正当ではない殺害は……虐殺となんら変わりない」
「ディアもぼくの意見に反対しているのか」

 リストははっきりと拒絶を示した。私も続こうとしたが、二の足を踏む。
 この表明は、政治的なものだ。政治論など持たないのに、軽々と口に出して否定していいものなのだろうか。
 けれど、遠慮していたところで結論は変わらない。コリン領はギスランのものになる。あいつの土地の者が何の罪もないのに殺されるのはあまりに残酷だ。

「フィリップ兄様のお考えは、私には理解出来ません」
「……そう。コリン領の人間を殺せば、感染拡大を防げるかもしれなくても?」
「罹った者を隔離するだけで十分ではありませんか。コリン領の民を皆巻き込むことではありません」
「コリン領の病人達は酷い有様だ。病院は機能していないため、ギスラン・ロイスターが介入するまで野晒しに放置されていた。今は、コリン領の屋敷を開放して、そこで看病をさせているようだけどね。日に日に感染者は増え、医者は尻尾を巻いて逃げて狼の餌だ」

 ぴりぴりと拳が震える。怒りに震えているのか、恐怖で慄いているのか、私にも分からない。

「清族を投入すれば大丈夫? 医者を補充すればいい? 隔離がきちんとなされれば平気? ならば送り込む清族にお前は罹って仕方がない。死んでこいと言える? 縋る患者に、移るから近づくなと吐ける者が多いといいね」
「フィリップ、お前は」
「それとも、おまえが行くか? カリレーヌ・バロックのように白衣の天使になる?」

 カリレーヌ嬢。
 戦地に赴いて、看病をしていた。あの時は自己愛や承認欲求を感じた。けれど、死と隣り合わせの場面で、正気の感覚がある方が変なのだ。
 自分が救う。救ってあげる。
 病が自分にも忍び寄っているのに、そんな高尚なこと、出来るのか。
 私には出来ない。そんな献身を持ち合わせていない。
 行けと言われても泣いて行きたくないと懇願するだろう。
 唇が痺れる。
 それなのに、机上の駒を動かすように、対策を練って生身の人間を送り込もうとしている。自分は行きたくないのに、誰かに行かせる計画を立てている。
 皆殺しは嫌だ。隔離すればいい。だが、隔離させるのは私ではない。他人だ。他人に行かせて、様子を見る。
 結局は他人事だから、隔離すればいいと言えるのか。隔離する方はどうだろう。自分に移さずにさっさと死んでくれと望んでいるのでは。
 ――こう思う私自身が、一番変なのだろうか。

「わ、私は……」
「ほら、言い淀む。民も同じだ。怯えている。死ぬのを怖がっている。本当に怖いのは死という概念だ。人が克服できない負の遺産。永らく夢見る桃源郷の世界はなく、不老不死も存在しない。人は賢く、それ故に愚かだ。誰もが死に怯えている。疫病が流行っている領土、それ自体が怖い」
「それ自体が怖い……」
「そうだ。怖いという感情こそが、人を駆り立てる。食べ物を買い込み、引きこもる。自分だけはかからないと盲信し、ハメを外す。どうにもならないと悲観し首を吊る。あるいは全てを諦めて逃げる。自暴自棄になって暴動を起こす」

 そうやって、人は人を殺すんだ。
 フィリップ兄様は淡々と語った。

「おまえは偽善ばかりを語る。けれど、考えてみるといい。コリン領の人間を殺せば、その他の数百万人のライドル王国の民が安心する。それはとても幸福なことではないのか」
「それは、違います」
「どう違う」
「それは……その」
「言語化出来ないならば口を出すな。説得できないならば違うと声を上げるべきではない」

 ぎろりとフィリップ兄様が私を睨み付ける。

「フィリップ、それは言い過ぎだ。違うと叫ぶべきことがある。条件反射であろうとも。お前は暴論を振りかざし、拙い説明を気迫だけで通そうとしている」
「おまえには言っていない。ディア、おまえはどう思っている? ぼくに言うべきことがあるのではないか」
「フィリップ兄様の言い分は、乱暴です。リストの言う通り、暴論です」

 脳を回転させて次の言葉を探す。
 フィリップ兄様は穴だらけの論理を振りかざしている。リストの言う通り、気迫で押しているだけだ。

「人々の不安をコリン領の住人を殺すことで解消する? 違います、きっと違う。コリン領の全滅は民にもっと負担をかけることになります。だって、全滅は恐ろしい死の恐怖です。疫病のせいで死んでしまった、という事実こそ、最も恐ろしい死という概念の現れなのではないのですか」

 フィリップ兄様は私の言葉に口を挟まない。決定的な何かを待っているようだった。
 試験を受ける生徒のような気持ちで、神経を研ぎ澄ませる。

「貧民から、王都の貧民街にも移民が流れ込んで来ていると聞いています」

 ガントが言っていたことを思い出す。
 あいつは移民を嫌っていた。何もしない政府のことも嫌っていた。

「彼らの振る舞いは目に余るものがあると。注がれるのは冷ややかな目でしょう。そこにコリン領の話がくればどう話が歪むのか」

 コリン領が病で全滅したらしいぞ。
 移民が流れ込んで来たからだろう。あいつらは未知の病を持って、ライドルにやって来たのだ。
 なんて不遜な奴らだ。――なあ、あいつらはどうなんだ。
 貧民街の奴らもそうではないのか。
 疑心で満たされた心がどんな失態を演じるのか。理解しているつもりだ。

「虐殺の可能性があります。この王都に血の海が出来る。病をきっかけにして、移民への偏見が顕在化し、暴力へと変わる」
「移民をなぜ殺してはいけない?」
「では、コリン領のーーライドル国民を殺し、移民を殺し、誰を守るおつもりなのですか」

 リストも、ロバーツ卿も口を出さない。私が伝えなくてはならない問題なのだろう。

「私達は王族です。けれど、王族だからと許されることの限度がある」
「へえ。では、限度はどれくらいだ? 『この世が終わるならば終われ、国が亡びるならば亡びろ。たった一人、私だけ富貴ならば』。王がそうなのだから、王族であるぼく達もならわなくては」

 童話の、そして、あの女の言葉。
 王族だから、誰よりも我儘に、気儘に振る舞わなくては。高慢でいなくてはならない。
 ハルの顔が頭をちらついた。
 あいつを突き放したときと、今理想を語って偽善を撒き散らす私は同じなのだ。
 王族だから悪辣に振る舞うべきだと思う。王族だからと言っても限度がある。
 なんだか、自分で言っていても、荒唐無稽な戯言を垂れ流しているような気分だった。

 ――それでも、フィリップ兄様を説得しなくては。

「童話の一節ですね。寓話に出てくる王の台詞」
「童話が好きならば分かるだろう。含蓄深い。子供が好むものは、真理に一番近い」

 大きく息を吸い込む。
 ハルと、心の中で声を上げる。
 お前の歌を思い出す。天使のような歌を。貧民に紛れた幸福を。末の妹だと言われた温かさを。
 けれど、この歌は呪いだ。ハルが私にかけた呪いの言葉だ。

「人が一人いなかったせいで、戦争に負け、戦争に負けたせいで国はなくなり、国がなくなったせいで王族がいなくなり、王族がいなくなったせいで女神が怒った。怒った女神は、憤怒によって土地を焦土とかしてしまった」

 音外れのまま歌いきる。
 部屋が凍ってしまったように音をなくす。
 フィリップ兄様は、感情を削ぎ落としたように表情が消えてしまった。

「……おまえを中傷する曲。王族を軽んじて、辱めた歌」
「初めて聞いた時、意味が分かりませんでした。歌詞の意味を知った時には驚きました」

 出来るだけ明るく言う。

「この歌は、流行っている。少なくともフィリップ兄様の耳に入るぐらいには。ならば、民の意見です。軽んじるなと言う諫言です」

 声に合わせて、踊った。平等を知って、諦めた。心の中に残滓が残っている。あの日々を忘れるべきではない。
 人の温かさこそ、蝋燭の灯りよりもなお、心に火を灯すものだと知っている。

「なにもかも、一人がいないせい」

 苦々しく、フィリップ兄様が終わりまで歌った。
 調子外れで、私と同じぐらい酷い。

「最初の一人を作るべきではありません、賢明なフィリップ兄様。諫言は聞き入れるべきです。フィリップ兄様は愚かな方ではありません。コリン領のものも、移民も、病気にかかった者だけを隔離しましょう」

 強い言葉で頷かせるように言い募る。

「勿論、万全の準備をするべきです。予防策を徹底し、感染を広めないために専門チームを作るのがいいかと。王都でいつ蔓延するかも分かりませんし、今のうちに出来る策をやってみるのもよろしいかと思います」

 フィリップ兄様は神妙な顔をして聞き返した。

「もっと」
「え?」
「ぼくは、何?」
「け、賢明でいらっしゃいます」
「それだけ?」

 それだけ?
 いや、それだけだけど。
 フィリップ兄様は何を望んでいるのだろう。
 褒めればいいのか?

「聡明なお方です。その英知でレオン兄様をお助け下さると信じております」
「ぼくを、好き?」
「えっ!? ……は、はい。好きです。お慕いしております」
「ふぅん。そう?」

 この際だからいつもは言えないことを言ってしまってもいいのではないだろうか。
 覚悟を決めて、フィリップ兄様を見上げる。

「フィリップ兄様が、健やかでありますようにとお祈りしています。女神が聞き入れてくれているかは分かりませんが」
「ぼくを?」
「はい、お嫌でしょうけれど」
「……神に祈るのは好きじゃない」

 それはそうだ。愛人の子と同じ名前の女神に祈りたくはないだろう。

「それでも、祈らせて欲しいのです。兄様の安全を。レオン兄様の快癒を。民の平穏を」
「ぼくのことだけ祈れないのか」
「欲張りなので。フィリップ兄様も、レオン兄様も、民も、大切です。皆のために祈りたい」
「……まあ、リストやギスランのことを言わない賢明さに免じて許す。……レオン兄上が健やかであれと望むのはおれも同じだ」

 ならば、よかった。
 フィリップ兄様は嫌そうに長い息を吐き出した。

「仕方がないな。封鎖して皆殺しにするのは待ってあげるよ。免疫を持つ人間も必要だしね」

 やったと心の中で快哉を叫ぶ。
 フィリップ兄様を説得出来た。
 だが、免疫?

「……免疫ですか?」

 病を克服したときに体が耐性をつけることをいうのだったか。

「前に流行病があったときのことですがカビから薬が出来たことがありましたでしょう。確か、解熱作用があるものだったかと思うのですが、高熱は体を守る防波堤の役割でもある。熱を下げてしまうというのは乱暴な行動なのですよ」
「ああ、薬を多用しすぎた結果、別の病に弱くなったのだったか。熱さえ出れば治る病気だったのに、すぐに解熱剤を投与してしまい、別の病に罹って命を落とした例を聞いたぞ」

 本でこんな話を話を目にしたことがある。発熱療法と言って、末期の梅毒患者をマラリアに罹らせるのだ。高熱によって症状が良くなるのだという。
 ギスランの寿命を何とか伸ばせないかと読み漁っていたときに目にした。
 本当に効いているのかは分からないが、確実に症状が良くなったのだと書かれていた。
 勿論、マラリアにより死んだ人間も多かったとは書かれていたが。
 同じようなことか。高熱により、病を治せる。だが、その高熱が原因で人を殺すことにもなりかねない。

「熱は先天的な免疫機能。故に、高熱は病に対する正常な現象だ。けれど、頭がガンガン痛くなって、ふらふらして、立ってもいられなかったら熱を冷ましたいと思ってしまう。薬で熱は下がってしまうから」

 誘惑に負けることを肯定するように、フィリップ兄様は楽しそうだ。

「けれど、それだけではいけない。なぜならば、今、疫病に対する薬はないからだ。ディア、人の強靭ともいえるところはね、病を克服してしまうところだ。そういう個がいて、病を得ても、残るところだ」
「病を克服する」
「そうだ。夥しい屍の山と引き換えに、人は生き残る」

 それは克服なのだろうか。
 死を重ねた進化なのだろうか。
 病はどの時代にもあったのか。
『カリオストロ』は、罹るのか。
 人とは違う姿の彼らにも、病の影は忍び寄るのか。
 どうしてこんなことを今、気になるのだろう。

「薬という英知はただのゴミ屑となるときがやってくる。病が進化し、効かなくなった時に、免疫があるものがいた方がいい。あるいは免疫を持つ者だけが生き延びるべきだというべきか。ロバーツ卿やリストの言葉のように、薬も万能ではないしな」

 頭が、痛い。
 どうしてだろう、酷く吐き気がする。
 緊張が今更きたのだろうか。
 けれど、何かがおかしい。後ろの花がうるさい。声に似ているのに、聞き取れない。
 何と言っているのだろう?

「――ディア?」
「あ……」

 いつの間にか惚けていたようだ。
 曖昧な微笑みで誤魔化す。めまいや立ちくらみとは違うが、体が怠い。
 何かに触れそうになっていた?
 曖昧なものに手をつけて、突然それがはっきりとした形を表したような、明瞭になる恐怖のような感情が去来する。
 あの、不思議な感覚は何だったのだろう。

「も、申し訳ありません。こういったことに疎く、ついていけなくなっていました」
「そう?」

 フィリップ兄様は鼻白んだようだった。

「簡単に言うと、薬を使わずとも病を克服した種を用意すべきということだ。いざという時のために」
「やはり、隔離が妥協案だな。……人員は軍と王宮魔術師で?」
「そこら辺は無能な官吏どもにやらせよう。いい機会だから、兄上の周りに残すやつの選定も兼ねたい」
「さ、最初から隔離するご予定だったのですか!?」

 話がまとまり過ぎている。
 話し合いがあったとしか思えない。交互に顔を見遣ると、怪しげな視線を返された。

「妥協案だ。ぼくは皆殺ししたいが、道徳的観点から見て却下されるのは目に見えていた」
「この男は妥協案を引き出すために、行き過ぎた提案をしただけだ。よほど、コリン領を封鎖したいのか」
「……感染拡大を防ぐためだよ、酷い言いがかりだ」
「何を企んでいる?」

 腹のさぐり合いが始まる。フィリップ兄様はすらりとリストの問いかけを交わして、くすくすと品よく笑った。

「人を疑うとよくないと教えて貰わなかった?」
「お前のことはよくよく疑えとレオンに言われている」
「兄上と自分は仲が良いですという自慢? おまえのことを呪ってやりたい」

 フィリップが言い合いを断ち切るように手を鳴らす。

「ロバーツ卿、緊急の補正予算、どれくらい出せる?」
「国庫から出させるおつもりですか」
「当然だ。これは国王陛下の失態なのだから、陛下が贖うべきだろう」
「……陛下は是とするやもしれませんが。既に議会も終わったのですぞ」
「呼び戻せとは言わないだけましだと思って欲しいな。……ディアの結婚式の費用だってごり押しで入れたんだから、何とかなるだろう?」
「そうなのですか!?」

 初耳だ。国庫から捻出するものなのか。
 いや、国庫からといっても、王族が持つ財産から出されるとは思うが、完全に失念していた。

「レオン殿下が予算案を強引に通されたのだ。こういっては何だが、かなり無茶をされた。殆どが、陛下の懐から捻出されるとはいえ、軍を動かすのでそちらの費用は国王が個人的に払う、というわけにはいかない」

 それはそうだ。腐っても王女。各国から要人を招き、大々的に開催しなくては示しがつかない。
 要人が招かれるということは護衛が必要だ。軍を動かして、見物客の整備、移動経路の安全確認、会場の防衛など様々な予防をしなくてはならない。
 軍は国に仕えているようなものなので、議会が予算案を出し、議論して承認される。あくまでも国のものだから、いくら国王とはいえ、私的に扱い過ぎると批判が上がる。

「本来ならば、成人するまで待つものですが。私は未だに反対なのですがね。カルディア姫はまだ18歳にもなっておられない」
「申し訳ありません。こちらの都合でお手数をおかけして」
「撤回する気はないのか」

 首を振る。レオン兄様に手伝ってもらい、引けなくなったというのもあるが、単純に私はギスラン・ロイスタ―と結婚したいのだ。そして、あいつが長生きをして、私も長生きをする。
 そんな夢が叶ったら、言うことはない。

「まあ、もう通してしまったのですから、これ以上外野が言うものではないでしょうが。今回のは別です。一時的に予備費で考えています。最悪、緊急議会を開き、採決を仰ぐかたちをとりますので」
「しれっとねじ込んでも問題はないだろうに。草案をよく読んでいるものも少ないだろう?」
「そうでもないだろう。人は案外見ているものだ」
「そう有能な奴が多ければ、悪法は制定されていないだろうけど。……分かった。ではそのように」

 ロバーツ卿は挨拶もそこそこに部屋を出て行った。
 椅子の上で伸びをして、フィリップ兄様はあくびをした。一仕事終えたというよりも、厄介な客がようやく出て行ってくれたと言う風だった。

「ロバーツ卿とは、考えたな」
「口が上手いから、陛下も重用しているんだ。彼も自分が呼ばれた意図ぐらい分かってるだろう」
「領地に帰る前に他の議員の元に寄らせて事前共有させておくつもりなのだろう? 敵対するルコルス卿のところには先に使者をやっているといったところか」
「政治の基本は根回しだ。多数決で勝利するためならば、どんな行動だって合法だ」
「……本当にお前はレオンのためにこの万難を乗り越えるつもりなのか」

 にやりと口の端を上げて、フィリップ兄様は返した。

「こんなのただの些事だ。手こずるのも馬鹿らしい」

 リストは大したやせ我慢だと苦笑した。

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